#45 魔法模擬戦
「それじゃ、模擬戦のルールを説明しますね。しっかり聞いておいてください」
「「はい」」
審判役を務めるアリアナの話に、俺とシェリの返事が重なった。
今日は共に魔法を研究・特訓している俺とシェリが、魔法を使用しての模擬戦を行うこととなった。
場所はいつもの高台。秋晴れの気持ち良い風が吹いている。
事前に俺とシェリには、アリアナが防御魔法と回復魔法をかけてくれている。
肌に薄い魔力の膜をまとわせ肉体を守る魔法と、
これは言うまでもなく、戦いによるダメージや大きなケガの予防策である。
俺ははじめ、シェリを傷つけてしまうからとこの模擬戦を拒否していた。
だが、シェリの魔法上達への熱意とアリアナのこの二つの魔法のおかげで、実現と相成ったのだった。
というかすでにそんな魔法を余裕で使いこなしているアリアナ師匠、すごすぎ。
「二人とも、向かい合って立っていてくださいね」
「「はい」」
正面、対峙するシェリは、どこか悪戯っぽい顔をしてこちらを睨んでいる。
彼女は魔導秘書となってからめきめきと力をつけているので、魔法だけの戦いと考えれば俺よりも強い可能性があった。
……接近戦では俺の方が戦闘力が高いと思いたい。筋力とか。それ以外はもう負けてそうだけども。
「模擬戦闘中、使っていいのは魔法のみです。動きながら魔力を練り、詠唱し、発現。互いにやりすぎは厳禁ですからね!」
アリアナが校長先生のようにプリプリ怒る。
ベレー帽のリボンがふわふわ揺れてカワイイ。
「勝敗は、魔法を使えなくする魔法『サイレントアサイン』を相手にかけた方が勝ちです。なお『サイレントアサイン』を遠距離から使用するのは禁止です。相手に直接触れ、確実に魔法をかけてください」
アリアナが説明しながら、俺とシェリの顔を交互に見た。
その真面目な表情を見ると、こちらも身が引き締まる。
「手加減なしだからね、レオン。そんなことしたら承知しないんだから」
「おう。正々堂々といこう」
対面のシェリも、気合十分な感じで俺を見た。
よーし、日頃の特訓の成果を見せなくっちゃな。
「では、そろそろはじめましょうか。用意――」
アリアナの声に合わせて、俺とシェリは同時に魔力を練り上げていく。
少しの間。
「――はじめ!」
開始の合図が切って落とされた瞬間、俺とシェリは同時に後ろへ飛び距離を取る。
魔法での戦闘は遠・中距離が原則だ。
「『アイシクルスロウ』!」
「『フレイムボール』!」
着地と同時、俺とシェリの魔法使用が重なる。
彼女の属性は炎、俺の属性は氷。
考えるまでもなく、相性では俺の方が不利だった。
が、こっちには実戦での戦闘経験がある。
おっさんのちっちゃなプライドにかけても、そう簡単に負けるわけにはいかない。
しかし。
俺の放った氷の塊(アイシクルスロウ)が、シェリの炎(フレイムボール)にぶつかり、飲み込まれるように溶かされ消えた。
「くっ、やっぱり溶けるか」
「ふふ、炎に氷じゃ勝てないわよ!」
そのまま、氷を霧散させた炎の玉が飛んでくる。
「『フリージングウォール』!」
俺は地に手をつき、瞬時に氷の壁を出現させて防御する。
シェリの放った炎はアイシクルスロウと衝突した影響か威力が弱まっており、フリージングウォールで防ぐことができた。
が。
「油断しないでね、レオン!」
「うおっ!?」
防御の成功に一安心した瞬間。
フリージングウォールすら飲み込む巨大な“業火”が、すでに俺に向けてぶっ放されていた。
いやいやシェリさん本気出しすぎでは!?
「あっつつ!」
思いっきり横っ飛びして、かろうじて丸焼きを逃れる。
が、炎の熱気がジリジリと肌を焼く。
炎の大きさ、威力。
もはや俺の魔力総量はシェリに追い抜かれている気がした。あくまで体感ではあるが。
そんな俺に、勝ち目があるとするなら――シェリが予想できないことをするしかない。
「『フリージングウォール』、『アイシクルストーム』!」
幾重にも氷の壁を作り出し、間髪入れずに氷柱を乱立させていく。
ある“狙い”へ向けて、俺は策略を巡らせていく。
「そんなことじゃ、アタシの炎は止められないよ! さすがのレオンも属性の相性はひっくり返せないみたいだね!」
アドレナリンが出ているのか、少し興奮したような様子で叫ぶシェリ。彼女の周囲を灼熱が取り囲んでいる。すごい……とんでもない魔法への天賦の才だ。
「氷、全部溶かしちゃうからねっ!」
シェリは浮き上がった炎たちを、そのまま解き放つ。
俺が現出させた氷たちが、瞬く間に溶け消えてしまう。
だが、それでいい。
辺りには、氷が一気に溶けたことで“霧”が立ち込めている。
それに紛れて――『ジャンプ』する。
シェリの至近距離近まで一気にジャンプして、『サイレントアサイン』を発動させて勝つ!
「ふふ、レオンの考えることなんて、すぐわかるんだから」
「っ!?」
が。
移動した先で――シェリが余裕たっぷり、なぜか前かがみになって笑みを浮かべていた。
しかも自らが発生させた炎で熱いのか、肌が艶っぽく汗で光っている。
……すんごいたわわっ!
「スキありっ」
「なぬっ!?」
「『サイレントアサイン』」
油断しきった俺の胸に、トン、とシェリのキレイな指先が触った。
こ、これは言うなれば、たわわチャームっ!?
「ふふ、アタシの勝ちだね」
破壊力抜群の笑顔を向けてシェリは言った。
相変わらずのゆるい襟元から、汗で光ったたわわの谷間が覗いていた。
はい、エロすぎです。
「そこまで! 勝者、シェリさん!」
審判のアリアナが、模擬戦の終了と勝者を告げた。
……試合に負けて、勝負に勝ったな。
:【体力】が上昇しました
:【魔力】が大幅に上昇しました
:【筋力】が上昇しました
:【知力】が上昇しました
:【精神力】が上昇しました
:【運】が大幅に上昇しました
:【魔族殺し】の職業熟練度が上昇しました
:【魔法狩猟師】の職業熟練度が上昇しました
:【ジャンパー】の職業熟練度が上昇しました
:【一般パッシブスキル『チャーム耐性』】を獲得しました
:【魔法狩猟師のアクションスキル『濃霧かく乱』】を獲得しました
:【魔法狩猟師のパッシブスキル『弱点属性対抗』】を獲得しました
:【ジャンパーのパッシブスキル『空間魔法コンビネーション使用』】を獲得しました
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貴重なお時間をこの作品に使ってくださり、ありがとうございます。
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