#46 ルルリラも巻き込む?
シュプレナードのギルドにて。
俺はアリアナ、シェリの他に、魔法とはあまり縁のないルルリラも連れて、受付に続く行列に並んでいた。
魅力的な美女三人を連れているせいか、やけに視線がある気がする。
それになにより、今日はやけに人が多い。
さっき他の冒険者から聞いた話だが、ここ最近はやたらと魔物が多く出現するらしく、討伐任務や貴族の護衛など、とにかく依頼が多く発生しているらしかった。
「なぁ、ウチまで来る必要あったの?」
そんな人でごった返す状況の中、待つのが嫌いなルルリラが、つまらなそうに毛先をいじくりながら言った。
が、今日の主役は実は彼女なのだった。
「今日はルルリラの魔法適性を調べることにしたんだよ」
「えー、いいよ魔法なんて。ウチは全然興味ないし」
俺は今日の目的をルルリラに伝えるが、彼女は今度はあくびをしながら、興味がなさそうに言った。
しかしなんとか、ルルリラを乗り気にしたいところだ。
俺、アリアナ、シェリがそれぞれ自分の属性を確立し、自在に操れる魔法を手に入た。なので、せっかくならルルリラにも魔法を会得してほしいと思い、連れてきたのだが。
「ウチは魔法に興味ないよ。たぶんセンスもないし」
ただルルリラはここに来るまで、終始そっけない態度で、あまり乗り気じゃない。
理由としては「魔法は頭良い人、育ちが良い人が使うもの」という漠然としたイメージがあるせいらしかった。まあ、気持ちわからんでもないけど。
でも、俺(レオン)がこの中では一番魔法に適正がないのは明らかだ。
レオンはLOQ中、魔法適正で言うと最下層レベルの能力値だったわけだし。
その俺が、現在のレベル(魔法戦闘が可能な域)まで魔法の力を上げることができているわけなのだから、レアで多方面に高性能なジョブである『忍び』に到達できたルルリラが、俺以下の魔法適正なわけがないのだ。
ということは、間違いなくかなりのレベルで魔法を使いこなせるということだ。
「私、ルルリラさんとも魔法について語り合いたいです!」
「うぇー、ウチはいいってばー。難しい話とか苦手だしさー」
魔法の話ができる相手が増えるということもあり、テンションが上がっている様子のアリアナが、目を輝かせてルルリラに絡んでいく。
が、ルルリラは相変わらず一歩引いた態度だ。うーん、どうしたものか。
「最初はイヤかもしれないけど、覚えてみると案外楽しいよ?」
「シェリは超才能あったからじゃん? ウチは絶対あんな風にすぐ上達しないって」
今度はシェリがルルリラを説得にかかる。が、やはりあまり色はよくない。
シェリの才能については、俺も同感だった。あの才能、うらやましい。
「ルルリラが魔法を扱えるようになることで、“孤児院”のみんなに魔法を教えられるかもしれないぞ?」
「……え、マジで? ウチが?」
お、ちょっと興味を持ってくれたみたいだな。
孤児院というのは、ルルリラが数年前まで世話になっていた場所だ。彼女自身も元々孤児で、義賊としての活動もそこの子供たちのために行っていたのだと言う。
ただ、ルルリラ自身はずっと黙って寄付を行っていたらしいが、彼女の育ての親であるところの孤児院の院長先生は気が付いていたらしく、お金には一切手を付けずにいると話していた。
ルルリラをリバース村に招き入れる際、俺は密かに一度その孤児院を訪ねたのだが、そのときに院長がこっそり教えてくれた。
「そうそう、上手くすればルルリラが魔法の先生になれるんだ。やってみるだけ、やってみても、いいんじゃないか?」
「んー……じゃあ、一応見てみるだけ見てみようかな」
今のリアクションを見る限り、彼女は今でも孤児院の役に立ちたいと思っているのだろう。
ルルリラの気持ちが乗ってきたのを見逃さず、受付に誘導する。
忙しい中でも、ギルドの人たちは丁寧に対応してくれた。
「ルルリラ・ホワイトストーンさんの魔法適正は、えーっと……『雷』ですね」
「雷? ビリビリーって感じ?」
「そうですね」
ルルリラが自分の属性を聞き、少しイメージが膨らんだような様子だった。
お、これはちょっと楽しくなってきているかな?
俺も俺で、ルルリラと雷属性の魔法はすごく相性がいいと思う。
素早く動いて電撃属性の攻撃で麻痺やスタン状態にして、手数で倒す。
うん、かなり強力なんじゃなかろうか。
「ルルリラさんに雷属性はぴったりですね! 電光石火の攻撃が、さらに強力になりますよ!」
「うん、ルルリラちゃんっぽいね、雷。絶対いいと思う!」
「そ、そうかなぁ」
アリアナとシェリも、上手い具合にルルリラを盛り上げてくれる。
どこか照れ臭そうなルルリラの様子を見ても、満更ではないみたいだ。
よーし、この調子でルルリラも魔法の研究と特訓にガッツリ巻き込んでいくぞ!
などと、俺が内心でほくそ笑んでいたときだった。
ばんっ!
と、ギルドの扉が乱暴に開かれた。
「ん?」
室内にいた全員の眼が、そちらに向けられる。
入り口に立っていたのは、シュプレナード兵だった。
着こんだ軽鎧には、夥しい血が付着していた。
「し、至急、冒険者諸君に応援を頼みたい! シュプレナード南西の丘に、魔族が発生したのだッ!!」
「っ!」
もたらされたのは、凶報そのものだった。
:【体力】が上昇しました
:【魔力】が上昇しました
:【筋力】が上昇しました
:【知力】が上昇しました
:【精神力】が上昇しました
:【ジャンパー】の職業熟練度が上昇しました
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