#40 強さの自覚
暗いダンジョン内。
ルルリラを先頭にして、俺たちは奥へ奥へと進んでいる。
先程からルルリラの索敵能力とナイフの投擲攻撃が無敵すぎて、昼下がりの散歩みたいなレベルで安全である。
うーん、快適だけどこれだと特訓にならないなぁ。
「ルルリラ、俺が先頭変わろうか?」
「いんや、索敵とか夜目の利きを考えたら、ウチが前の方がいいっしょ。任せときなっつーの」
油断なく前を見たまま、俺の話に応えるルルリラ。
いや、確かにそうなんだけど。
女の子に道を切り拓いてもらってばかりでは、なんだか男としては落ち着かないというかね。
まぁ後方からも時折コウモリ型の魔物が飛んでくるので、それをアイシクルスローで撃破するだけでも結構な魔法の特訓にはなっているけれども。
「ちなみに、ボスまではあとどのくらいだい?」
「んー、たぶん今半分過ぎたところかな。ここいらから少しは歯応えのある魔物が出てくるかも。……ほら、あれ」
言われて、見た先に。
遠目からでもわかる二足歩行の巨体に、これまた大きなこん棒。それが岩肌と擦れるずりり、ずりりという音が、薄暗い奥から不気味に響いてくる。
「オークだ」
「ああ。これまでのゴブリンとは違って、こんなちっぽけなナイフじゃ意味ないだろうなあ。……そりゃ!」
と、言うが早いか、ルルリラは素早い動きでオークへナイフを放った。
「グォォ!」
が、ナイフがその巨体に刺さることはなく、こん棒で叩き落とされた。
うお、中々の反応速度だな。
「ね? 今までみたいにはいかないっしょ?」
「ああ、確かに」
「あーゆーのを相手にするには、ウチはまだまだパンチ力不足。こっからは否応なく、レオンが頼りさ」
「……任せてくれ!」
振り返ってにやりとしたルルリラに、俺も口角を上げて応える。
ルルリラはおそらく、俺が特訓になっていないと感じていたのもわかっていたのだろう。
それでもあえてここまで自分が前を歩いてくれていたのは、下層に近づくにつれて自分の攻撃力ではまだ頼りないと分析ができていたからだ。
……すごい、ここまで戦況と戦略的な思考ができるようになっているとは。
彼女が率先してリバース村の防衛線の指揮を執ってくれると考えれば、村の防備は安泰だな。
「グォォォ!!」
俺とルルリラの余裕な態度が気に障ったのか、オークがこん棒を振り上げながら向かってきた。
巨体のモンスターは総じてスピードが足りないものだが、オークの脚力は中々のもので、中々の速さで接近してくる。
が。
「『フリージングウォール』」
「グォ?!」
俺はヤツが向かってくる動線上に氷の壁を出現させる。オークはいきなり現れた壁に頭から突っ込み、ダメージを受けた。
「むんっ」
「グォ――」
倒れてスタン状態になったオークへ、俺はケルベロスウェポンを一閃した。
その巨体が魔粒子となり、空気中に消える。
なんと、オークを瞬殺したぞ。
「あれ、俺……めっちゃ強いかも」
思わず、独り言ちる。
本来、オークは中ボス級の魔物で、ある程度育った四人パーティーであっても、2ターンぐらいは時間がかかったはず。
魔法とケルベロスウェポンでの連続攻撃とは言え、まさかここまで自分が成長しているとは思っていなかった。
「だから言ったじゃんかよ。そんなに鬼強くなってどうすんのって」
「はは、あははは」
ルルリラに言われ、苦笑が漏れた。
んー、俺、もしかして案外もうかなり強いのかもしれない。
これなら魔王、倒せちゃうかも?
「よし、この調子でここのボスも一気に倒そう」
「へへ、そーこなっくちゃ!」
自分の強さに自信を得た俺は、ルルリラと共に気合を入れ直し、さらに奥へと足を踏み入れていった。
もはやダンジョンボスへの恐怖など、なかった。
:【体力】が上昇しました
:【魔力】が上昇しました
:【筋力】が上昇しました
:【知力】が上昇しました
:【精神力】が上昇しました
:【シーカー】の職業素養を獲得しました
:【魔族殺し】の職業熟練度が大幅に上昇しました
:【魔法狩猟師】の職業熟練度が大幅に上昇しました
:【一般パッシブスキル『暗闇耐性』】を獲得しました
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