魔法研究編
#34 魔法特訓開始
パオマ村にてヴァンと出会い、エンシャントドラゴンを撃退してから、数日。
晴れてプルラウラ王国の勇者となったヴァンと別れ、俺はリバース村に戻って魔法の特訓に励んでいた。
戻ってすぐ、シュプレナードのギルドにて転職をし、『魔導士』となって日々魔法技術の研鑽に精を出している。
それと並行して、狼マスクをかぶっての魔族狩りも続けている。
現状、魔領域でエンカウントする魔族はほぼ一撃で蹴散らせるようになったので、『魔族殺し』としての熟練度も順調に向上していると言えた。
ちなみにギルドに行った際、『放蕩者』の職業熟練度がマスターとなっていることがわかった。
『LOQ』では各職業のマスタークラスになると、転職をしても職業特性が引き継げるという仕組みがある。
なので『どんな行動をしてもステータスが下がらない(ただし二日酔いになると大幅に下がる)』という『放蕩者』最大の長所を引き継ぎ、魔導士になることができた。
そう、俺はついに『放蕩者』を卒業したのだ。
何度も二日酔いの辛さに耐えた甲斐があるというものだ(ただの自業自得)。
いやーうれしい、ようやく社会の一員として認められた気分だな。
「さて、今日もはじめるとするか」
筋トレなどの日課を終えた俺は、リバース村近くの高台に来ている。
今やるべきは、魔法を鍛えて戦闘を楽にすることだ。
「……わ、我が身に宿る精霊よ、その御身を司る氷を顕現させ、剣となりて敵を貫け――『アイシクルスロウ』!」
詠唱のあと、伸ばした掌から鋭利な氷の刃が出現し、遠くの木に作った的に突き刺さった。
「よし、コントロールは安定してきたな。……うん、眩暈もない」
はじめの頃はMP不足だったのか、この『アイシクルスロウ』を一発放っただけでクラクラして大変だった。
そもそも、レオンの魔法適正はあまり高くなく、適正属性も可もなく不可もないと言われている氷属性。
魔法と相性が悪いキャラクターの魔法力を伸ばすのは時間の無駄、と方々で言われていたLOQだが、それはあくまでもゲームの観点から考えた場合だ。
俺のいるこの“現実”では、たとえ弱小の魔法であってもその利便性は計り知れない。
たとえば、敵に近づくことなく攻撃できる遠距離攻撃の魔法や、安全性を飛躍的に高められる防御魔法など、その辺りだけは絶対に習得しておきたいところだった。
しかも『ライフステータスシステム』のおかげで、使い続ければ否応なく効果は強力になっていくからな。
「あとは、詠唱の問題だな……」
最後の難問として、これがあった。
なぜ、魔法の詠唱が問題なのか。
「…………」
うん、単純に恥ずかしいのである。
いや、そりゃ中学生の頃とかカッコイイ詠唱とか自分で考えたこともありましたよ?
でも三十を過ぎて実際にそれを叫びながら戦うというのは、誰も気にしてないとしてもさすがに耐えられないと言いますか。
というわけで、俺は日々『無詠唱での魔法発動』を会得すべき、こうして一人鍛錬を積んでいるわけなのだった。
「にしても、やっぱり師匠が必要かもしれない……」
ただ、ここ最近は少し行き詰っているのが正直なところ。
魔法の上達に必要なことは、主に二つある。
一つは、使いたい魔法をどれだけ具体的にイメージできているか。
LOQの世界における魔法は、大気中の魔粒子がイメージを具現させて起こる現象とされている。
そのため、しっかりとしたイメージを持つことが、非常に重要とされていた。
二つ目は、他人が使った魔法をしっかりと観察することにある。
これは一つ目のことに関係もするのだが、他者が使用した魔法を観察することによってイメージをしやすくし、自らの習得の近道となる、というわけなのだ。
だからこそ魔導士を究めようとする者は皆、自分より高位の魔導士に弟子入りし、様々な魔法を見て育つのが一般的だった。
魔法が得意なキャラなら数名記憶にはあるけど、またその辺りのキャラと合流した途端、強力なユニークモンスターに襲われでもしたらたまったものじゃない。
次の一手は、できる限り慎重を期したい。
「レオンさん。お疲れ様です」
「あ、アリアナ」
と、そこへアリアナがやってきた。
相変わらずのベレー帽姿で、腕にはランチバスケットを提げている。
おや、これはもしかしてお弁当にありつけるやも?
「畑の野菜でサンドイッチを作ったんです。いかがですか?」
「ぜひいただきたい!」
アリアナから、サンドイッチを受け取る。水気を多く含んだ葉物野菜がはみ出し、いかにも美味しそうだ。
疲れた身体にはこれ以上ないご馳走である。
ありがたくいただく。
「うん、美味い。さすがアリアナだよ」
「喜んでもらえてよかったです」
はにかむように微笑むアリアナ。
いやー、なんとも魅力的な笑顔である。
おっさんじゃなかったら惚れてしまうところだ。
「魔法は順調ですか?」
「うーん、一進一退、という感じかな」
サンドイッチをもしゃもしゃと咀嚼してから応える。
「魔法、難しいですよね。私もずっと魔法の修練は続けていますが、未だに自信がありません」
アリアナはそう言ってから、小さな口でついばむようにサンドイッチを頬張る。
とは言うものの、アリアナはレオンに比べればかなり魔法は得意で適性があったはず。
謙遜しているのかもしれない。
「アリアナはどの程度、魔法を使えるようになった?」
彼女の現能力を確認する意味も込めて、なにげなく聞いてみた。
すると。
「ようやくなんですが、風属性と氷属性の魔法を三十種類ずつ、扱えるようになりました」
「俺の師匠になってくれ!」
「え、ええええ!?」
俺は反射的に土下座していた。
一番近くに師匠級の魔導士、いるじゃん。
というわけで。
俺とアリアナの魔法特訓が、この日からスタートすることとなった。
:【体力】が上昇しました
:【魔力】が大幅に上昇しました
:【筋力】が上昇しました
:【知力】が上昇しました
:【精神力】が上昇しました
:【運】が上昇しました
:【魔導士】になりました
:【魔族殺し】の職業熟練度が大幅に上昇しました
:【猟師】の職業熟練度が大幅に上昇しました
└【猟師】の職業レベルが『ノーマル』に達しました
:【魔導士】の職業熟練度が大幅に上昇しました
└【魔導士】の職業レベルが『ビギナー』に達しました
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