#19 魔族に勝つために

「たおす、オレ、オマエ、たおすッッ!!」

「ぐ……!」


 激しい攻撃が、何度も何度も魔族から繰り出される。

 爪、牙、角、あらゆる部位を使って仕掛けられる攻撃を、俺はケルベロスウェポンで受け続ける。


 なんとか直撃を避け、致命的なダメージはほとんど受けていない。

 だが、一撃一撃がとにかく重たく、地味に体力を削られ続けている。


 ケルベロスウェポン自体も攻撃に特化した大剣武器であるため、こうして防戦一方に使うのにはまったく向かない。

 このままだとジワジワ削られて、押し切られてしまうな。


「アアアぃぃ!」

「っ!?」


 思考が弱気に向いた瞬間、魔族はより一層力のこもった攻撃を繰り出してきた。両手を合わせて、爪をドリルのようにして突き込む攻撃だ。


 俺はケルベロスウェポンの腹で、それを防御する。


 が、


「グヒィィ!」

「しまっ――」


 爪をはじくことで剣を上にはね上げられてしまい、腹ががら空きになってしまう。

 まずい。


「アァァッ!!」

「ぐあっ!」


 俺の鳩尾付近に、ヤツの爪がめり込む。

 痛みと出血で一瞬目がくらむが、反射的に後ろに跳んだおかげで、少し威力を相殺できた。


「マダァぁぁ!」

「っ!?」


 だが、息つく間もなく追撃してくる魔族。

 鳩尾の痛みに意識が行くが、ここで集中を切らせば後がない。

 再び剣を構え、ヤツの腹を突きで狙う。


 やり返してやる。


「ギィィ!」


 だが、そこは戦闘種の魔族だ。

 こちらの意図を瞬時に察し、大きく後方に距離を取った。


 心底から戦いが楽しいのか、いやらしく笑っている。


「はぁ……はぁ……」


 若干疲れも出てきたな。

 さて、ヤツをここで倒し切るには……どうすればいい?


 いかんせん魔族と遭遇するなんて露ほどにも思っていなかったので、これといった特別な準備はなにもしてきていない。戦闘に役立ちそうなアイテムなども……たぶんないだろう。


 使い込むほど性能が上がるので、ケルベロスウェポンをはじめとした基本装備は万全であるが、それ以外は村での作業でいつも使っている道具類ぐらいだ。


「…………!」


 いや、待てよ。

 なら使えるかもしれない。

 だがそのためには、ヤツにできる限り接近しないといけない。


 ただ、次にやり合ったらいよいよ力負けするかもしれない。 

 だけど、まあ……やるしかないよな。

 安穏とした、穏やかな生活を守るためだ。


「うおおおお!」


 俺はわざと大声を上げ、威嚇しながら魔族に接近する。

 対してヤツは、口の端をより吊り上げた。腕の筋肉がビキビキと盛り上がったのがわかった。


「でやぁぁ!」


 踏み込み、俺はケルベロスウェポンを横薙ぎに大振りする。

 魔族は身を低くして躱す。


「ギヒィィ!!」 

「っ!?」


 魔族は、体勢を低くしたまま強靭な下半身で、俺の懐へ潜り込んでくる。

 戦闘種族である魔族は、本能で相手の隙がわかる。だから、ほとんど反射的にその隙を突くように身体が動く。


 そして今、ヤツの眼から見れば、またも俺の腹ががら空きになったと感じていることだろう。


 鋭い爪で、俺の腹を抉り裂こうと腕を伸ばしてきた。


 が。


「残念――罠だよ」

「ウ、ガァァッ!?」


 俺は利き手ではない左手で、ヤツの頭にを突き込んだ。


 得物とは。

 腰のポーチの中に忍ばせていた小刀や錐など、“大工仕事で使う道具”たちだ。


「ァガァァ、アァアァ!」

「俺の、勝ちだな」


 苦しみもがく魔族の赤角へ、トドメのカナヅチを振り降ろす。

 魔族の証とも言える赤い角は、粉々に砕け散った。

 

 大剣武器であるケルベロスウェポンでは、各所へのピンポイント攻撃は至難の業だ。

 しかし、小さな道具類であれば逆にピンポイントで弱点を突くのは造作もない。しかも、敵はここぞ好機と突っ込んできた状態だ。誘い込まれているとも知らずに。


 ゲームのように必殺技で蹴散らす爽快感やカッコよさはないが、確実で殺傷力の高い方法だった。


「アァ…………ァァ……」

「生まれたばかりで悪いが、安らかに」


 痛みに暴れていた魔族は、徐々に粒子となって大気中へ消えていった。


 ふぅ、ひとまず危機は去った。


「……急いで、村に戻らないとな」


 しかし、あまり余裕はない。

 この地帯で魔族が発生したということは、リバース村近辺では、常に魔族の発生があり得るということになる。


 迅速に、沿岸部の防備を整えていかなければならない。


 そして、さらに恐ろしいことだが。

 ……人間の大陸の、どこでも魔族が生まれる可能性がある、ということも考えられる。


「焦っても仕方ない。まずは一つ一つだ」


 俺は、まだ消えずに残っていたキラーベルーガの素材を獲り、急いで村へと走った。



:【体力】が上昇しました

:【魔力】が大幅に上昇しました

:【筋力】が上昇しました

:【知力】が上昇しました

:【精神力】が大幅に上昇しました

:【運】が上昇しました

:【道具使い】の職業素養を獲得しました

:【罠士】の職業素養を獲得しました

└獲得した職業素養数が20を超えました

└【上位職】を開放します。今後、上位職の職業素養の獲得が可能になります

:【上位:魔族殺し】の職業素養を獲得しました

:【猟師】の職業熟練度が上昇しました

:【一般パッシブスキル『意外性』】を獲得しました

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