#20 王へ直訴

 魔族との戦闘を終えた俺は、村に待機してくれていたみんなに、ひとまず新生魔族の討伐が成功したことを伝えた。それと同時に、今後は人間の領土内でも魔族が生まれ得る可能性がある、と話した。


 同行して魔族を目撃したアリアナ、ルルリラは当然として、シェリや作業をしてくれている人たちまで、皆重苦しい空気に押し黙ることしかできなかった。


「でもだからこそ、俺は一つ一つ、今できることをやっていこうと思う」


 俺は皆にそう宣言して、単身シュプレナードへ行くことにした。一刻も早く、国家規模で手を打たねばならない案件だからだ。

 魔族に付けられた腹の傷をシェリに手当てしてもらい、移動石でシュプレナードへと直行した。


◇◇◇


「では、メイン職業を『魔族殺し』に変更します。よろしいですか?」

「はい、お願いします」


 俺はシュプレナードに着くや否や、真っ先にギルドの職業案内所へ行って職業適性を診断してもらった。


 思った通り、魔族を倒したおかげで『魔族殺し』の職業素養があった。

 この職業はその名の通り、対魔族との戦闘で存分に力を発揮する職業だ。今の状況には打ってつけだと思ったので、それに転職することにした。『放蕩者』はサブ職業として外さないでおく。


 そうなると『猟師』か『食通』を辞めなければいけないのだが、いかんせんクロエを立派な猟犬に育て上げたいので、消去法で泣く泣く食通の職を辞した。


 あぁ、猟師としてこの世界のジビエ料理を探求・堪能しながら食通で能力アップして、悠々自適な感じでついでに魔王も倒しちゃう……みたいなのを夢想していたんだけどな。


 人生、やっぱりそう簡単に思い通りにはならないもんだな。


 ちなみに上位職の魔族殺しは、『LOQ』がリメイクされた際に実装された、新しい職業だ。その魔族への優位性は戦闘だけでなく、『魔族探知』や『魔族用罠』といったスキルも覚え、戦闘以外の部分でも魔族を牽制しやすいという強みがあった。


 なにより今はこの『魔族探知』を覚えて、熟練度を上げる必要がある。

 そうすることで俺一人でも、一つの国を囲むぐらいの規模なら、魔族の誕生を感知できるようになるはずなのだ。


「この能力と移動石で、人間の領土全体をパトロールすることができれば……」


 そう、俺個人が、各所で生誕する魔族の抑止力となれるはずだ。


 ただそのためには、を満たす必要があった。

 俺はギルドを出て、駆け足でシュプレナード城へと向かった。


◇◇◇


「なんと……人間の領土で、魔族が生まれるなどと……」


 王と謁見した俺は、即座にリバース村近辺の状況を伝えた。玉座に座ったまま、シュプレナード王は沈痛な表情で嘆いた。王の周りに居並ぶ家臣たちも、皆一様に深刻な顔をしている。


 まあ、当然の反応だよな。


 本来なら魔族は、魔領域でしか生まれない。そもそも、魔族が生まれる土地だからこそ魔領域と呼ばれ、遥か昔に人間はその大陸から離れた。

 そして、今の大陸に移り住み、文明を築いたのだ。『LOQ』の世界観資料に書いてあった。


 魔族が生まれる一つの原因である、この世界に漂う魔力のバランスは、もう長い間均衡を保っていて、動くことはないと言われていた。

 超魔力を内包して生まれたとされる現魔王が魔領域で誕生したときですら、この均衡が破られることはなかったのだから。万が一、その魔王が魔領域から出ていたらわからないけれども。


 だが、ゲーム内でも各地の魔力濃度が可視化されたりしていたわけではなかったので、どうしてその均衡が崩れ、人間の大陸でも魔族が生まれたのかは、はっきり言ってさっぱりわからない。


 もしかすると、俺の運命シナリオとは違う行動が世界全体に影響を及ぼし、均衡を崩してしまっているのだろうか……?


 でも、だからと言って立ち止まっているわけにはいかない。


 川の流れに飲み込まれたからと言って流されるままでいたら、溺れてしまってお終いだ。

 俺はみっともなくても必死に手足を動かして、生き残るための方法を探す。


「王様、俺から提案があります」

「なんだ、わが友レオンよ。遠慮なく申すがいい。こんなときは、魔族との戦闘経験が豊富なお前だけが頼りだぞ」


 王から向けられる不安そうな目線に、俺は背筋を伸ばして応える。


「七大国を自由に回れるよう俺に――『勇者証明』を発行していただけないでしょうか?」



:【体力】が上昇しました

:【魔力】が上昇しました

:【筋力】が上昇しました

:【知力】が上昇しました

:【精神力】が上昇しました

:【運】が上昇しました

:【魔族殺し】になりました

:【一般パッシブスキル『人生色々』】を獲得しました

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