ゲームの不遇おっさんキャラに転生したおっさん ~必ずパーティーで飼い殺しにされる無能なおっさんキャラでも、マイペースに楽しく生きれば主人公より強くなれるみたいです~
#7 趣味回:食事編 レナード牛のタルタルステーキ
#7 趣味回:食事編 レナード牛のタルタルステーキ
シュプレナード滞在二日目の夜。
旧エビデ村近郊における『街づくり』の準備のために、今日は一日中走り回ることになった。
王様からいただいた大金で、必要な武器や防具の調達、能力値が上昇したり有利なバフを付与したりできるアクセサリー類を、大量に購入した。当然俺だけじゃなく、これからスカウトする仲間たちにも装備してもらう予定だ。
武器や防具も申し分なく、そこはさすがシュプレナードといった感じ。なにせここは、本来はゲーム後半に登場する街なので、買える武器と防具でも、かなり高性能なものが揃っていた。
それらは王の常備軍が現地に運搬してくれるというので、遠慮なく全部預けた。
そして、俺は一日頑張った自分を慰労するため、あの場所へ足を向けた。
「念願の、大浴場!」
入り口で、思わず叫ぶ。
もんもんと立ち込める湯気の向こうには、見たこともないような大きな空間が広がっている。
ドーム状の屋根の下には、絢爛豪華な彫刻で彩られた大きな浴槽。見ているだけでも新鮮で楽しめるお風呂だ。
「くぅー」
身体を洗ってから、ゆっくりと風呂につかる。乳白色のお湯はとろんとなめらかで、肌にしっとりと馴染んだ。
はぁ、気持ちいい。
肩までつかっていると、身体の疲れが抜けていくみたいだ。
生き返るなぁ。
一日働いたあとは、やっぱり湯舟に入るに限るよな。
前世では週末に天然温泉のある入浴施設に行って、そこに併設されているリラックススペースで、しがな一日読書したりしていたな。マッサージチェアに座ったり。
あぁ、思い出すなぁ。
周りを見れば他のお客さんたちも、湯の温かみを全身で味わったり、ほっこりした顔で語らったりと、様々な楽しみ方をしている様子だった。
やっぱり、風呂ってのはいいもんだ。
◇◇◇
そして、風呂のあとと言えば。
「美味いメシと、ビールだろ……!」
俺はあらかじめ見つけておいた良さげな酒場に駆け込み、素早く注文を済ませ、今か今かとノドの乾きを耐えていた。
汗をかいた今の身体に、あの黄金の液体を流し込んだら、キマるぞ!
「お待たせしました。ビールと、シュプレナード名物『レナード牛のタルタルステーキ』です」
「ありがとうございます」
来たぞ。
料理を運んできてくれた店員さんに軽く頭を下げ、並べられた品物をじっくりと眺める。
「これが、レナード牛のタルタルステーキか……美味そうだ」
シュプレナード近隣に出現する魔物、レナード牛の肉を包丁で細かく刻みひき肉状にして練り、一塊にして焼いた料理だ。タルタルステーキというのは、要するにハンバーグの原型となったものらしい。
この料理は、レオンとして一度食べた記憶はあるにはあるのだが、ぜひ今の舌でも味わってみたいと思っていた。
「たまらない匂いがしてるな……!」
こんがりと焼けた楕円形の肉のカタマリから、食欲をそそる香ばしい匂いがする。付け合わせの野菜と豆が、そこに絶妙な彩を加えている。
「いただきます……!」
ナイフとフォークを使って、ど真ん中から切っていく。
じゅわ、と溢れ出した肉汁が、熱々の鉄板の上でじゅうじゅうと踊りだす。
「はふ、はふっ」
我慢できず、俺は一気に肉のカタマリを半分、頬張る。
熱さに思わず口をハフハフしてしまうが、熱さのあとからたまらない肉の旨味がジュワジュワと押し寄せてくる。
う、美味い……!
「……!」
そしてすかさずビールの注がれたマグを握り、肉の脂が残ったままの口に、一気に流し込む。
ゴキュ ゴク ゴキュ
景気よく自分の喉が鳴る。
ダメだ、止まらない。
「ぷはぁーッ」
ほぼ一息で半分以上を飲み干し、大きく息を吐きだす。
ハンバーグの状態にすることで、一枚肉よりも肉汁がたっぷり出てきて、とにかく肉の旨味が口いっぱいに広がる。
その旨味と油を、さわやかなのどごしのエールビールが運び去り、口の中をリセットしてくれる。そのため、油が全然くどくないのだ。
これは美味い、美味すぎる!
「おかわり、お願いします」
「かしこまりましたー」
この日は結局、メシも酒も美味すぎたので、へべれけになるまで飲んでしまった。
あぁ、『放蕩者』のステータス減少の唯一の条件は、二日酔いになること。
頑張れ、俺。二日酔いだけは勘弁してくれ……!
俺はそう願いながら、宿屋のベッドへと潜り込んだ。
息を吐きゆっくりと目を閉じると、一気に眠気が襲ってきた。
はぁ、今日もごちそうさま。
良い夜だった。
:【体力】が上昇しました
:【魔力】が上昇しました
:【筋力】が上昇しました
:【精神力】が上昇しました
:【給仕人】の職業素養を獲得しました
:【食通】の職業素養を獲得しました
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