第11話 ずっと前から始まっていた。そして、これからも続く。
「それで、あの後は犬を探しに行った奴らが『犬なんて、いなかったよ!』ってキレながら教室に戻って、その後『どこへ行っていたのよ、あなたたちっ!』って担任の先生に、こっぴどく叱られたんだよな~」
「そうそう。あれを見ていて気分が良かったの、今でも覚えている。おれたちは怒られるようなことしていませーん、って感じでさ!」
メガネ女子と幼馴染みの男子は、小学二年生のときの思い出話で盛り上がっている。
「あいつらが先生に説教される原因は、お前の嘘なのにね……。まあ、それに救われたのが、あたしなんだけど……」
「でもぉ~おれ、先生には正直なことしか言わなかったじゃん! 犬を探しに行った奴らが、お前を泣かしたって……」
「うん、ナイス。それで結局、先生には自分が吐いた嘘だって、お前は言わなかったんだっけ?」
「まあまあ。それは言わぬが花、知らぬが仏、嘘も方便ってことで!」
「はいはい。それで、そいつら……あたしに改めて謝ったんだよね」
「そうそう。良かったじゃん! その後、お前のメガネデビューを騒ぐ奴らが出なくなったんだし!」
「そうだね。それと地味にすごいのはさ……あの嘘が、お前によるものだって、あいつらや先生に全っ然バレていないことだよ」
「確かに……それは、おれも予想外だった。いつバレるんだぁ~ってソワソワしていたけど、杞憂に終わったな!」
アハハハハハハハハッ!
メガネ女子と幼馴染みの男子は、大きな声で笑い合った。二人以外は誰もいないから、気にする必要はない。
「……じゃあ、本題に戻るとしよう!」
「へ?」
メガネ女子のトラウマが昇華を果たした直後、幼馴染みの男子が笑うのを止めた。向かい合うメガネ女子は、きょとんとしている。
「何だよぅ、お前から始めたんじゃねーか」
「……あ」
昔話が弾んでしまったため、すっかり本題を忘れていたメガネ女子。幼馴染みの男子によって、やっと思い出したらしい。
「おれは、お前のことが……メガネを掛ける前から好きだった。だから、おれはメガネを掛けようが外していようが、その気持ちは変わらない。そして、これからもずっと好きです! こんなおれですが、よろしくお願いします!」
「……こんなあたしだけど、よろしくお願いします……」
メガネ女子は、差し出された手と握手した。幼馴染みの男子と数分前にした約束が、すぐに果たされた瞬間であった。
その後、メガネ女子と幼馴染みの男子は「キスするときって、メガネは邪魔?」と話し合った。
メガネ女子と幼馴染みの男子は、その日の下校中に唇を重ねたが、結局メガネをどうしたのかは二人だけの秘密。
ぐちぐちメガネちゃん 卯野ましろ @unm46
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