第7話 メガネ女子は考えた

「……うーん……」


 幼馴染みの男子を相手に、たくさん愚痴を吐いた日の夜、メガネ女子は自分の部屋で考えていた。


「あたしが気付くべきこととは、何なのだろうか……」


 今の彼女の頭の中は、学校の休み時間に、幼馴染みの男子から言われたことでいっぱいである。


 自分の良さを分かっていないって言われてもなぁ……。

 あたしが探してみても、それは全く見つからない。

 あいつ……どうして教えてくれないんだよー、ケチ!

 いやケチは違うか……。

 休み時間に、あたしの愚痴を聞いてくれた人間に対してケチはないよなぁ……。

 それにあいつは、あたしのためを思って「教えない」ということを選択したんだっけか。

 ……ああ~、でも分からないものは、分からないんだよ!

 ハッ、もしかして……あたしには良いところがないっていうのが正解だから、あいつはあんなことを言ったんじゃあ……。

 それならそうと、正直にあたしに伝えて欲しかったよぉ~。

 そういう優しさは、いらないって!

 あんなに毒を吐いてきたのに、大事な場面では誤魔化されるなんて……。


「……あっ!」


 メガネ女子は、ある言葉を思い出した。


「お前ってさあ……なぜ自分のことを、改めようとしないんだ? メガネがどうこうって語るよりも、まずそれだろ」


 結構前の方で、答えは既に出ていたんじゃん!

 自分を改める……。

 これだ!


 一人で悶々としていたメガネ女子の表情が、パアァッ……と明るくなった。


 変われば良いんだよ、あたし!

 でも……やっぱりイメチェンして人生を変えるっていうのは、二次元に限るのか?

 しかし、ちゃんと憧れはあるのだ。

 あの物語の主人公あるいはヒロインがメガネを止めた途端、キラキラし始めるといった、お約束のシーン!

 あー……でも、あたしはメガネを外せない人間だった……。

 裸眼はアウトだし、コンタクトは怖いしでダメだ。


「……ああーっ、そうか! そうだったよ!」


 メガネ女子は、また何かに気付いた模様。再び笑みを浮かべている。


「メガネがどうこうって語るよりも」


 そうだ、あいつはあたしのことを考えて、ああいうことを言ったのか……!

 何だよ……あいつ、あたしに毒を撒き散らしたと見せ掛けて、めっちゃ人生を変えるヒントを与えてくれていたんじゃん!

 くうぅ~、ニクいねぇツンデレ!

 これまでツンデレはメガネキャラ以上に……いやよりも、二次元に限る個性かと思っていたけど、これを機に考えを改めるべきかもしれない。

 ……あっ、あたしが改めなければならないことって、これも含んでいるのかな?

 まあ、とにかくありがとう幼馴染みよ!

 あのときは腹立ってばかりだったけど、今となっては大変ありがたいよ!


 人生を変えるヒントを見つけた、と思われるメガネ女子。あの台詞を言われた直後は「うるっさい!」なんてイライラと言葉を返してしまったが、今では幼馴染みの男子に対して、感謝しているようだ。


「……よし!」


 メガネを掛けたままで、あたしは変わろう!


 メガネ女子は早速、自分のようなメガネを掛けているキャラクターが登場する作品を漁り始めた。二次元オタクな彼女は、たくさんの漫画やアニメ、ゲームなどに触れている。広く浅く、ときに深く。その出会った作品の中に、メガネキャラは何人もいる。老若男女、そして種族問わず。


「……ん~……」


 この人は、セクシー系……。

 あー、かわいい子!

 うわぁ、凛々しい……。


 メガネ女子は改めて思った。色々なメガネキャラがいるんだなぁ、と。その中で自分は、どのキャラクターを目指してみようか……とワクワクしながら研究していたが、


「……はぁ~……」


 どうやら自分が目指したいと思うキャラクターはたくさんいても、目指せそうなキャラクターはいなかった様子。


 みんなステキ過ぎて、すごく難しいよ……。


 また、どのキャラクターも魅力的なため、かなり迷ってしまったらしい。


 あたしは、こんな風になれそうにない……。

 頑張れば大丈夫とか、それ以前の問題な気がする。

 それに……あたしはどこまでも、あたしだしなぁ。

 憧れに近付けたとしても、そのキャラクターになれるわけではない。

 ちょっと現実逃避も、混ざっちゃっていたかもなぁ。

 そういや二次元と現実は、別物だと考えなくてはならないって、あいつにも言われた……。


「どうしよっかなぁ……」


 メガネ女子は悩んでいる。一体、自分はどうするべきか。目指すべきキャラクターより、自分がやれるべきことを考え始めたのだ。


「……あたしができることは、あれくらいかなぁ……?」


 一応、メガネ女子は何かをしようと思い付いたらしい。果たして、それはどのようなことなのだろうか。


 とりあえず、やってみよう!

 あれくらいなら、めちゃめちゃ手軽だしね!

 大丈夫、変な風には……ならないはず……。

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