第3話 メガネというキャラ付けは、ありがた迷惑
「お手上げといえば……あたしがメガネを掛けているが故の、周りの人間からの勝手なキャラ付けに困っている」
「ふーん、メガネキャラ?」
「そうだよ」
「……無個性よりは、マシじゃね?」
「そんなわけねーだろ。まあ、確かに無個性に困らされている人もいるんだろうけど……」
無個性。これを悩みとして抱えている人間は少なくはない、ということをメガネ女子も幼馴染みの男子も知っている。
「無個性は、さておき。とにかくメガネキャラは、ありがた迷惑。いらん。不必要。ノーサンキュー……いや、ノーだな。全く感謝していないからな、あたしは」
「お前なぁ……今に始まったことでもないけどよ、そこまで言うんだな」
「はっ? 言うよ、あたしはっ! 言うに決まってんだろっ! だって……メガネを掛けているせいで、あたし結構つらい思いをしているんだからさ!」
「つらい、か……」
それは、一体どんなことだろう……。
幼馴染みの男子が考え始めたが、そんなことはお構いなしのように、すぐにメガネ女子は語り出した。
「まずはっ! ただメガネを掛けているってだけで……頭が良い、勉強ができる人間だと思われてしまう!」
「ああ! それは確かに、かわいそうだな!」
「うんうん! そうだろ?」
「それはそれは昔……しばらくの間『明鏡止水』を『眼鏡止水』と勘違いしていた、どっかのメガネさんにとっちゃあ、つらいことだよなぁ~」
「そうそう……って、おい!」
「アハハハハハハハハッ!」
苦い思い出を語られて恥ずかしがるメガネ女子と、顔を真っ赤にして怒っている彼女を気にすることなく大笑いしている幼馴染みの男子。
「あの間違い! ってか勘違いか? さすがメガネを掛けているだけのことはあるって……すっげーおかしくて笑ったよ! アッハハハハハハハッ……!」
「……今も、すっげー笑っているぞ……。失礼な野郎だな、お前……」
「アーッハッハッハ!」
「……」
「アッハハハハハハハいでっ!」
「いい加減にしろっ!」
あまりにもバカ笑いが続くので、とうとうメガネ女子は幼馴染みの男子の頭部をベシィッ! と右手で叩いた。
「笑い過ぎなんだよ、お前はっ!」
「……あー……すいませんでした……」
殴られた部分を手で抑えながら、幼馴染みの男子はメガネ女子に謝った。やっと笑い声がストップすると、メガネ女子は「ハア~ッ!」と息を吐いた。そして「とにかく、続けるぞ」と本題に戻ることにした。幼馴染みの男子も「はいはい」と言って(危うく、また思い出し笑いをしそうになったのだが)気持ちを切り替えた。
「メガネを掛けていると、絶対に真面目だと思われてしまう! あたしの場合はなぁ……残念のがら! 真面目の後ろに! 『系クズ』という全くいらない三文字が、もれなく付いてくんのによお~っ!」
「うんうん……。いつも夏休みの宿題とか、締切ギリッギリの提出だ。一応、期限までに出すんだけど……何せギリギリなもんだから、あんまりな仕上がりってゆーやつぅ~!」
「……お前にはっきり言われると相当イライラするんだけど、これは本当のことだからな……」
「ほら、どんどん言っちゃえよ。真面目以外には~?」
「あとは……優しいとか」
「ああ~。お前は優しいんじゃなくて、怖いからな」
「ケッ! 誰が怖くしてんだか!」
「まーまー」
「お人好しとか、ムカつく。この見た目で、何か色々と頼みやすいとか思われんの、すっげー腹立つ! 都合良く、頼ってんじゃねーよ! 普段そんなに仲良くもねーのによ! あのクソ共が!」
「本当は、なかなかキツいもんなぁ~。お前の猫被り、マジやべーよ。正にザ・内弁慶……」
「……さっきからお前があたしに言ってんのは、同情というよりも嫌味だな!」
「幼馴染みに優しい言葉、期待していたのか? お前と同じ、おれも期待外れで悪いっ!」
「ふんっ! あたしは別に、お前から優しくされようなんて……最初から思ってねーから!」
「でも勉強ができるとか、真面目とか、優しいとか……第一印象が良いっていうのは強みだよなぁ」
「……A・RI・GA・TA・ME・I・WA・KU! ルッキズム反対っ!」
「ルッキズムって単語で、一気に重くなるわ~」
「あたしにとっては、重いんだよ! まさか……お前さっきから、くだらない悩みとか思ってねーよな?」
「そんなこと、一ミリも思ってねーから心配しろよ」
「おい、そこは安心じゃねーのかよ!」
「ケケケ」
「お前は真面目系クズじゃなくて、シンプルクズだよ!」
「うわぁ……グサッとくるなー、それぇ……」
「……その割に余裕なの、何なんだし」
「へっへっへ。せいぜい悔しがってくださいよ、メガネさん」
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