めがね屋の横

板谷空炉

朝から疲れた

 近所にあるめがね屋の横には、コンビニエンスストアがある。そこに行くと、たまにめがね屋の店員さんが買い物をしているらしい。勿論、私の推し店員さんも。たまにコンビニのオーナーさん──とても綺麗な女の人──に仕事の話をしており、そこで真横のめがね屋で彼が働いていることを知った。

 めがね屋の推し店員さんは、黒縁眼鏡がとても似合っており、おまけにイケメン。誰が見てもモデルだと思うくらいだ。一度お近づきになりたいっ!

 じゃあ、めがね屋に行けって?

 残念ながら、それには縁が無い。

 何故なら私の視力は両目とも2.0あり、めがねとは無縁だから。伊達メガネでも良いなら行きたいけれど、それはなあ……って思う。ブルーライトカットなら、今度行ってみようかな。このデジタル社会、ブルーライトとは切っても切れない関係性だから。

 

 ある朝、会社で食べるものを買いに、いつものようにコンビニへ向かった。

 あっ、めがね屋の推し店員さんだ。今日もコンビニのオーナーさんと話している。見るとき大体話してるかレジ打って貰ってるかなんだよなぁ……。オーナーさん、あの人と仲が良いのかな? 羨ましい。

 ……ちょっとくらい、会話聞いてもいいよね? このコンビニ穴場だからこの時間でもあまり人いないし、店内にお客さん少ないし。

 そう思って、パンを選ぶフリをしながら二人のレジ越しの会話を盗み聞いた。

「今日も仕事なんですね、いつもお疲れ様です。」

「いえいえ。今川さんこそ、オーナーお疲れ様です。」

「ありがとうございます。今度またデートしましょうね」

「ぜひぜひ! その言葉だけで仕事頑張れそうです」



 いやいやいや。待て。

 (オーナーさんの)仕事中にどんな話をしてるんだ!?

 推しの恋愛には口を出さない。挟まない。推しが一般人なら特にそう。

 だとしても!!!!

 会えるのがその時間帯だけだとしても!!!

 少ないとは言え他の客が見えてないのか!!!!


 何か、どっと疲れた。

 今日まだ、月曜日なのに。仕事してないのにっ……。

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めがね屋の横 板谷空炉 @Scallops_Itaya

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