僕の好きな眼鏡っ娘

ゆる弥

僕だけの眼鏡っ娘

「わぁ! コンタクトにしたんだぁ!」


「眼鏡とっても可愛い!」


「うん! 眼鏡ないのもいいよ!」


 中学生の頃、好きだったその子は小学校の頃からずっと眼鏡をかけていた。いわゆる、眼鏡っ娘。僕はその姿が可愛らしくて好きだった。


 それが、ある日突然、コンタクトに変えたんだそうだ。それで、今女友達から賞賛を浴びているというわけ。


 僕は、密かな片思いだから、話の輪に加わることはない。むしろ遠くからため息をついて残念がっている。


 眼鏡のない姿もたしかに可愛いが。ちょっと雰囲気が違うのだ。もうあの姿が見られないのかと思うと非常に残念だった。


◇◆◇


「って僕は中学生の頃、思ってたことがあったよ?」


 今は、晩酌しながら昔の話をゆっくりと妻へと聞かせているところだった。


「えぇー? それはパパだけでしょう?」


 お風呂上がりにコンタクトを外して眼鏡をかけている僕だけの眼鏡っ娘が隣に座っている。この姿が見られるのは、ほぼ僕達家族だけ。


 そんな特権を得た僕は酔った勢いで昔のことを語っていたのである。


「眼鏡姿のどこがいいの?」


「眼鏡かけると、なんか雰囲気が変わるんだよ。その姿が僕は昔から好きだもの。なぜかって言われるとわかんないけど……」


「そうなの? ふーん。なんかよくわかんないけど。たしかにあの時、私はどっちでもよかった。けど、眼鏡を馬鹿にされてたから…」


「そうなの?」


「視力悪くて眼鏡のレンズが分厚かったからねぇ」


 僕達が小学校の頃というのは目が悪いとより分厚いレンズになった。まだ、レンズを製造する技術がそこまで進んでいなかったから。


「それでも可愛かったけどね」


「パパは特殊だよ」


「そんなことないと思うけど?」


 この眼鏡っ娘を射止めることができて、今最高に幸せなのである。独り占めできているこの人を可愛いと思うのは、僕がで見ているからではないだろう。


 初恋は叶わないというジンクスがあるが、あれは嘘だと思う。


 なぜなら僕が叶えたからだ。

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