第29話 前が見えない

 南アルプスの鹿嶺高原方面に、馴染みのカメラ店社長夫婦と旅行仲間達の合計6名で、社長の車と小生の車の2台で出かけたときのことです。


 写真仲間達ではありませんが、写真仲間達とのマイクロバスや大型バスでの写真旅行が計画されると都合がつく限り、このクループの旅行は企画がいつも楽しいからと言って付いて来てくれる旅行が大好きな仲間達なんですよ。


 ヒマな時には、旅行の企画を手伝ってくれたりもします。


 一泊旅行で走行距離も結構あるために、今回は早朝に出発しました。


 社長は鹿嶺高原とその周辺が結構気に入っているらしく、周辺をあちこちと自慢げに案内してくれます。


 昼頃になると「この先にある鉱泉の宿で一泊する予定なんだけど、宿の近くに渓流があるので、昼食はそこでバーベキューをしようね~」と山の中の未舗装路をどんどん走っていきます。


 しかし山の中の未舗装路は、暫く雨が降っていなかったことと、真夏の熱い日差しで、カラカラに乾ききっていました。 


 車が走ると砂埃が舞い上がり、まるでサファリラリーで車が走っている映像のような状態になってしまいました。


 ゆっくりと走っていれば良いものを、何を勘違いしたのか、前を走る社長の車がスピードを上げたものだから大変です。


 ますます砂埃がひどくなり、後ろを走る我々の車はたまったものではありません。


 全開だつた窓を全部閉めエアコンを内循環にして社長の車に付いて行きましたが、前は大量の砂埃で見にくくて走りにくいし、車も砂埃だらけになるしで、本当に困り果てました。


 後で、「ゆっくりと走っていれば良いのに、なんで急にスピードを上げたの?」と社長に聞くと、「砂埃が凄いので、車の距離が離れればいいかなと思って、スピードを上げたんだけど、ちっとも離れないんだもの」だって。


 何を考えているんだか?


 昼食のバーベキューは食事の開始時間が少し遅くなったことと、社長が食材を絶対に食べきれないほど大量に持ち込んだことで食べ過ぎてしまいました。


 困ったことに、宿での夕食時間になっても、ちっともお腹が空きません。


 せっかく食事を用意してくれた宿の方達には「申し訳ない、昼食が遅くて、食べ過ぎてしまったので、夕食全部食べられなくってごめんなさい」と平謝りでしたよ。


 でも郷土料理とかで出て来た「鹿のステーキ」を食べましたが、あっさりした赤身で美味しかったです。


 猪肉のしし鍋は湯谷温泉で食べた経験がありますが、鹿肉は今回が初体験でした。



 あの砂埃の凄かった未舗装路は今どうなっているんでしょうね。舗装されていることを願っています。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る