第8話
石油発見は朗報だが、石油は手につくと、なかなか落ちない。
綺麗に落とすには、石鹸が必要だ。洗濯は勿論行われていたが、木の灰などを利用した比較的原始的な方法が主流。
ここでは、前世の知識でも使って、何とかしよう。
石鹸を作るには、食用油と、水酸化ナトリウムを混ぜて熱するのが、簡単な方法だが、水酸化ナトリウムは製造しなければならない。
結構めんどくさいが、硫酸を用いる方法が結構簡単だ、此方の世界にも、火山帯があることは、南方面に探検旅行に行ったときに発見している。火山帯と言えば、硫黄がつきもの。硫黄を燃やして、二酸化硫黄にしてから水に溶かす。できるのは亜硫酸だが、数日放置しておけば、空気酸化で硫酸になるだろう。
硫酸ができれば、それに塩(しお)を加える。すると、塩化水素が単離される。塩化水素を水に溶かせは、これで塩酸になる。その後、貝殻を集めて焼く。貝殻の主成分は炭酸カルシウムなので、焼くことで炭酸が飛んで、生石灰になる。硫酸に塩を溶かしたものに生石灰を加えると、硫酸カルシウムの沈殿が生じる。硫酸カルシウムとは、要は石膏なので、壁材とかに利用可能だ。残った溶液には、水酸化ナトリウムが含まれる。これに植物油を加えて熱すれば、石鹸の出来上がりだ。
石鹸を量産してみようかな、意外と需要がありそうだ。水酸化ナトリウムが残っていると厄介なので、塩酸で軽く処理しておこう。
重さをきっちり計っておけば、それほど心配することもないと思うが。
さて、石油発見はいいものの、石油化学工業など作り出せる知識も経験もない。
結局、ただ、燃料として燃やすほかはないのである。
幸い、石油は液体なので、量の調整は容易で、結果火力調整もしやすい。前世でいうところのガスのような使い方もできるだろう。
作ってあった風呂釜や、湯沸かし器も石油仕様に改造だ。冬場に備えて、石油ストーブも作っておきたい。
これらの製法を確立できれば、これも商売になるポテンシャルはある。
問題は個人で使用するならともかく、燃料の石油をどう確保するかということだ。物理的には山向こうなので、バケツを持って行って汲むわけにはいかない。電気がないので、パイプラインも組めない。個人で使う分なら、テレポートもできるので、どうとでもなるが、実験の結果、手を離すと空間が閉じ、パイプとかは切断されてしまう。意外と役に立たない気もするが、そこまで求めてもな。
結局石油は個人使用にとどめ、商売はあきらめることにした。
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