第4話

さて、此方の歴史だが、どうやら次元断層か何かに巻き込まれて、村ごと転移してきたらしい。村ごと来たので、当初はだいぶ混乱したらしい。こちらからしたら、周囲の村がいきなり消え、原野に変わったみたいなものなのだから当然である。一部の田畑を残して農地も消え、一時期食糧難にも陥ったようである。

幸い山の恵みもあり、昆虫類もいたので、何とか乗り切れたようだが。

そのためもあってか、此方では虫食文化が発達している。

特に甲虫類の幼虫はクリーミィかつ大振りで、食べ応えもあり、人気食材となっている。

田畑が残っていたので、コメも麦もある。石臼も有ったので、小麦粉の生産も可能。

とりあえず、穀物類は前世と同等だ。次に野菜類だが、基本的にこちらのオリジナルが多い。一応、歴史的には数百年を数えるようで、栽培化された野菜類も多く、畑にはトマト似た野菜やジャガイモに似た野菜、里芋に似た野菜などがある。

鉱工業もそれなりに発展してあり、金、銀、銅、鉄も産出されている。金属があれば、貨幣経済が発展するのも必然で、高額貨幣として金貨。補助貨幣として銀貨、銅貨、鉄貨が流通している。重さが合えば貨幣として通用するようで、貨幣の形は様々だ。

金は銀の100倍の価値があり、銅は銀の10分の1、鉄は銅の10分の1という価格差だ。

家畜類は転移しなかったので、此方の動物が家畜化されている。乳が採れる牛っぽいもの、食肉として優秀な豚っぽいもの、卵が採れる鶏っぽいもの。

家畜化前の野生状態の動物も残っており、狩猟の対象として活用されている。

貨幣があるということは店もある。米屋、八百屋、肉屋。肉屋では狩猟で得た獲物を買い取ってくれ、食肉に加工して売っている。

金属加工を行う鍛冶屋もあって、様々な道具を作り出している。

さて、なんでこの世界に人間がいるのかというのは少し不思議だったのだが、転移してきたというなら納得である。

人型というのは、形態としてたしかに便利だが、動物としてみると決して優秀とはいいがたい。人間は直立2足歩行だが、走る場合、胴の長さすら歩幅に加えられる四足獣に比べるべくもない。爪や歯も鋭いとはいいがたい。道具を持たない素の人間では、生存競争に打ち勝てる要素はないのである。

人型になるのは進化の必然だ的な論調が、前世ではあったが、そんなはずもないのである。知的生命体の条件として、人型を挙げる向きも多いが、祖先とされる類人猿がすでに人型であることを考えると、人型≠知的生命体であることは明らかである。また、ボノボも直立2足歩行(否定する考えも存在する)を行うが、彼らも知的生命体でないことを考えると、直立2足歩行すらも、知的生命体の条件とは言えないといえる。そういった意味では、この世界に人間がいること自体が、とんでもない奇跡と言え、前世世界との関わりを感じえないのである。

さて、鉱工業がある程度発展していることは、磁鉄鉱なども発見されており、方位磁針としても活用されている。ということは、この惑星にも磁場があるということで、前世の記憶にかんがみれば、当然といえる。前世地球では、磁場は有害な放射線から、生物を守る盾として機能していたので、現住生物がいる以上磁場の存在は当然と言える。

方位磁針はほぼ南北を指している。太陽の上る方角を東として、方角は定義されている。方位磁針が南北を指すのは、惑星の自転によるダイナモ機構が働いているからと判断できる。




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