第23話 第二航空艦隊、出航


アメリカ側が突き付けた最後通牒『ハル・ノート』の内容は、到底、日本側が受諾出来ない内容ばかりだった。

当然、陸海軍の上層部は激怒していた。


既に日本側は11月1日の大本営政府連絡会議及び11月5日御前会議において、対英米蘭戦争を決意しており、12月1日午前零時までに外交交渉が成立しなければ戦争に踏み切ることを決定していた。


更に、『ハル・ノート』の通達により、開戦論者はもちろん、交渉論者も一致団結して開戦を支持することになった。


その報せは、山本を通して遠藤にも届いた。

「そうですか・・・。やはり、開戦は不可避ですか・・・。」

遠藤も予想していたとは言え、残念な結果で多少の落ち込みがあった。


現在、遠藤と山本は、戦艦『土佐』の長官室で話していた。

報告に来てくれた山本も、気持ちは同じだった。

「気持ちは痛いほど分かるが、交渉派も開戦止む無しになってはな・・・。」


山本の言葉を聞いた遠藤だったが、ある考えを伝えた。

「親父さん、二つばかり、対応してもらえますか?」

「何を考えているんだ。今更、開戦回避は、ほぼ、不可能だぞ?」


そんな山本に対して、遠藤は、

「何もしないよりは、マシです。そして、二つの考えは、アメリカへの強烈なカウンター返しと、資源確保以外に南方進出と植民地化を目論む陸軍に楔を打ち込む事が出来ます。」

と言った。


山本も遠藤の考えに興味を持ったのか、

「その話、詳しく聞こう」と答えた。

その日、夜遅くまで、遠藤と山本は話し合いを続けた。


そして、1941年(昭和16年)11月24日の早朝、南雲が率いる第一航空艦隊よりも2日早く、遠藤が率いる第二航空艦隊は柱島泊地からハワイ真珠湾を目指して、密かに出航していった。


出航していく第二航空艦隊の規模は、戦艦5隻、空母6隻、巡洋艦6隻、駆逐艦10隻、他にも高速給油船団8隻、高速給油船団を護衛する駆逐艦4隻、先行する形で潜水艦4隻で合計して43隻とかなりの規模だ。


そして、そんな中で彼等を見送ったのは、山本達GF幕僚達だけだった・・・。


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