第22話 勢揃いした第二航空艦隊
ー1941年 11月10日 広島県・柱島泊地ー
柱島泊地には、第二航空艦隊が勢揃いしていた。
そして、その中には、第二航空艦隊旗艦として旅順から出航して柱島泊地に到着と同時に第二航空艦隊に合流した、超弩級高速戦艦『土佐』もいた。
「改めて、見ると壮観だな・・・。」
鼓舞が素直に称賛していた。
それは、鼓舞だけでなく他の幕僚達も同じだった。
中でも、戦艦『土佐』の存在は際立っていた。
珍しく、鼓舞が感嘆している中、遠藤が鼓舞に声を掛けた。
「君が素直に称賛するとは、意外だな『鼓舞少将』。」
遠藤が階級付きで鼓舞に声掛けたから、鼓舞は、
「茶化すのは辞めて頂けますか?『第二航空艦隊司令長官・遠藤泰雄中将』。」
と言い返した。
二人のやり取りを見ていた周りの幕僚達も、思わず吹き出してしまった。
最近まで、遠藤が少将で、鼓舞が大佐だったのに、二人が昇進したのは、遠藤達が抜擢したり、自ら志願した事で総司令官である遠藤よりも階級が上の将校もいた。
その為に、山本、永野、嶋田の三人が人事だけでなく各方面に掛け合った事で、全員ではないが遠藤も含めて数人が昇進していた。
この昇進には、各艦隊司令官にも数名がいた。
第二航空艦隊の幕僚メンバーは、以下になる。
第二航空(機動)艦隊・幕僚メンバー
司令長官:遠藤泰雄中将
参謀長:鼓舞武雄少将 作戦参謀:風間俊介中佐 航空甲参謀:久我直樹中佐
航空乙参謀:淵田美津雄中佐
航海参謀:遠山宏明中佐 通信参謀:佐野六郎中佐
以上が、第二航空艦隊の幕僚メンバーである。
なお、鼓舞の直属の部下だった、奥奈光太郎大尉と長津田謙二大尉については、佐野の元上司である阿曇誠之進中佐の部下となる事が決定した。
そして、第二航空(機動)艦隊の編成及び各司令官は、以下の通りである。
第二航空(機動)艦隊(司令長官:遠藤泰雄中将)
旗艦:土佐型戦艦『土佐』
第一戦隊(司令官:松田千秋少将):長門型戦艦『長門』、長門型戦艦『陸奥』
第四戦隊(司令官:中瀬泝少将):金剛型戦艦『金剛』、金剛型戦艦『榛名』
第一巡洋戦隊(司令官:早川幹夫少将):高雄型重巡洋艦『鳥海』、高雄型重巡洋艦『摩耶』
第二巡洋戦隊(司令官:木村昌福少将):最上型軽巡洋艦『最上』、最上型軽巡洋艦『熊野』
第六航空戦隊(司令官:小澤治三郎中将):大鳳型航空母艦『大鳳』、大鳳型航空母艦『白鳳』
第七航空戦隊(司令官:山口多聞少将):改翔鶴型航空母艦『舞鶴』、改翔鶴型航空母艦『紅鶴』
第八航空戦隊(司令官:角田覚治少将):改翔鶴型航空母艦『神鶴』、改翔鶴型航空母艦『飛鶴』
第一防空戦隊(司令官:野村留吉少将):阿賀野型防空巡洋艦『阿賀野』、阿賀野型防空巡洋艦『能代』
第四駆逐隊(司令官:田中頼三大佐):陽炎型駆逐艦『野分』、『嵐』、『萩風』、『舞風』、『秋雲』
第一防空駆逐隊(司令官:西村祥治少将):秋月型防空駆逐艦『秋月』、『照月』、『涼月』、『初月』、『新月』
第19潜水隊(司令官:清水光美中将):巡潜乙型潜水艦『伊号第五十五潜水艦』、『伊号第五十六潜水艦』、『伊号第五十七潜水艦』、『伊号第五十八潜水艦』
以上が、第二航空艦隊の編成となっている。
また、今回の作戦で臨時編成されたのは、
高速給油船(タンカー)団・護衛部隊(司令官:阿部俊雄大佐):吹雪型駆逐艦 『朧』、『潮』、『曙』、『漣』
高速給油船(タンカー)団:8隻
以上が、臨時編成として参加していた。
遠藤からすれば、本音を言えばアメリカとの開戦が回避出来れば、それに越した事はないと思っていた。
だが、現状では『日米開戦、止む無し。』の世論が、国内に高まりつつあった。
そして、拍車を掛ける様に、アメリカ側の日本への圧力は、日々、増していた。
1941年(昭和16年)8月1日、アメリカは、日本を含む「侵略国」への石油の禁輸を発表。
これは、7月24日にウェルズ米国務長官代理が野村吉三郎駐アメリカ大使に警告した通りの動きだった。
これによって日本は、資源の確保に苦しんでいくことになる。
更に、アメリカ国務長官コーデル・ハルから日本側に最後通牒・通称『ハル・ノート』が突き付けられた。
『ハル・ノート』の内容は『日本軍の中国からの撤退・仏領のインドシナからの全面撤兵の要求・日独伊三国軍事同盟の破棄・蒋介石政権以外の政権の受諾拒否』であった。
日本とアメリカの戦争は、すぐ目の前にまで、迫っていた・・・。
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