第19話 第二航空艦隊 ー潜水艦・その他ー
第二航空艦隊の訓練が終わりを迎えつつある中、戦艦『長門』から少し離れた海域で、海中から4隻の潜水艦が浮上してきた。
巡潜乙型として建造された第19潜水隊に所属する『伊号第五十五潜水艦』、『伊号第五十六潜水艦』、『伊号第五十七潜水艦』、『伊号第五十八潜水艦』だ。
4隻の潜水艦も、今回の訓練に参加していたので、慌てる者達はいなかった。
4隻の統一された形で海面に浮上した姿を見て、鼓舞が素直に称賛した。
「流石、清水さんですね。まぁ、徹底的に鍛えられた4隻の乗組員達には、思わず同情してしまいますが・・・。」
軽く苦笑いする鼓舞の言葉に、遠藤も苦笑いするしかなかった。
元々、連合艦隊直卒・第4潜水戦隊指揮下のに所属する第18潜水隊と第19潜水隊に所属していた4隻を遠藤が山本に申し出て、今回、第二航空艦隊に配属してもらった。
そして、第19潜水隊の司令官に抜擢されたのは、清水光美である。
清水は軍令部勤務が長かったが、新しい採用基準を取り入れたりと、柔軟な思考の持ち主であると同時に優秀な人物だった。
遠藤は、清水と話しをしていく中で、清水から『ある提案』をされた。
それを聞いた遠藤も、その提案に興味を持ち、とことん、議論を交わした。
結果、遠藤は清水と意気投合して、正式に潜水艦隊の司令官を打診した。
これを聞いた清水も、開戦直後の真珠湾攻撃計画と、議論を交わした『ある提案』に納得した上で、遠藤のスカウトを快く引き受けてくれた。
他にも遠藤は、第7駆逐隊の吹雪型駆逐艦 『朧』、『潮』、『曙』、『漣』の4隻も編成に加えた。
そして、4隻の主な任務は航行の途中、洋上での燃料補給が必要な事から手配した8隻の高速給油艦(タンカー)を護衛する事だ。
4隻の吹雪型駆逐艦の司令官を務めるのは、阿部俊雄だ。
阿部は、第一航空艦隊に所属する第8戦隊司令官を務める阿部弘毅少将の弟でもあった。
阿部もまた、勇猛果敢な人物だが、遠藤が持ってきた話に眉をひそめた。
何故かと言えば、吹雪型駆逐艦隊の任務内容が、主に高速給油艦隊の護衛だからだ。
しかし、そんな阿部に遠藤は、
「貴方の不満は理解するけど、給油艦隊がいないと作戦実行は不可能です。所謂、『縁の下の力持ち』ですが、それは目に見えない所で重要な役割を果たしています。」
阿部は、遠藤の言葉を聞いて、考え込んだ。
そんな阿部に改めて、遠藤は、
「だからこそ、貴方には、高速給油艦隊の護衛をお願いしたいと考えていました。改めて、如何でしょうか?」
と尋ねた。
遠藤の言葉を聞いて、阿部は更に考え込んだ。
やがて、阿部は口を開いた。
「自分が抱いていた戦場での戦いのイメージとは異なっていますが、貴方がそこまで仰るのならば、その任務、喜んでお引き受けします。」
そう言って、阿部は遠藤に頭を下げて答えた。
こうして、遠藤が率いる第二航空艦隊の編成及び、各司令官達が選ばれた。
やがて、遠藤達が見守る中、第二航空艦隊の訓練が終わろうとしていたが、そんな中、佐野が遠藤の元に駆け付けて来た。
「長官、電文ですっ!」
そう言って、佐野は一通の電文を遠藤に渡してきた。
それを受け取り、内容を読んだ遠藤は、眉をひそめた。
(何がなんでも、アメリカは日本を戦争に引きずり込みたい様だな・・・。)
遠藤は、アメリカとの開戦が間近であると確信した・・・。
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