第18話 第二航空艦隊 ー駆逐艦編ー
第二航空艦隊が輪形陣を形成した中、艦隊の周囲を守る様な形で航行している10隻の駆逐艦。
駆逐艦は、大きく分けて二つの編成でされていた。
一つは、陽炎型駆逐艦で編成された第四駆逐隊。
配備された陽炎型駆逐艦は、15番艦『野分』、16番艦『嵐』、17番艦『萩風』、18番艦『舞風『』、19番艦『秋雲』である。
陽炎型駆逐艦は最新鋭艦の駆逐艦で、
兵装は
50口径三年式12.7cmC型連装砲 3基6門
九六式25mm連装機銃 2基4門
(61cm)九二式4連装魚雷発射管四型 2基8門
九三式魚雷 16本
九四式爆雷投射機1基、三型装填台1基
爆雷投下台 水圧三型2基、手動一型4基
九一式爆雷 36個
他に、対空単装機銃も10基が増設されている。
本来は、第二艦隊・第四水雷戦隊に所属していた隊を、遠藤が第二航空艦隊に譲渡してもらう様に手配した。
なお、『秋雲』は臨時で第四駆逐隊に配備された。
そして、第四水雷駆逐隊の司令官に抜擢されたのは、田中頼三だった。
田中は木村とは違う形で、評価は低かった。
しかも、指揮官としての評価は『相応しくない』という散々な内容だ。
しかし、中には田中を高く評価する人達もいた。
正直、田中を低く評価しているのは、上層部が多かったのだ。
勿論、遠藤は、内面を見ないで評価をするだけの連中の言葉には耳を傾ける事はせずに、現場の人達の話を聞いた上で田中に会って、色々と議論を交わしたりして話をした。
結果、遠藤が考えていた通り、田中は見た目では『猛将』のイメージではないが、臨機応変に対応が出来る人物だった。
だからこそ、遠藤は改めて、田中に第四駆逐隊の司令官になって欲しい事を話した。
そんな遠藤に対して、田中は、
「申し出は嬉しいですが、貴方への反発が強くなってしまいますよ?」
と答えた。
実際、遠藤は鼓舞、木村などを抜擢していて、此れを快く思わない連中が多数いるのも事実だった。
だが、遠藤は田中の抜擢を諦めるつもりは、全く無かった。
「周りの戯れ言に対して、ご機嫌取りをする気は無いです。日米関係が悪化しつつある今、開戦になった時に必要なのは評価もあるでしょうが、実際に臨機応変に対応が出来る指揮官です。改めて、田中さん、第四駆逐隊の司令官の話、引き受けてくれますか?」
と再度、田中に話した。
遠藤の言葉を聞いた田中も、腹を括った。
「そこまで、私を評価して頂けて光栄です。第四駆逐隊の司令官のお話、引き受けます。」
そう言って、田中は引き受けてくれた。
そして、もう一つの駆逐艦隊は、日本海軍初の防空駆逐艦として建造された秋月型駆逐艦で編成されていた。
秋月型駆逐艦は、空母を始めとする艦隊上空を守る為に設計、建造された艦艇だ。
しかし、艦隊戦思考が拭いきれなかったのか、初期計画では、魚雷管の設置も予定されていた。
その後、遠藤らによって、魚雷管は外され対空機銃の他に噴進式爆雷(ヘッジホッグ)が設置された。
噴進式爆雷(ヘッジホッグ)は、単純に海中投下するそれまでの対潜爆雷とは異なり、発射器より一度に複数の弾体を投射する、多弾散布型の前投式対潜兵器である。
これにより、敵潜水艦の真上に行かずとも、離れた距離からの爆雷攻撃が可能になった。
他にも、主砲は速射率の高い、65口径10cm連装高角砲が4基、設置された。
これにより、秋月型防空駆逐艦の兵装は、
主砲:65口径10cm連装高角砲 4基
9連装噴進式爆雷(ヘッジホッグ)1基
25mm機銃 連装25mm機銃 3連装9基、単装14基
九四式爆雷投射器2基、爆雷投下軌条2基
九五式爆雷54個
になっていた。
1番艦『秋月』、2番艦『照月』、3番艦『涼月』、4番艦『初月』、5番艦『新月』によって編成された隊は、防空が主な任務になっていた事から、『第一防空駆逐隊』という名称で呼ばれる事になった。
第一防空駆逐隊の司令官に抜擢されたのは、
西村祥治だ。
指揮官としての西村は、元々、慎重派だが、綿密に計算して戦いに挑む人物だった。
慎重だからこそ、防空駆逐艦隊の指揮官として適していると遠藤は考えていた。
また、西村の人柄としては正義感が強く、旧制秋田中学校時代には寄宿舎で舎監に不都合があり、西村少年は見過ごすことができずに教師相手に対して、問責糾弾して一歩も引かなく、結果、秋田中学校を退学させられた経緯がある。
早速、遠藤は西村の方とも議論も含めて話した上で、彼が防空駆逐隊の指揮官として適していると確信した遠藤は、西村に打診した。
西村の方は、少し考えていたが、快く引き受けてくれた。
こうして、二つの駆逐艦隊の指揮官が決まった。
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