第16話 第二航空艦隊 ー空母編ー④

【率直に言うとな、俺達三人を第二航空艦隊の空母部隊の司令官として、起用してみないか?】


山口の言葉に、遠藤だけでなく、その場にいる全員が、暫しの間、絶句した・・・。

最初に口を開いたのは、遠藤だった。

「正直、驚きました・・・。特に角田さんも来るとは・・・。」


遠藤の言葉に、角田は苦笑いしながら言った。

「正直、君より山口が第二航空艦隊の司令官として相応しいという考えは、今でも変わっていない。」

遠藤は敢えて言わず、ただ、聞いていた。

「だが、山口からだけでなく、小澤さんや山本長官など色んな人達から聞いたんだ。本来、第二航空艦隊に配備された艦艇の多数を、君が各方面に奔走して掛け合っていたから前倒しの完成が出来た事も・・・。」


少し間を置いて、角田は話続けた。

「だからこそ、山口や小澤さんから声を掛けられた時、君の近くで、君の手腕を見てみたいと思ったんだ。頑固者だが、俺を起用してみないか?」

遠藤は、すぐには返事をせずに、山口と小澤に尋ねた。

「山口さんと小澤さんは、如何なる理由で志願を?」


遠藤の問いに、山口は、

「そうだな・・・。俺はあの図上演習が切っ掛けだったな。あの後、長官や小澤さんにも君の事を色々と聞いて、改めて、君の側で君の手腕を見てみたいと思った。それが理由だな。」


次に、小澤が答えた。

「お前は、樋端から航空機動艦隊の原案を最初に提示された俺を訪ねて、航空機動艦隊について議論を交わした頃からだな・・・。」

小澤は遠藤と議論を交わした中で、空母だけでなく他の艦艇も活用するべきと主張した遠藤の柔軟な思考に感心していた。

「だから、お前の元で戦い、お前の知識を得て、いつかは自分の率いる航空機動艦隊にも活用したいと考えている。」


三人の話を聞き終えた遠藤が、少し考え込んでから口を開いた。

「そうなると、問題は山口さんですね・・・。南雲さんと、また、話し合いをしなければならないし・・・。」

それに対しては、山口が答えた。

「それならば、大丈夫だ。既に南雲さんと草鹿さんには、話をして了解済みだ。条件としては、第二航空戦隊に適任な人物を抜擢してくれと言われたよ。」


「だったら、第五航空戦隊の原忠一少将を第二航空戦隊の司令官に抜擢して、第五航空戦隊の方は『翔鶴』の艦長である城島高次さんを少将に昇進させて、当面は『翔鶴』の艦長を兼任してもらいましょう。」

遠藤の提示された内容を聞いた山口は、了解した。

「なる程・・・、そういう事ならば、南雲さんは納得するだろう。南雲さんに話しとこう。」


話が纏まった中で、遠藤は改めて、山口、小澤、角田に言った。

「改めて、皆さんに聞きます。俺達の第二航空艦隊で、空母部隊の各司令官を引き受けて頂けますか?」


「勿論だ。此方こそ、宜しく頼む。」と山口が答えた。

「お前の手腕、間近で学ばせて貰うぞ。」と小澤が笑いながら答えた。

「君の手腕を、この目に焼き付けさせて貰うよ。宜しく頼む。」と角田も答えた。


三人の返事を聞いた遠藤は、

「有り難うございます。各航空戦隊については、後日、お伝えします。」

そう言って、遠藤は三人に敬礼し、三人も敬礼で返してくれた。


その様子を見ていた樋端は、

(若大将が率いる第二航空艦隊は、艦隊だけでなく幕僚達も含めて人材も、最強だな。出来たら、俺も加わりたかったな・・・。)

そう思いながら、樋端は、彼等を頼もしく感じていた・・・。

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