第15話 第二航空艦隊 ー空母編ー③
話は、洋上訓練の約一ヶ月前に溯る・・・。
遠藤が、特別室で鼓舞達と共に第二航空艦隊に配備された各艦隊の司令官について協議していた。
また、この場には状況確認の為に、樋端も来ていた。
「それで若大将、各空母の司令官は誰にするんですか?」
鼓舞の質問に、皆も耳を傾けていた。
「候補としては、角田さんがいるが、あの人は拒否するだろうな・・・。」
遠藤の言葉には、鼓舞達も納得するしかなかった・・・。
角田覚治少将は、遠藤よりも山口を高く評価していた。
山口より一期上の先輩である角田だが、「山口の下でならば、喜んで戦いたい」と言う程だった。
実際に、第二航空艦隊の設立が決まった時、角田は司令長官には山口が選ばれると思っていた。
だが蓋を開けてみれば、山口は第二航空戦隊の司令官のままで、第二航空艦隊の司令長官には遠藤が抜擢された。
納得がいかない角田は、何度も山本、永野、嶋田に抗議したが受け入れて貰えず、山口にも同意を求めた。
しかし、山口は角田に言った。
「角田さんは、彼の事を知らないからそんな風に言えるんだよ。実際に、山本長官達の真珠湾奇襲計画の指摘や手直し、更に図上演習は凄かったからな・・・。」
そう言って山口は、角田を何度か説得したが、効果は無かった・・・。
その辺りを知っている樋端も苦笑いをして言った。
「あの人は、目の前で若大将の手腕を見ないと、認めないだろうな・・・。」
樋端の言葉には、遠藤も同意見だった。
流石に、遠藤達も悩んでいた時、ドアがノックされた。
遠藤が「入って良いぞ。」と言うと、一人の若い海軍士官が入ってきた。
普段、遠藤に連絡を伝えてくれている士官だ。
「遠藤少将、貴方に会いたいという方が、三人、来ていますが・・・。」
最近は、石島達の様な厄介な連中が来ない様に、事前に予約をしてもらっていた。
勿論、会談内容も納得が出来るのみにしている。
「今日は、来訪者の予定は無い筈だったが・・・。誰だ・・・?」
遠藤が首を傾げると、士官の口から出た来訪者の名前を聞いて、全員が驚く事になった。
「それが・・・、山口少将、小澤中将、角田少将の三人です。」
士官の言葉に、「えっ・・・!?」と遠藤も思わず答えた・・・。
遠藤達が思わず絶句する中、部屋に山口、小澤、角田が入ってきた。
そして、山口が遠藤に
「事前連絡もしないで、済まなかったな若大将。相談したい事があって、来たんだ。」
と言った。
少し戸惑いつつも、遠藤は三人に開いている席に座ってもらった。
連絡役の士官が退室してから、遠藤は山口に尋ねた。
「それで、相談とは・・・。」
それに対して、山口は言った。
「率直に言うとな、俺達三人を第二航空艦隊の空母部隊の司令官として、起用してみないか?」
山口の言葉に、遠藤だけでなく、その場にいる全員が、暫しの間、絶句した・・・。
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