第11話 第二航空艦隊 ー戦艦編ー 前編
ー高知県・土佐湾近くの太平洋上ー
この日、土佐湾近くの太平洋上では、遠藤率いる第二航空艦隊が一部の戦力を除いてはいたが、全戦力で洋上訓練を行っていた。
艦艇同士の陣形訓練、対艦攻撃、防空訓練や艦載機による模擬戦などを実戦さながらの形で行われていた。
勿論、実戦さながらの訓練だから、遠藤は容赦する気は無かった。
遠藤の元には、訓練結果が次々と報告されてきていて、その度に、遠藤は鼓舞達と協議して問題点を改善して、再び訓練を行わせていた。
現在、遠藤達が座乗していたのは、第二航空艦隊・第一戦隊所属の高速戦艦『長門』だ。
外見から見ると従来の『長門』とは異なり、新造艦と言っても過言ではなかった。
しかし、実際は、約二年前にドック入りして大改装されたからである。
一緒に航行しているのは、同じく大改装された長門型高速戦艦二番艦『陸奥』だ。
改装後の長門型高速戦艦の最大の特徴は、船首を15m延長している事だ。
これにより、船体は全体的にスマートなシルエットになっていた。
更に、艦橋と煙突はこれまでとは違い、突起物の少ない艦橋と煙突になった。
また武装は、主砲が従来の40cm連装砲塔が4基、対空兵装は12.5cm連装高角砲(シールド付き)が6基、対空機銃はシールド付きの25mm三連装機銃が12基が装備された。
他にも、中央のバルジも改修された他、側面に設置されていた副砲を全て撤去した。
この大改装により、全長230.8m、基準排水量は47.000トンに増え、また、動力機関も最新型に換装されて速力は平均29.5ノットになった長門型高速戦艦は、空母の護衛も出来る様になった。
他に第二航空艦隊に配備されたのは、第四戦隊所属の金剛型高速戦艦一番艦『金剛』と三番艦『榛名』も配属されていた。
こちらは、艦橋の防空指揮所の増設の他に、対空兵装の高角砲や機銃の増設、舷側のバルジ増設及び防御力アップを行った。
これにより、速力は若干落ちて29.5ノットになったが、空母の護衛艦として速力は充分だった。
また、伊勢型戦艦一番艦『伊勢』と二番艦『日向』も、同じ時期にドック入りして船体の延長などを含めて長門型2隻と同様に大改装を行い、今後は南雲が率いる第一航空艦隊に配備される予定だ。
遠藤が4隻の大改装を提案した事に関しては、遠藤が以前に『一号艦』の件で騒動を起こした事から、一部の大艦巨砲主義者達の恨みを買われていた時期があった。
そこで遠藤は、『一号艦』の代案として彼等に提案したのが、長門型戦艦2隻と伊勢型戦艦の2隻を高速戦艦に大改装する事だった。
結果、強力な高速戦艦に生まれ変わるという事で、大艦巨砲主義者達が喜んだのは言うまでもなかった。
そんな中、風間が大改装された長門型高速戦艦の姿に感嘆していた。
「本当に、スマートな艦艇になりましたね・・・。最初は、新造艦だと勘違いしてしまいましたよ・・・。」
それには、鼓舞達も同じ気持ちだった。
今回、第二航空艦隊の幕僚ではないが、奥奈と長津田も『長門』に乗り込んでいた。
元来、鉄砲屋だった奥奈にとって生まれ変わった『長門』と『陸奥』の姿には、感激している様子だった。
「奥奈、感激し過ぎだぞ。」
長津田が半ば呆れながら、言った。
それに対して、奥奈は、
「何を言うんだ。鉄砲屋からすれば、正に男冥利に尽きるぞ。」
二人のやり取りを、遠藤が軽く苦笑いしながら見ていると、一人の将校が声を掛けてきた。
「我々、第一戦隊の2隻を褒めて頂くのは嬉しいですが、本命は彼方の6隻の空母ですよね・・・。」
遠藤に声を掛けたのは、第一戦隊司令官の松田千秋少将だった・・・。
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