第10話 勢揃いした第二航空艦隊の幕僚達
鼓舞の推薦から、数日後、遠藤の特別室には三人の士官が来ていた。
一人は、長津田に似た細い体格をした士官で、もう一人は奥奈に近い体格をした士官、最後の一人は普通の体格をした生真面目感のある青年士官だった。
まずは、細い体格をした士官が自己紹介をした。
「本日付けで作戦参謀として着任した、風間俊介中佐です。宜しくお願いします。」
風間は、鼓舞と樋端の海軍兵学校の同期かつ友人だった。
鼓舞の推薦と後から樋端の推薦も加わり、風間と話し合った結果、友人繋がりのコネではなく優れた人物という事で作戦参謀に着任してもらう事になった。
「同じく、本日付けで航海参謀として着任した、遠山宏明中佐です。宜しくお願いします。」
遠山は少しぶっきら棒な形で着任の挨拶をした。
遠山は、主に駆逐艦や巡洋艦の航海長を務めていて、航海長としての評価はあった。
しかし、形だけの艦長は艦長として認めない為、その手の艦長との対立は頻繁にあった。
今回は、そんな連中から煙たがられて、遠藤への推薦という形だった。
「同じく、本日付けで第二航空艦隊・通信参謀として着任した、佐野六郎少佐です。宜しくお願いしますっ!!」
佐野は、遠藤の亡き祖父・遠藤宗泰の友人である阿曇誠之進中佐の推薦で起用した士官だ。
阿雲中佐曰く、「佐野は赤煉瓦(海軍省)勤めが多いが、実戦を積めばお前の力強い部下になるぞ。」との事だった。
勿論、贔屓はしないから、直接、佐野と話して、まだ粗い部分があるけど、阿雲中佐の言う通りの人材だとして起用する事にした。
三人の自己紹介及び着任の挨拶が終わった時、遠山が遠藤に聞いてきた。
「少将、貴方の噂は良くも悪くも有名ですが、自分の着任も厄介者として受け入れたのでしょうか?」
遠山の挑発にも聞こえる発言に、久我などが席から立ち上がろうとしたが、遠藤が手で制して止めた。
「君のことは聞いているが、勘違いしないでくれ。推薦という名の押し付けならば、俺は断っていた。」
遠山が遠藤の言葉に戸惑う中、遠藤は続けた。
「君を煙たがる者達がいるのと同時に、君を尊敬する者達もいる。俺なりに調べたり聞いたりした上で、君を高く評価して航海参謀として迎えいれたんだ。」
更に、遠藤は続けた。
「むしろ、君を厄介者扱いして手放した奴等に、手放した事を死ぬほど後悔させてやれ。それが出来ずに不貞腐れるだけならば、そんな男は必要無い。この職を辞すれば良い。」
遠藤の真剣な言葉を受けた遠山は、自然と涙が流れていた。
自分を評価して、迎えいれてくれた遠藤の器の大きさを同時に感じながら・・・。
そして、遠山は直立不動の体勢で敬礼しながら、言った。
「若大将、航海参謀として全力を尽くしますっ!!改めて、宜しくお願いしますっ!!」
遠山の言葉を聞いて、遠藤も答礼しながら答えた。
「此方こそ、宜しく頼む。これで、第二航空艦隊の幕僚達が勢揃いしたな。これからは、忙しくなるぞ。皆、宜しく頼む。」
そう言って遠藤が皆に敬礼すると、鼓舞達全員も敬礼をして遠藤の期待に添える事を誓った。
この日、遠藤を中心として第二航空艦隊の最強チームが誕生した・・・。
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