第9話 抜擢される二人の航空参謀 後編


淵田の件は期間限定とは言え、南雲の許可を得た事で遠藤と長津田は淵田を連れて、霞ヶ浦の航空基地を訪ねた。


そして、久我と淵田は、三年振りに再会をした。

「淵田・・・、久しぶりだな・・・。」

それに対して、淵田は懐かしそうに話した。

「ほんまやな、久しぶりや。久我、あの時は庇いきれなくて悪かったな・・・。」

そう言って、淵田は久我に頭を下げた。

久我は、慌てて

「淵田が謝る必要は無い。」と言った。


そう言った久我に、淵田は話した。

「実はな、源田の奴からも伝言を預かっている。本来なら、直接、謝りたかったんだけど、航空参謀の仕事で立て込んでいてな・・・。」

「源田が!?」

久我からしたら源田は、当時、久我を担ぎ上げていながら、その後は庇わなかった連中の一人だった。

「源田曰く、『あの時は、保身があったとは言え、申し訳なかった。会う機会があったら、一杯、奢る。』と言うてたよ・・・。」

淵田から源田の伝言を聞いた久我は、

「そうか・・・、あいつが・・・。」


二人の様子を見て、遠藤は、いきなりは無理でも三人の関係修復は出来るだろうと感じた。

「淵田は、期間限定でだが航空乙参謀を引き受けてくれた。改めて、久我に聞きたい。先日の航空甲参謀の話、引き受けてくれるか?」

遠藤の問いに、久我は答えた。

「分かりました。第二航空艦隊・航空甲参謀の話、お引き受けます。宜しくお願いします。」

頭を下げながら、久我は答えた。


その後、霞ヶ浦航空隊の司令官と話しをしてて承諾を得て、久我は遠藤の参謀となった。

淵田と久我を連れて遠藤は長津田と共に海軍省の部屋に戻ると、留守番を任されていた鼓舞と奥奈は意外そうな顔をして遠藤達を出迎えた。


「若大将、二人を立て続けに引き抜くとは、これは幸先良いですね。」

鼓舞が嬉しさ半分、揶揄い半分で言ってきた。

そんな鼓舞の言葉をスルーして、遠藤は尋ねた。

「留守中、何かあったか?」

遠藤の問いに対して、鼓舞よりも奥奈が疲れた顔をしながら言った。

「来ましたね・・・。主に、石島さん達が・・・。」


それを聞いた遠藤は、何があったのか察した。

「何を言われたのか、想像が付くな・・・。」

遠藤はそう言いながら、鼓舞と奥奈を労った。

多分、無能と見下していた鼓舞が昇進の上に栄転したのが、余程、悔しかったから嫌味を言いに来たのだろう。


「まぁ、連中については鼓舞さんが撃退してくれました。」

奥奈の話を聞いて、鼓舞がどんな形で撃退したのか、そちらも想像が出来た。

普段から石島達は、鼓舞に嫌味を言いたい放題だったから、そんな石島達に鼓舞は自分流に言い返してやったのだろう。

ある意味、その場面を見てみたかったと、遠藤は思った。


とは言え、場の雰囲気を変える為に、遠藤は話題を変えた。

「後は、航海参謀、作戦参謀、通信参謀だな・・・。」

すると、鼓舞が提示してきた。 

「作戦参謀については、俺と樋端の同期でもあり友人に心当たりが有りますが・・・。」


どうやら、思ったよりも早く、参謀が揃いそうだなと遠藤は思った・・・。

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