第4話 遠藤泰雄少将に関しての周囲の反応

【遠藤泰雄少将を、第二航空艦隊司令長官に任ずる】


海軍内部では、山本、嶋田、永野が遠藤を第二航空艦隊の司令長官に抜擢した事は、良くも悪くも、話題となり騒がれた。


特に、自称エリート連中にとって、遠藤は格好の口撃対象になった。

しかし、遠藤は自称エリート連中の嫌味など、そこら辺の道端に落ちている石ころが口を生やしてほざいているだけだと一蹴して、相手にしなかった。

また、中には若過ぎると山本、嶋田、永野に抗議するのもいたが、山本達は「遠藤ならば、大丈夫だ。」と言って抗議した連中を説得して、引き下がってもらった。


また、陸軍でも遠藤の件は話題になっていた。

しかも、遠藤は山本・井上成美中将・予備役になっている米内光政大将と共に『日・独・伊三国軍事同盟』締結時に強く反対していた事から陸海軍の『強硬派』や『親独派』から煙たがれていた。


それでも、遠藤が今の立場にいる事が出来たのは、『さる御方』が遠藤を強く信頼し、強く支持していたからだ。

また、『ある事件』で遠藤を怒らせた事で、彼に畏怖する者が大多数いたから彼に対しては危害を加える愚者はいなかった。

更に、少数だが、陸軍の『良識派』だけでなく皇族、政財界にも、遠藤を高く評価している人達がいたのだ。


そして、先日の『真珠湾奇襲計画』の問題点を指摘し、改修案を提示して図上演習で証明した件も周囲に知れ渡り、遠藤の評価を上げていく事になった。


勿論、この件で遠藤に対して、逆恨み、嫉妬、妬みを抱く人達もいた。

黒島も、その一人だ。

彼は自信を持って完成した『真珠湾奇襲計画』の問題点を指摘され、図上演習で証明されたからプライドを傷付けられた様な感じだった。


黒島が、若くして少将になった上に第二航空艦隊の司令長官に抜擢された事から、遠藤を『若大将』という渾名で揶揄した事から自称エリート連中や、プライドしか持っていない連中も遠藤を『若大将』と呼んで揶揄する様になった。

最も、遠藤は気にしていないばかりか、後に『若大将』は遠藤の呼び名又は代名詞になっていくのだった。


更に、遠藤は仕事や作戦で露骨な嫌がらせや妨害をされた場合は、仕出かした相手に対しては一切、容赦しない事を遠藤を敵対視したり、見下している連中は、これから嫌というくらい思い知る事になるのだった・・・。


そんな状況の中、遠藤は山本達が手配してくれた一室で、一人、考え込んでいた。

「さて・・・、既に艦隊の編成はある程度、

目処が立ったけど、自分の幕僚達を揃えないとな・・・。無能や自称エリート達は論外だから、如何すれば良いか・・・。」


遠藤がスタッフ達の事で考え始めた直後、ドアをノックする音がした。

「どうぞ、入って下さい。」遠藤がそう言うと、ドアを開けて一人の男が入室してきた。

「若大将、君の参謀長に適任な俺の同期がいるのだが、どうかな?」


遠藤にそう言ってきたのは、山本の幕僚の一人で連合艦隊航空甲参謀・樋端久利雄中佐であった。

彼は早くに空母の集中運用(航空機動艦隊の原案)に着想した人物の一人で、かつて海軍大学校校長だった小澤治三郎中将に航空機動艦隊の原案を提示した人物だ。


以前に樋端から遠藤は、航空機動艦隊のノウハウを学んだ事がある。

同時に樋端の航空機動艦隊の知識を瞬く間に吸収しただけでなく機動艦隊の周囲を護る護衛艦隊の防空戦術を提案して、樋端もまた遠藤の先見の明に驚嘆をした経緯がある。

先日の図上演習で樋端は改めて、遠藤の才能を高く評価していた。


「樋端さんの推薦ならば、是非とも、聞きましょう。」

それが遠藤にとって、彼の片腕となる男との出会いになる切っ掛けでもあった・・・。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る