第3章 運び屋ロブと新たな仲間たち

ダンジョンの疲労から復活したのは、帰還した翌々日のこと。その間に講習会に参加したような記憶はあるが、あまり覚えていない。


玄関にポーションの教科書が到着したという連絡が商業ギルドから来ていることに気付き、講習会の前に取りに寄ることにした。


──窓口でいつものフランさんに手続きをお願いして、ギルドカードから代金を引き落として商品を受け取る。


その際、同様に商品を取り寄せることは可能か訊ねてみたところ、いくつかの方法で可能だとのこと。


早速、物理無効な魔物への対策である『魔法陣』に関する本と、スケさんへの感謝を込めて『刀』が取り寄せ可能か確認をお願いしてみる。


すると、商業ギルドは一部の質種や差し押さえの現物などが地下倉庫に入っているそうで、ちょうど刀がそういった在庫の中にあるらしい。


魔法陣の本も、先日貴族から回収した現物の中に大量の本があったそうなので、併せて見せてもらうことになった。


──地下にある倉庫へと向かうと、本屋か図書館かのように棚の列が並んでいて、その列のひとつへと案内された。


武器が集められた区画の中に、紛う方なき『日本刀』が並べられていた。5振の大刀と2本の小刀だ。


フランさんに断って手に取らせてもらい、鯉口を切ると、歪みひとつない綺麗な上身が現れた。


あまりに使用感の無い違和感と、それに対して鞘にいくつもある傷や打痕から、単なる鉄心入りの木刀として使っていたのでは疑惑が浮上する。


その疑惑が確信に変わったのは、それらがちょっと良い素材の量産剣ほどの手頃な値段であることと、取り寄せてもらうために調べてもらった値段が軒並み安価すぎたことだ。


中には、ダンジョン産だという聖銀ミスリル製の刀なんてものもあったが、本当に同重量の鋳潰したインゴット程の値段で投げ売られているらしい。


各地の商業ギルドにあるものは1週間ほどで取り寄せが出来るとのことなので、聖銀ミスリルや鋼など良い素材のものから順に集められるだけ集めてもらうことにした。


魔法陣の本についてはそれなりの値段ではあったものの、まだ懐は暖かいし稼ぐあてはあるため、ギルドカードでの支払いを済ませた。


商業ギルドを後にして、拠点に戻ってリビングで読むことにした。


──ポーション本を読み終わって感じたのは、『科学』の存在だった。


統計学や臨床試験といった、ファンタジーのそれとはかけ離れた手法を、こちらの世界へと持ち・・込んだ・・・形跡があった。


記述の中で、こちらの世界での臨床試験の実例があり、これは格納門での移動にも流用すべきだろうと感じた。


いわゆる生体実験というやつで、どうやらマウス実験の代わりに野うさぎを用いるらしい。


そちらで実験してみて問題なさそうであれば、ラビット氏の蘇生が安全に進められるだろう。


また、ポーション本には基本となるHPポーションの他に、MPポーションの作成方法も載っていたので、まだ入手していなかった魔力草も集めておきたい。


単なる運び屋ポーターではなく、ポーションを用いた回復職ヒーラーとしても活躍できれば、食い扶持に困らない冒険者活動ができるのではと考えたわけだ。


その際、ポーションを店から買うのではなく自給自足できれば、費用をかなり抑えられる。


ポーションを売って金を稼ぐという方法もあるだろうけど、それでは【空間収納】を秘匿し続ける状況は打開できそうにない。


一方で運び屋ポーターとして冒険者を続けていれば、深い階層での『成長レベリング』によって自衛するという筋道も立てられる可能性が出てくるわけだ。


スケさんと出会ったアジトのダンジョンでこっそり『成長レベリング』という方法も考えなくはないが、秘密なんてのは無いに越したことはない。


表の世界でギリギリ不自然ぐらいな『成長』を行うアリバイ作りのためにも、まずは素材である魔力草の確保を進めていこう。


──魔力草は、街の西にあるムルタクア川を上流へと遡った辺りにあるそうなので、格納門で視界を川の上空へと繋いで、南方向の山へと進めていった。


ここで、【空間収納】がLv.11になった際に、成長ポイントを【距離延長】へと振っておいたことが活きてくる。


いざという時の逃走経路確保という側面もあったが、移動可能範囲の拡大という点でも良い選択だった。


【格納門移動】がMAXになったこともあり、ものの数秒で中州の終着点へと到達し、周囲は平地から樹々の生い茂る山へと変化していく。


魔力草は、魔力の強い湧水地や魔物の塒だった場所などで生える傾向にあるそうで、ちょうど先日シスターから教わった『魔力感知』が非常に役立つことになった。


付近を『魔力感知』で視ると、ぽつぽつと魔力の強い場所が見えてくる。地脈を通った湧水地となっている場所のようで、近付いてみると実際に魔力草が数枚あることが確認できた。


ただ、付近の上薬草や中薬草の分布に定期的な採取が行われている形跡があったため、他の冒険者が立ち寄っている採取地であることに気付く。


ここで採取してしまうと何らかの痕跡が残る可能性があるため、もっと山の奥を探すことにした。


──日帰りの距離を過ぎた辺りだろうか、手がついてない場所が一気に増えたので、その辺りから試しに採取してみることにする。


すると、いくつか採取した辺りで、面白い傾向が見えてきた。


魔力草も薬草と同様に品質に上中下があるようで、【空間収納】に貯まっていく魔力草の比率が、中州で採取された薬草のそれと類似していたのだ。


魔力草の周囲には薬草も生えていて、放置された薬草が魔力草に変化していそうなので、しばらく観察していくことにした。


──20カ所ほどを回って450本ほど集めた辺りで、強い魔力溜まりになっている崖の上の穴場を見つける。


崖の上へと行ってみると、辺りには湯気が立っており、その周りには黄色い魔力草が一面に広く生い茂っていた。


一気に240本ほどの魔力草を採取することができたその温泉地は、魔力草の『中州』と言えるだろう。


恐らく今後の魔力草採取の中心となるその温泉の場所について、一度離れてから格納門を開けるか試してみたところ、強くイメージか残ったためか問題なく成功した。


一方で、温泉までの道のりで見つけた魔力草の採取地は、山の中で特徴が無かったため記憶に残らず、格納門を開けないようだった。


格納門を開くにあたっては、やはり記憶に残る印象の強さは重要なようだ。


──魔力草の収穫は温泉の周囲までで一旦止めて、今度は生体実験のために野うさぎを捕まえる罠の作成に取り掛かることにした。


以前に見たことがあったネズミ取りの罠を木の切株で作り、餌になるという薬草を切り刻んで仕掛けた。


仕掛け終わったところで、【空間収納】がLv.12になったようで通知が来た。成長ポイントの振り分けについては一旦保留にする。


あとは野うさぎが切株の罠にかかるのを待つばかりになり、周囲を魔力感知で探って魔力草探しを再開した。


結果、30カ所ほどを回って追加で1000本の魔力草が手に入った。合計1700本だ。


1日の収穫としては中州を超える量ではあるものの、ポーション本によると魔力草は再度の収穫に時間が必要らしい。


今後しばらくは周囲を見回って経過を観察しながら、ポーション作成でもすすめておくことにしよう。


──魔力草採取を終えて切株に戻ると、罠には5匹の野うさぎがかかっていた。


早速実験をするべく、罠の近くへと移動して、麻痺の吹き矢を使って動けないようにする。


持ち上げた野うさぎを格納門で移動させると、腕と同量ほどのMPが消費された。


しばらくして野うさぎは動き出したので、問題なく送り出せることを確認できたようだ。


その後、ギルドの納品のために初めて野うさぎの血抜きってのをしてみたものの、鳴き声に心が折れてしまい2匹目からは眠らせてから一気にやってしまった。


血を抜いた後は解体する工程があるが、そちらはギルドの納品条件を確認してからの方が良さそうなので、一旦保留して収納しておくことにする。


下手に手を出して、素材をダメにしてしまう可能性もあるわけで。


『解体』は中級の講習の日程表の中にあった記憶があるので、ストーンEランクに上がったら受けてみるか検討しよう。


──作業を終えて拠点へと戻ってきたが、まだ時間は昼過ぎだった。冒険者ギルドで行われる講習は既に受講済みの『初級採集講座』なので、今日はこのまま時間が空いている。


そこで商業ギルドへと向かって、フランさんに『ポーション台』と呼ばれる魔道具の入手方法について相談することにした。


どうやら『ポーション台』は一般流通するような量産品の魔道具とは異なり、オーダーメイドが基本らしい。


金がある現状なら買うことはできるだろうけど、あまり初期費用が高いと回収するのが相当先になりそうではある。


費用対効果が微妙かもしれないと考えていたところで、フランさんから中古品で買って修理依頼を出してはどうかという提案をされる。


偶然にも丁度いいところにポーション台の在庫があり、これまた偶然にも先週修理に出して動作確認済み、らしい。


完全にギルマスがポーション本を取り寄せた時点で手を回していたようだけど、金貨2枚のところを大銀貨5枚ほど割引で売ってくれるとのことなので、そのまま乗せられるように購入した。


何か出来たら持ち込むようにとギルマスからの伝言もあったので、大量にポーションを作って持ってこようと画策する。


──早速、ポーション台を拠点の2階にある倉庫に設置し、取扱説明書を読みながら試運転させてみることにする。


乾燥や抽出といった各工程を魔道具化した機能群で構成されたポーション台は問題なく動作し、無事にHPポーション50本の作成に成功した。


ただし、取扱説明書に記載された想定と異なり、1本も劣化品が無い、全てが成功品質のHPポーションとして完成してしまった。


その後、夕食を挟んでMPポーションでも同様に実験してみたものの、こちらも全て劣化なしで100本という結果。


高価な魔道具であるとか、新鮮な薬草を採取しているからとか、実はステータスに出ない隠しスキルがあるとか、様々な可能性は考えられるが、比較対象も無いので結論は出ない。


しかし、現状で損する問題点では無いため考えても仕方ないことだと、思考を放棄することにした。


──翌日は、引き続き上位素材での作成を試すことにしたが、またしても劣化品は出なかった。


その上、教科書には載ってないものの、素材の名称からして存在しそうな『中級MPポーション』を中魔力草で試しに作ってみたところ、あっさりと出来てしまった。


出来てしまった以上は、初級のMPポーションより効果が高そうなので、残り1000本近くある中魔力草を加工してギルマスに押し付けることにした。


現在所持しているポーション素材についてはひと通り試作できたので、そこで作業を切り上げることする。


一方、その日にポーション作成の合間で受けた冒険者ギルドの講習により、講習会は一巡する形になった。


あとは薬草でも納品すればストーンEランクになれるわけだが、実は急いでギルドのランクを上げる目的を失っていた。


既に『ダンジョンに入る』という目的は、アジトのダンジョンで達成できてしまっているためだ。


問題は蘇生の手段で、【蘇生魔法】を使えるクララを引き入れるか否かだった。


もし『成長レベリング』だけが目的であれば交渉の余地はあるが、ダンジョン街フィファウデに行くことが目的の1つであれば、アジトダンジョンを使う案は却下される。


これに絡んで、お嬢様こと抱き合わせで付いてくるリナの目的というのが、全然把握出来ていない。


ひとまず明日にでも面会したいという連絡を講習会の帰りに入れておいたので、彼女らの目的とすり合わせ、また秘密を守れそうかを見極めることにした。


──翌日、聖白銀教会に向かったものの早めに着いてしまい、聖堂の方で待つことになった。


かなり質素で体育館のような見た目の聖堂に入って、室内に並ぶ長椅子の1つに座ろうとした。


しかし背もたれに触れた途端、ステータス画面が音と共に表示されて、『システム更新がある』ことを通知してきた。


素直に応答して更新を進めると、システムの更新で『神託メール』が届くようになり、メールが早速2通届いたようだった。


そのうち1通は『神託メール』が実装されたという更新内容の説明だったが、もう1通は勇者であるスケさんと接触したことに端を発した『指名依頼』だった。


スケさんのステータスシステムもアプデしてほしいとのことで、更新方法としては教会に直接スケさんを連れてくるか、あるいは神像に触れさせるかで更新を行う必要があるとのこと。


ご丁寧にも、神像作成用にデフォルメされた女神デメディシナの三面図まで用意されていた。


神託という新たなクエストを受注することになったところで、リナとクララが聖堂に来たので、パーティを組むかどうかの相談をすることになった。


──個室へと移動して、活動拠点など基本的なことや、メインとなるスキルを確認する。


リナは片手剣が主体の前衛で【火魔法】も扱えるそうで、クララはもちろん【聖魔法】使いのヒーラー。


他にパーティメンバーはなし、拠点はこのヨンキーファだが、ダンジョンに潜るようになったら移住も検討するらしい。


ロブは冒険者ギルドに申請してある【土魔法】と、使用者登録のある魔法袋で運び屋ポーターであることを伝えておく。


短剣での近接戦闘も可能ではあるが、本職がいるので期待されていないだろう。


こちらからは【蘇生魔法】が必要であること、その【蘇生魔法】が使えるクララも一人前と認められるLv.10まで『成長レベリング』することは既に相互に把握済みだ。


一方、あまり明かされていなかったリナの目的を問うと、「同じく『成長』でいい」という微妙な言い回しが返ってきた。


続いて、パーティを組む期間や期限について確認すると、リナは1年後に学園に入学する予定とのことで、それまでに金稼ぎよりも『成長』を優先で潜りたいらしい。


フィファウデのダンジョンには、クララの【聖魔法】にお誂え向きなアンデッドの出る階層があり、ドロップが渋く不人気で競合の少ない『成長』に向いた場所があるんだとか。


……色々と話は聞いてきたが、貴族の令嬢があえて『冒険者になる』理由が聞けてなかったし、もっと言えば門兵のような家臣を持つのに『自力で』活動していることも不可解だった。


『成長』に当たって、今後も家の関与が無いのか確認したところ、補助は断っているとのこと。


家からの指示ではなく、貴族の令嬢が個人的な事情から強くならなくてはならない状況。


こういった強気な令嬢が、望まない婚約を断る理由として『自分より弱い相手とは結婚できない』と言う展開が頭に浮かび、クララとの世間話の振りをしながら探りを入れてみたところ、どうやら大筋で当たっていたようだ。


リナが学園の下見に行った際に、たまたまいた豚辺境伯令息に見初められてしまい、『私より弱い人とは結婚できない』と断ったつもりなのに、相手が金を積んで冒険者を雇い『成長レベリング』しようとしているらしい。


元より男嫌いで、政略結婚なんて御免被ると出奔しようとしていたところを、学園を出たら自由にしていいと親である男爵の約束を取り付けたぐらいなのに、あんなものとの婚約なんて無理……といった理由で、冒険者となってダンジョンに向かい『成長』する必要があったとのこと。


ロブとしては、ダンジョンに潜れる権利は必要なものの、最速でアイアンDランクになって目立つのは避けたい。


リナとしても、ダンジョンへ潜れるようになったとしても、それが向こうに伝われば対抗してくることは目に見えるし、辺境伯という資金力で競り負けかねない。


結果として、表では知られていないアジトダンジョンで『成長レベリング』するという、目立つことなくダンジョン探索を行える環境というのは、リナとロブとに共通して非常に都合の良い環境だった。


しかし、話をその方向に持っていくにしても、実際にダンジョンへと行けることを知らないままでは、あまりに現実感が無い話で交渉が進まなそうだと考えた。


そこで、リナとクララの2人を拠点へと招待し、実際にアジトダンジョンに行くことが出来ることを体験してもらう。


その際、格納門での転移については、単なる木製の扉を『伝手で手に入れたどこかのダンジョンに繋がる魔道具』と言い張り、扉に格納門を繋ぐことによって移動し、スキルは隠蔽することにした。


その上で、こちらのスキルが特殊であるため目立ちたくない事情を明かし、アジトダンジョンの利用が色々と都合がいいことを納得してもらう。


結果、クララは【蘇生魔法】が使えるようになるため、リナはダンジョンに潜っていることを隠したまま『成長』するため、そしてロブはクララの【蘇生魔法】によりラビット氏を蘇生させるために、この3人でパーティを組むことが決まった。


──翌日は、神託に沿って女神像作成に早速着手することにした。


この世界に導いてくれた神ことインテリヤクザの像は、何度か作ってきた経験があった。


今回は形状が複雑なので、まずは粘土で作ってから木で再現する方針にして、夕方までかかってようやく納得いく形にすることができた。


粘土製の女神像の形状が決まったところで、続いて同じ大きさの木材を取り出して、読み取った粘土像の形状をそのまま・・・・木材から切り出すことにより、完全に同じ形状の木像が完成した。


この『複製コピー』と名付けた技は、インテリヤクザ像を作成中に発見した【空間切削】の派生スキル【連続体削り出し】の裏技とも言える方法だ。


本来の【連続体削り出し】は、切株のような同素材の形状を読み取って丸ごと収納するようなスキルだったが、実はその過程が『形状の読み取り』と『切削』の2段階で構成されていて、その発生タイミングを分けてズラせることを発見した、偶然の産物だった。


──出来上がりを眺めていたところで、商業ギルドに用事があることを思い出して、急いで向かうことにした。


商業ギルドは18時で窓口が一部を除いて閉まってしまうのだ。


時間ギリギリの滑り込みで、フランさんにフルプレートアーマーの在庫が無いか確認してもらう。全身を覆う形状であれば、材質も状態も問わないとは伝えておいた。


……しかし、そう都合よく何でも在庫があるわけではなく、付近の商業ギルドも含めて無いという返答だった。


ただし、そこは頼れるフランさん。こちらの要望を汲み取った代替案を提示してくれた。


この世界で全身を覆う装備と考えての在庫確認だったが、実際は全身を覆えれば何でもよかった。


そこでフランさんが出してきてくれたのが、クマの着ぐるみだった。


玩具の見た目や防御力に対して、【浄化】や【体型調整】といった高度な魔法陣が組み込まれているため、割高で買い手がついてなかったようだ。


大銀貨1枚ではあったが、即購入した。それは、まさに求めていた装備品だった。


ダンジョンを潜るにあたって、スケさんに同行してほしいものの、あの見た目骸骨ではリナとクララから攻撃を受けたりして危険そうだったので、何かしらで姿を隠したかったわけだ。


スケさん抜きでの探索は、まだ心許ないところだったので、姿を隠して同行できる装備品が見つかって非常に助かった。


……なお、本来はスケさんに着ぐるみを着てもらう交渉の段階があったはずが、翌日にアジトに行って着ぐるみを見せた途端、嬉々として着てくれたので不要になったのはまた別の話。


──商業ギルドを出る前に、ついでにギルマスへポーションの試作品確認のため後で時間を取ってもらうよう伝言をお願いしたところ、すぐにギルマスが降りてきた。


やはりレシピとしては載っていなかった中級MPポーションは驚かれたようで、市場に無いことはないものの、『ごく稀に初級ポーション作成時に出来ることがある希少品』という認識なんだそうな。


ちょうどその場に水晶があったので、仮説を検証すべく『上魔力草』『中魔力草』『魔力草』の3枚を取り出して、鑑定してもらうことにした。


結果は、『上魔力草1枚と魔力草2枚』というものになった。


どうやら、冒険者ギルドにもあるこの水晶では、『中魔力草』と『魔力草』の区別がつかないらしい。


恐らく、現状の市場ではそれらの水晶の鑑定精度の低さによって、中魔力草と魔力草が混ざった状態で納品されるため、一般には中級ポーションのレシピが発見されてこなかったのだろう。


また、魔石も初級ポーションのものと比べて大きいものが必要で、魔力の注入時間など作成方法でも違いがある。


そのため、現状では魔法袋での鑑定が出来て、それに合わせて調整できるロブ以外に、中級ポーションが作れる人はいない、ということになる。


そこでギルマスは、現在のところ未だ出荷先が決まっていない中薬草1600本を、中級HPポーションに出来ないかという依頼をロブに持ちかける。


試作品の際は、2時間で40本完成だったので、80時間作業という計算になる。10時間労働なら8日、徹夜なら3日少々。


結構な作業時間であり、その間こちらの作業を優先させてリナたちを待たせるのは申し訳ない気がしてきた。


そこでふと、ポーション台には『自動作成機能』というのがあったことを思い出す。


まだ使ったことは無いが、あれなら不在でも作業を進めることが可能そうだ。


試しにやってみるか、となったため、期日は一旦8日で確認を取り、依頼を引き受けることにした。


なお、加工費は中級ポーションの性能やそれに伴う中薬草の値段などを含めて、決まり次第でギルドカードに振り込んでもらうことになった。


10本ずつにまとまって戻ってきた中薬草を回収して、商業ギルドを後にした。


──拠点へ戻り、スケさんに『明朝に会いたい』とメモを崩落地点に残したり、ポーション台の『自動作成機能』の動作を確認したりといった辺りで、その日は作業終了して就寝することに。


もちろん、就寝前に『自動作成機能』の最大6時間分、360本は仕込んでおいたので、明朝には既に400本が完成する計算だ。


なお、『自動作成機能』の動作確認で作成した30本でも、問題なく劣化や失敗は1本も発生しなかった。


もしや、水晶の【鑑定】は中薬草も劣化品の薬草も通常の薬草と判定していて、市場の薬草は品質が安定していないのでは? と、中魔力草の鑑定不備を踏まえて推測している。


──翌日、朝10時に2人とは待ち合わせの予定だったので、朝一番でスケさんへ会いに行って着ぐるみを渡して案内を頼み、段取りを説明した。


ただ、スケさんが着ぐるみでテンション上がって時間が無くなり、女神像に触れてもらうのは後回しとなった。


一度拠点に戻って支度をしていると2人が早めに来てしまったので、居間で飲み物を出しつつ、しばし待ってもらう。


急いで行く前のポーション台の設定を済ませて、ようやく出発することになった。


アジトダンジョンへと到着して安全地帯へと向かいつつ、まだあまり調査できてないダンジョンであることを2人に説明する。


そこで、ダンジョンに詳しい人(?)がいるといった感じで、助っ人としてスケさんを呼び出した。


その声に応えて、回転を加えて華麗に登場したのが、スケさん@クマの着ぐるみ。


唖然とする2人をよそに、有無を言わさぬ勢いで背中をおすようにして、ダンジョンの中へと入っていくことになった。


──道中に出現したネズミの魔物に対して、リナとクララ2人で戦ってもらうことにする。


その間、スケさんからパーティ編成した際のステータス画面に、メンバーの情報が出るという情報を教えてもらう。


どうやらスケさんも魔王討伐の際にメンバーを引き連れて、『成長』のために魔物を倒しまくったことがあるんだそうな。


ステータスを確認して判明したのが、リナやクララは元より、恐らくこの世界の人々は、ステータス画面が無いために『成長ポイントを振っていない』ことだった。


成長スキルに成長ポイントを振ることで各種ステータスの値が上昇するし、新たに発現するスキルもある。


つまり、この世界の人々は各種スキルが本来の性能を発揮できていない可能性が高いわけだ。


では、ここで振ってあげるのが親切かと言えば、現状で一度振ったら戻す手段が無いので、想定と異なると大きなお世話ということになるし、じゃあ要望を聞けばいいかと言えば、そんなスキルをいじるような超越的なことを行うとか『神の子』扱いされかねない。


色々と悩んだ結果、ちょうど出来上がっている『女神像』を使って、『神の力で成長を行える』という設定で要望を聞き出してポイントを割り振るのはどうか、と考えた。


早速スケさんに相談して、近くの安全地帯に寄ってもらうことにした。


ダンジョンは3層の途中まで進んでいて、時刻は13時過ぎ。昼食にもいい時間だろう。


丸太を加工したベンチに座ってもらいつつ、木材で『複製コピー』したマグカップにコンソメスープを注いで渡す。


戦闘はここまで2人に任せっきりになってしまったので、運び屋ポーターらしい貢献の1つでもしておこうという戦略だ。


スケさんは骸骨なので当然飲めない……かと思いきや、過去に味覚を再現していたことがあるとかで、着ぐるみのままコンソメスープをストローで飲んで味わっていた。


食事が終わったところで、女神像(いつの間にか監修済となっていた)を取り出し、ベンチの上に置いて『スキルを伸ばす手助けをしてくれる女神像』であると紹介する。


リナの胡散臭さそうな表情はさておき、何故かクララが手を組んで祈りだしていた。


どうやら監修済みのせいだろうか、像から相当なオーラが出ているらしい。


スケさんがどこから盗んできたかなんて軽口を言うもんだからリナが疑い出すし、クララはオーラにやられて腰が引けてるしで大変だったが、何とか女神像の前に立たせて触れさせることに成功する。


さて改めて成長ポイントを振ろうかとなって、こちらも一緒に作業してる風を装うのに女神像に触れると、教会の時と同様にステータス画面に更新通知が表示された。


神託メールの依頼の文面では、神像にふれることによって更新が行われるとあったが、実際に更新が入ったようだ。


一方で、同じく神像に触れた2人の様子がおかしい。身動みじろぎもせずに固まっているように見えた。


アプデの内容が気になって、更新完了と同時に届いていた神託メールを確認すると、『ステータス機能を転移・転生者以外にも解放しました』と書かれていた。


つまり、2人が自分の好きなように成長ポイントを振ることができるようになったようだ。


また、今後もポイントを振る度にパーティを組まなくてはならない……なんていうアフターケアも不要になる。


しかし、そのステータス機能の解放条件が問題で、『女神像に触れることでアプデが行われる』と規定されていた。


恐らくは、女神像を人の目に触れさせることによって信仰心を高めようといった目論見なのだろう。


しかし、これを冒険者たちに行き渡らせるには、女神像が1体で済むとは思えず、明らかに量産と各地への配達という膨大な作業が必要になる。


一応、『複製コピー』のおかげで製造についてはある程度の量産も可能だと思われるが、問題は各地への配達の方だろう。


ヨンキーファのシスターに預けるのも迷惑をかけそうだし、教会の総本山に持ち込むにしても教会が一部でも腐敗していたら、独占されて行き渡らない可能性がある。


どうやらロブに量産させて配達させようとしている予感がひしひしと伝わってきたが、未だスケさんのアプデクエストも済んでないし、ラビット氏の件もあるので、依頼が来るまでは気付いてないフリを決め込むことにした。


──しばらく経っても2人のアプデが終わらないので、スケさんに手伝ってもらってベンチをすぐ側まで移動させ、いつでも座れるようにする。


実際、アプデが終わった途端に力が抜けて、前に崩れそうになるのを支えることとなった。


こうなると、仮に女神像を配るにしても、アプデの手順などを書いた、取扱説明書のようなものが必要だろうと感じた。


安全な手順について頭を巡らせていると、リナとクララが気がついたようなので、アプデの内容をいてみる。


すると、オーラへの耐性なのか何なのか判らないが、2人の間で覚えている内容に違いがあり、クララの方が割と覚えているようだった。


この辺りについても、聞いていなかったり忘れたりすることを前提に、説明書にステータスの利用方法の詳細を記載しておいた方がよさそうだ。


断片的ながら聞いた限りでは、アプデでは『機能が使えるようになる』『スキルを強化できるようになる』といった概要を伝える程度で、ステータス表示の使い方の詳細はリナとクララに教える必要がありそうだった。


その説明の間にスケさんはアプデに入るとのことで、リナとクララの様子を踏まえて女神像の置かれたベンチの横へと腰を下ろして、着ぐるみの手を女神像に添えた。


──2人にステータス画面の開き方、成長ポイントの概要、ポイントを振った際の効果、ポイントの振り方……とそれぞれ教える。


2人の表示内容を聞く限り、『神託メール』と『時刻表示』を除いて、ほぼ同じ機能が実装されているようだった。


また、先のアプデ時に『説明機能』というのが入っており、任意の文字列を長押しすると詳細が表示されるようになっているため、その機能を使えば後は各個人で読み進められるだろう。


ポイントの振り方については、ロブ自身の経験からとりあえず1ポイント振ってみて、どんな能力か確認することを勧めておいた。


どんな機能がどう使えるか、一見して分からないこともあるものだし。


ひと通り説明が終わったところで、リナから質問が来た。


ステータス表示でパーティメンバーの情報が見られるものの、ロブのスキルに【土魔法】が書かれておらず、表示が読めないらしい。


読めないのは恐らく、【空間収納】という名称はユニークスキルであるためだろう。


パーティも組んだことだし、バラす機会だろうかということで、スキルの内容について明かすことにした。


【土魔法】と称していたのは、収納スキルにより土の出し入れが得意だったので、本来のスキルを隠すのに都合よかったという話に始まり、このダンジョンに来る際に使った扉もダミーで、スキルを使って転移していたことまでひと通り説明しておいた。


このスキルは潜入や諜報など、色々と悪用できてしまうため、安易に知られるとマズいことは理解してもらえたようだ。


──ひと区切りついたところで、スケさんを振り返った瞬間、思わず声を上げてしまった。


クマの着ぐるみが、全身に渡って歪んでいたからだ。


ちょうど終わったところだったのか、顔を上げてこちらを向いたスケさんは、異形の身体どころか声まで変わっていた。


そのことを指摘すると、着ぐるみのことはスケさんも気付いたようで、【体型調整シェイプチェンジ】を起動し元に戻した。


しかし、2オクターブは低いイケボになってしまった件については変わらない。


アプデは終わったと言いながら、スケさんは着ぐるみの頭を取り外そうとし始めた。


あわてて止めようとするも、大丈夫だと制されクマの頭は外されてしまったが……そこにあったのは、スケルトンの頭蓋骨ではなく、彫りの深いイケメンの顔だった。


……どうやら、スケさんが崩落で閉じ込められた際に【暴食】スキルと空腹による体力判定が誤作動して、死亡判定を通りすぎて体力が負の値になってしまったそうな。


神託メールで届いていたという詳細レポートによると、その後100年単位で減少した負の値が下限を突破して正の値になったり、正の値もまた回復した体力によって上限を突破し負の値に……と、どうやっても死にようがない状態に陥っていたという。


そんなスケさんにアプデをかける際、既に肉体は朽ちてしまい元に戻せないので、新たに【受肉】という天使が顕現する際に使うスキルを与えられて、かつての肉体を再現したんだそうな。


ただ、【受肉】は食事とMPによってスキルを維持するという性質があるそうで、スケさんが頭を取ったのも飯が欲しいといった理由によるものだった。


──着ぐるみを上半身まで脱いで手を空けたところで、パリジャンサンドをワインで流し込むイケメンだったが、リナとクララがその姿を見て固まっていた。


一応上半身は魔法袋に入っていたシャツを着せていたが、そっちが問題ではなかったようで、しばらくしてからリナがスケさんに、『その姿はもしかして初代勇者様では』と質問してきた。


実はリナの実家であるウェスヘイム家は、勇者カサニタスの屋敷で執事をしていたハターモタ・ウェスヘイムを先祖に持つ血族だそうで、勇者の遺品を保存したり、その一部を展示した勇者博物館を今に至るまで代々管理している家系なのだそうだ。


スケさんが勇者本人であることを肯定したところで、そういったウェスヘイム家の背景を語った後、『まさか本当にご存命とは』と、およそ500年前と言われる失踪時期にも関わらず、その生存を知っていたかのようなことを言い出した。


どうやらウェスヘイム家には、ずっと管理し続けてきた遺品の中に『使用者権限付きの魔法袋』というのがあり、その権限は死亡しない限り変更が効かないため、未だ何らかの形で生存しているのではと言い伝えられてきたのだそうな。


もっとも、その使用者権限を死亡後に書き換える魔道具職人の技術は、既に100年前には途絶えてしまっているそうなので、現代では権限移譲は出来ないという認識なのだそうな。


ロブが【空間収納】により可能であるという事実はさておき、実際にスケさんが生きていた(?)ことは確かであり、その魔法袋の挙動は間違っていなかったようだ。


ひとまず、遺品について時間がある時に引き渡したいというリナの申し出に対して、確認はしに行くという返事でスケさんは了承した。


時刻は既に16時前、アプデもあって昼休憩に長居してしまったので、今日は5層の転移部屋を解放して終了することになった。


道中ではスケさんにラビット氏の惣菜パンを渡しながら、格納門砲で敵を間引きつつ、サクサクとダンジョンを進んでいく。


そういえば、とリナとクララの2人にポイントを振る方針などを確認する前に、話がスケさんの復活に移ってしまったことを思いだした。


確認してみると、どうやら提案通りにまずは1ポイントずつ振ってみたところで様子見しているという。


そこで、試しに出現した魔物で成長ポイントを振った効果を確認したところ、以前から一応は使える認識だった【スラッシュ】の威力が格段に上がったようで、3層までは数回打ち込んでいた魔物が、【スラッシュ】一撃で倒すことが出来るようになっていた。


成長ポイントを振ったことにより、本来のスキルが持つ【スラッシュ】の性能が引き出せるようになったということなのだろう。


──6層手前の安全地帯に到着し、転移で入口に戻ってきたところで、次回の探索予定について話をしておく。


するとリナから、先ほど話があった預かっている品々の引き渡しを先にしたいと言われ、スケさんが了承したのでそちらを優先することとなった。


なお、スケさんについてはリナの方で引き取りたいという申し出はあったものの、今のところ身元不詳だったり食事の件だったりと、唐突に貴族家で対応してもらえるか判断がつかないという事情から、ひとまず拠点の方に来てもらうことになった。


面会の時間は翌日の14時頃に拠点まで馬車を回してくれるとのことなので、そちらに乗って向かうことになるそうな。


一応、復活に際して女神像の件が絡む可能性もあるためロブも同行してほしいとの話があり、これを了承したところで初めてのパーティ探索はお開きとなった。


──拠点に戻り、スケさんが数百年ぶりという湯を浴びに行っている間に、居間へ料理や酒を用意しておく。


スケさんが風呂から上がってきたところで、ダンジョン案内への感謝と、受肉による復活を祝って、商業ギルドで手に入れてきた大小の刀2本をプレゼントした。


どうやら、魔王退治した頃は刀が作れる職人がいなかったとのことで、早速その場で抜刀しては眺めて喜んでくれた。


2人で改めて復活を祝いつつ乾杯して、あれこれ飲み食いしながら、今後の話などをする。


名声にも金稼ぎにも興味はないようで、勇者が復活したことは公表する気が無いようだ。……勇者だった当時、色々とあったことが伺える。


ただ、美味いものには興味があるようで、海に出て魚介類を食べに行きたいとのこと。


ちょうど食事の話が出たので、今日出した料理がラビット氏の作ったものであることや、その当人が実は亡くなっていて、クララを成長させて蘇生させようとしていることを話した。


どうやらスケさんも【料理人シェフ】スキルを持つラビット氏には興味が湧いたようで、手伝いを申し出てくれた。


正直、魔法袋に入っていた料理には、高レベルと思われる魔物の食材も含まれていたので、もしせめて素材で返却しようとなった際を考えると非常に助かる話だ。


──その後もスケさんの勇者時代や前世の思い出話などをしながら、いい時間になったのでお開きとした。


寝室に向かう前に、依頼されていたポーションを忘れずに仕込んでおく。帰宅した際も一度仕掛けておいたので、これで最後の仕込みということになる。


明日の朝には1600本が出来上がるので、あとは商業ギルドに納品するだけだ。商業ギルドに行くついでに、しばらくスケさんが滞在することになるので、2階の倉庫を改装してもらうことにしよう。


寝室に入って、日課である薬草回収を済ませたが、まだMPには余裕があったので、女神像の複製を作っておくことにした。


さて【連続体削り出し】で読み取りを……と女神像に触れると、ステータス画面に『神託メール』が届いた通知が表示された


メールを確認すると、なんとスケさんのアプデ依頼を達成したということで『依頼達成報酬』を渡すという内容だった。


どうやら報酬としてスキルを貰えるとのことで、【気配察知】【生活魔法】【確率操作】【鑑定】【加工】という5つのスキル名が並んでいて、選択するよう記載されていた。


長押しすると表示されるスキルの説明を確認しつつ、どれにするか悩んだものの、正直どれも欲しくて決められない。


いずれもスキル1つで話が書けてしまいそうな、工夫次第で化けるスキルばかりで迷ってしまう。


最終的には【気配察知】と【生活魔法】に絞ったものの、決まらないためステータス画面を閉じて持ち越そうとしたが、なぜかいつもの神託メールを閉じる表示が使えない。


そればかりか、なぜか時間制限の表示が出てしまい、30秒の数値が減っていく。


悩んでも結論が出ず残り数秒となり、自動販売機で子供の頃にやった、2つを同時に押して出たやつが運命という操作に任せることにした。


……が、ギリギリで【鑑定】も気になってしまい、計3つを押して締切となった。


さて直後に出てきた通知はと言えば、なんと【気配察知】【生活魔法】【鑑定】の3つ全てを覚えたというものだった。


どうやら複数選択できたと判明し、全て選べばよかったと後悔した。


──しかし、翌朝スケさんにその報酬について報告した際に、スキルの増加に関する話を聞いて、選ばなくてよかったかもと考えを改める。


スキルを得るという現象自体は、ダンジョンの攻略や宝箱の発見により、この世界においては無くはないそうで、しかし複数のスキルを覚えた弊害として、成長しにくくなるという性質が知られているらしい。


3つも取ってしまったとも、3つで済んでよかったとも言えるが、いずれも迷う程度には欲しいスキルが得られたわけで、その後の活動では何かと使うことになっていった。


──14時にリナが馬車を寄越すとのことなので、それまでにスケさんの着るものを買いに行くことにする。流石に着ぐるみで貴族に面会というわけにはいかないだろう。


朝食を終えて8時過ぎには家を発ったが、大半の商店が開くのは10時頃なため、先に商業ギルドへポーションを納品しておくことにする。


窓口にいたフランさんに話し、地下倉庫で納品を済ませたところで、ついでに拠点の2階の改装依頼と、古着や防具の店の紹介をお願いする。


改装は明日の午前中にでも拠点に来てもらえるとのことなので、お願いすることにした。


──古着と防具についても場所を教えてもらえたので、適当な古着をスケさんに着てもらった後に、防具を見に行くことにする。


ちなみに防具屋には繁忙期があり、雪解けの時期と、夏から秋にかけてが特に混み合うそうな。


前者は護衛依頼を終えた冒険者がダンジョンに向かう前に装備を整える時期で、後者は暴走スタンピードの間引きの依頼が出る時期なんだという。


ダンジョンから地上に魔物が溢れてしまう現象である暴走スタンピードの話に、そういえばアジトダンジョンでは発生しないのかと疑問に思ったので、スケさんに訊いてみることにした。


すると、確かにザコが増える時期というのはあるものの、感覚としてはスキル上げとか『成長』に便利な、ボーナスタイムという感覚らしい。


また、発生を確認した際には、スケさんの話し相手だというフロアボスも呼んで、狩りまくるのが定番なんだそうな。


──古着屋で買ってきた町人服をスケさんに着てもらい、さて出かけようと思ったところで、スケさんの顔が出ているのはまずいのではということに気がつく。


リナやクララは、その姿を見ただけで勇者と気付いていたわけで、騒がれてしまう可能性がある。


それじゃ仮面でも被ってもらおうとスケさんに見た目の要望を確認したところ、即答で『般若』に決まった。


スケさんは『成長』がカンストしていると言っていただけあって、DEX器用さの高い般若の絵を描いてもらえた。


なので、それに大きさを揃えて粘土で原型を作り、木材に複写コピーした。


……作っておいて何だけど、これはこれで騒がれる予感はしたが、いずれにせよ顔を隠していたら目立つものだろうと思うことにした。


──街に出るに当たって、そもそもスケさんはダンジョンから直接拠点に格納門経由で来ており、街への出入りした情報が無い。


そのため、一度街の外に格納門で移動し、入場記録を残してもらってから、防具屋へと向かうことにした。


案の定、入る際の手続きで騒がれたものの、スケさんは【受肉】スキルで仮面の下に火傷の痕を付けてあり、これが理由で仮面を着けている設定を納得させて、なんとか勇者バレまでは回避することが出来たようだ。


──フランさんから紹介してもらった防具屋に到着し、店員にすぐに着れるものがないか訊ねてみた。


寸法を測ってもらったところで、ちょうどスケさんの寸法であれば、そのまま着られるものがあるらしい。


随分と運がいいと思ったが、どうやら防具を作る際の基準となる型紙があるそうで、スケさんの体型が寸法そのまんまだそうな。


一般に、防具はかつて勇者の仕立て服に使われたと伝えられている型紙を基準に作られており、そこから丈を調節したりしているとか。道理でぴったりなわけだ。


何はともあれ、寸法ぴったりの下着と鹿皮の革鎧一式が揃ったので、衣装はひとまず整った。


──拠点に戻って早速【生活魔法】の【清潔クリーン】で汗ばんだ服と肌をすっきりとさせたり、スケさんにもかけたり、居間で軽食をとったりしていたところで、馬車のお迎えが来たのでリナの屋敷へ向かうことになった。


屋敷では、当主であるウェスヘイム男爵と夫人、そして嫡男の三人が待っていた。


人払いをしてもらったところで、スケさんがお面を外す間にリナ主導で紹介を受ける。


ちょうど壁面に飾られていた絵画そのままの顔が、お面を外したところから出てきたので、ウェスヘイム夫妻が小さく驚きの声を上げていた。


双方の紹介がリナからあった後、当主であるカスパー氏から、魔法袋を開けてもらうことで本人確認を行う旨を説明される。


このことは、馬車で屋敷に来るまでの間に、同行してきたリナから既に話があり、スケさんも了承の返事をする。


鍵付きの箱から、折り畳まれた背負い袋の形状をした魔法袋が取り出され、嫡男ワルターによって中身が無いことが確認された。


どうやら権限付きの魔法袋は、他人が開くと空っぽに見える性質があるらしく、しかし他人は中に物を入れられない性質になっているらしい。


早速、スケさんが魔法袋から中身を取り出すことになり、汚れてもいい敷物を出すよう催促された。


ダンジョンに行く際に使っている、土足へ履き替えるカーペットを広げると、最後に着ていたという装備一式と、まさに背後にある絵画に描かれているデザインの剣と防具を取り出した。


本当に権限付きの魔法袋から物を取り出したばかりか、まさか描かれた勇者の着けている装備品の実物が出てくるとは思わなかったカスパー氏は、その時点であわてて勇者本人であると認めた。


出した装備品をしまう前に、スケさんから【清潔クリーン】をかけるよう催促されたのでやってみると、血や埃で赤黒く薄汚れていた装備品は、白を基調とする輝かしい見た目を取り戻した。


ただし、MPはごっそりと消耗してしまった。魔物の返り血などを綺麗にするのは、汗とかのそれに比べて相当MPが必要になるらしい。


──綺麗になった装備品を魔法袋へと戻し終えたスケさんだったが、突然、魔法袋の中身はウェスヘイム家のものでいいと、そのまま差し戻そうとした。


預かっていた勇者の持ち物を返却することが使命だと、代々受け継いできたウェスヘイム男爵は、当然のことながら受け取れないと差し返す。


しかし、スケさんとしても、ああいった装備品は見栄のために作られたやつで、普段使いには向かないため不要だと突き返す。とはいえ、魔法袋自体は使用者権限が付いているので、中身を取り出した後は貰っておく、とするようだ。


そして、スケさんは勇者だったことを公表する気が無いことを伝え、殊更に勇者と名乗るのと同義の派手な装備は不要なため、博物館があるならそこで展示に使えばいいと提案する。


中に入っている魔石や鉱石は処分して、運営費に当てればいいとも言った。


一方、ウェスヘイム家としても、こんな価値のあるものを貰い受けるわけにはいかないと引き下がらず、一向に話が進むようには思えなかった。


そこで、ひとつ思い浮かんだことがあったので、スケさんに一旦持ち帰って中身を確認してはどうか、という提案をする。


魔法袋の中には魔石以外にも拾ったものは色々と残しているらしいので、スケさんのスキルを考えると、色々と取っておいた方がいい美味しい・・・・素材・・ってやつを残しているのでは、と予測したのだ。


ウェスヘイム男爵に確認したところ、スケさんが名を明かすことを望んでないことは理解し、尊重するとのこと。


なので、貴族や国に対して『本人は正体の公開を望んでいない』という方向で話を通してもらい、その根回しの対価として素材を受け取ってもらう形ではどうかと提案した。


貴族方面の矢面に立ってもらい、その際に武器や防具、装飾品などを献上品で使ってもらったり、資金として換金できる素材を使ってもらったりする。


執事という由来を踏まえて、当人の代行をしてもらう、といった意味であれば一応は筋が通るわけだ。


しばし考えた後に、ウェスヘイム男爵もその提案をんでくれたので、素材などの受け渡し方法を確認することにした。


どこか倉庫に出すか、あるいは魔法袋に入れるかという話だが、そこでスケさんが魔法袋から数枚の新たな魔法袋を取り出して、これに詰めればいいと提案してくれた。


以前、ラビット氏の魔法袋が【空間収納】に入らなかった記憶があったので、てっきり魔法袋に魔法袋は入らないものだと思っていたので、思わず驚いてしまう。


取り出した魔法袋は未使用品だそうだが、恐らくは何かしらの条件があるのだろう。


さておき、魔道具職人から素材提供の代金として貰ったという、普段使いできる(?)【時間遅延】付きの魔法袋が4〜5枚出てきたので、これらに中身を詰め替えてから引き渡すことになった。


さて、中身が確認できたら連絡を入れることになったものの、連絡手段が少し面倒なことに気がついた。


この前のような文字通りの門前払いを踏まえると、きちんと連絡が届くか懸念があるわけだ。


そこで、退出前にリナに【自動追尾】で格納門を付けておき、後で連絡・・手段・・を作ることにして、ウェスヘイム邸を後にすることにした。


──馬車に乗った帰路の途中、格納門をリナの【自動追尾】へと接続して、部屋に戻ったところでメモを目の前に落とし、連絡のやりとりを行う定位置……『メールボックス』となる場所を作ってもらうことにした。


メモを読んだリナが指定した場所は、机の鍵付きの引き出しだったので、今後はこの場所に格納門を繋いでメモを入れ、机の上の香水瓶を横に向けることで通知することになった。


ただ、このやり取りがどこかで見られて使用人などにバレる可能性に思い当たり、リナの部屋の周りに誰かいないか【気配察知】を使ってみる。


すると、天井裏に1人いることが確認できたので、リナにそれが何者かについて心当たりがあるのか、確認するメモを追加で送った。


……しかし、リナには心当たりが無かった様子で、メモを破棄してすぐに父親へと確認に向かってしまった。


後になって、それは隣国のスパイだったことが判明するが、その時はリナを狙う豚辺境伯令息が送り込んだ可能性を懸念して、すぐに痺れ針の吹き矢を撃って、逃亡を防ぐことにした。


そして、スケさんに念のため着ぐるみを借りて変装しつつ、天井裏に転移して縄で縛り上げておいた。


直後、使用人らが天井に上がってくる物音が聞こえてきたものの、間一髪でその場を離れることに成功する。


その間もまだ馬車は拠点に到着していなかったので、馬車の中へとこっそり戻ることによって、アリバイ作りを完成させた。


スパイ騒ぎはあったものの、何にせよこれでリナに直接連絡できる手段が出来たわけで、直近で言えばスケさんの魔法袋の仕分けが終わった後に、メモを送って引き取りに来てもらえるようになった。


……余談として、後日にリナから覗き魔疑惑をかけられることにはなったが。


その後は、貴族街を抜けた商店のある通りで降ろしてもらい、寝具屋に寄ってスケさん用のマットと毛布を購入し、拠点へと戻った。


──翌日の午前中は、フランさんから連絡してもらった業者さんに2階の倉庫の改装工事を依頼し、中央の通路を挟んだ4畳ほどの部屋4つに作り変えてもらった。


3部屋は寝室として、1部屋はポーション台を置く部屋として使う想定で、寝室にはそれぞれ二段ベッドも据え付けてもらう。


今後はそのうち1部屋を、スケさんに使ってもらうことになった。


──昼飯を挟み、居間に敷物を広げて魔法袋の中身の整理に取り掛かることにする。


まずは装備品からということになり、【鑑定】でその性能を軽く確認しつつ【清潔クリーン】をかけて、『普段使いの魔法袋』に入れていった。


スケさんの【暴食】というスキルに由来した【体型調整】という性能が共通で入っている他、強力な魔法耐性や状態異常耐性が入っていて、白金貨数億単位の値段だろうことが窺われる。


スケさんから、【体型調整】が付いているので着れるだろうと、欲しいものがあれば持っていっていいという話があった。


しかし、どれもが【付与】エンチャント用の金属で作られていて、ギラッギラに輝いているので手を出しにくい。


一方で地味に見えた革素材は、『ケルベロス』『キマイラ』『ハイドラ』といった名前が並んでいて、そちらはそちらでバレた時のことを考えると怖い装備ばかり。


ただ、よくよく考えると、ギルドの水晶程度を基準とした【鑑定】の精度が一般的と考えると、革素材であればそこまでの心配は無いのかもしれないと思い直す。


──装備品がひと通り魔法袋に入れ終わったところで、いくつかの装備を譲ってもらうことにした。


1つ目は、スケさんが生前の最後に着ていたという『ベビーモス装備』で、黒地で目立ちにくく、かつ物理と魔法に強い耐性を持っているため、普段の装備用に貰うことにした。


2つ目は『バニッシュマント』という魔力を通すと視認出来なくなる装備で、いざという時の逃走用に良さそうだったので、こちらも譲ってもらう。


3つ目と4つ目はリナとクララ向けのアクセサリーで、『業火のブレスレット』『光輝のタリスマン』という、いずれも属性強化系の性能を持っていた。


スケさんから、特に問題ないと譲ってもらえることにはなったが、アクセサリー2つについては属性強化による感覚とのズレが問題になることもあるから、装備の際には注意が必要だと助言された。


装備品を入れていった1枚目の『普段使いの魔法袋』は、既に結構な容量を使っているようだったので、そちらは装備品専用とメモを付けておき、続く装備品以外のものは2枚目の『普段使いの魔法袋』へ切り替えることにした。


──続いて、スケさんには魔法袋から素材系を取り出していってもらう。


やはりと言うか、スケさんの【暴食】というスキルからして、美味しい・・・・素材・・が大量に残されていた。


討伐した『魔物の肉』を、『暴食の勇者』と呼ばれたスケさんが回収してないわけがないと予想したが、それは見事に的中した。


これから【料理人】スキル持ちのラビット氏を蘇生させようとしていることもあり、大量の肉素材を確保しておかない手はないだろうと考えたわけだ。


ただし、肉を料理するにしても、解体して皮や骨といった素材を切り出す必要があることが、懸念点としてあった。


こちらは、冒険者ギルドなどで本職の解体職人に任せる必要があるかもしれないが、仮にドラゴンなどの素材を出してしまえば、確実に目立つだろう。


この辺りは、解体を引き受けてくれる人でも探すか、ラビット氏が解体できることを祈るしかなさそうだ。


一方で、食用に向かない素材も大量にあるようで、可食部が無いものや肉に臭みがあるもの、あるいは毒があるものなどについては、装備品の素材用として男爵にそのまま提供する方針にした。


──魔法袋に入っていた素材は、巨大な魔物ばかりとなるので拠点では手狭なため、場所をアジトダンジョンへと移動することにした。


安全地帯で順調に入れ替え作業を行なっていくが、途中で毒素材を扱うにあたって、高い状態異常耐性がある『安全手袋』……その見た目から俗称『軍手』と呼ぶことになった両手用の装備も、スケさんから譲ってもらうことにした。


装備品を入れた魔法袋は置いてきてしまったので、取りに戻ることになったが、その際に奇妙な現象に遭遇する。


安全地帯から拠点に格納門を繋ごうとして、失敗したのだ。


失敗する条件を変えて色々と確認していった結果、どうやらダンジョンには『境界』というものがあるらしく、その境界の内と外では格納門を移動させることも繋げることも出来ないようだった。


通路の崩落地点まで歩けば拠点に繋げることは出来るので、条件が分かっただけでもよしということにした。


──男爵に引き渡す魔法袋は『装備品』『非可食の魔物素材と魔石など』『毒のある魔物素材』という3つに仕分け終わったので、リナへと引き取りに来てもらうようメモを送る。


その日のうちに使用人から連絡を貰ったので、翌日は朝食を摂りながらリナを待つことにした。


なお、スケさんが【受肉】のために必要な食事についてだが、どうやら間隔よりも量が重要らしく、3〜5人前ぐらい食べれば朝昼晩の3食間隔で問題ないらしい。


食後にコーヒーを飲んでいるところでリナがクララを伴って拠点に来たので、早速仕分けをした魔法袋3つを引き渡すことにした。


魔法袋には、区別がつくように色付きの紐が巻きつけてある。


この紐は、昨日買った平民服に付いてきたもので、一般には袖絞り用に使うものらしい。


それぞれ赤・緑・紫の3色の紐が巻かれていて、赤は装備関連、緑は魔石や鉱石と(食べられない)魔物素材、紫は毒のある素材がまとめられている。


主な魔物素材について、2mを超える虎や蠍、あるいは毒のあるドラゴンなど実際に入っているものから例を挙げつつ説明するが、次第にリナの顔が険しくなり、頭を抑え始めてしまった。


注意点として、魔法袋には時間遅延が効いているものの、多少は劣化してしまうので、早めに処理をした方がいいことを付け加えておく。


ひと通り説明が終わったところで、リナから受け取れる限度を超えてるとか、魔法袋自体も性能がおかしいとか、大量のクレームが殺到した。


が、そんなものは『勇者様だから仕方ない』としか言いようがなかった。


ついでに、昨日の連絡手段の件やら天井裏の覗きの件やらと苦情や文句が出つつ、その関連で豚辺境伯令息の話になる。


その際に、アイアンDランクのパーティでメンバーがずっとウッドFランのままだと怪しいから、せめてストーンEランクになってほしいという話があり、確かにその通りだったので薬草を納めてランクを上げることにした。


──その後、しばらくはアジトダンジョンへ通う日々が続き、順調に『成長レベリング』を行うことになった。


リナとロブとで前衛の戦力があるので、少し深い層に潜って手応えがある戦闘になるよう調整しながら、探索を続けていった。


また、ストーンEランクになった後も表のパーティ活動を行なっているアリバイのために、時々南門から出て魔力草を取りに行ったフリをしつつ、アジトダンジョンに飛んだりもした。


帰り際に南門に戻って、冒険者ギルドで魔力草を納品すれば、失効に関わる定期的な依頼の達成も兼ねていて完璧だろう。


一方、ウェスヘイム男爵に納めた魔法袋のその後と言えば、男爵が嫡男ワルターを巻き込んで献上や根回しなど東奔西走で忙しくしているらしい。


他にも、スケさんから譲ってもらった装飾品を2人に渡したり、商業ギルドから取り寄せた追加の刀が届いたり、中級ポーションの効果の確認が終わり値段が決まって大金貨ほどが振込額に上乗せされたり、神託メールが来て正式に女神像の配布依頼が来たり……といった感じで、1週間ほどが経過した。


リナとクララの『成長』はLv.9に到達し、もうすぐ当初の目標だった【蘇生魔法】の目安を達成しつつあった。


その日も南門から戻って冒険者ギルドに立ち寄り、魔力草納品を済ませたところで窓口の係員から声がかかった。


先月にあった盗賊討伐の清算日が明日なので、顔を出してほしいという伝言らしい。


こちらの世界に来てもう1月経つのかと感慨深くなりながら、そうなるとベルトたちウォルウォレンも既にヨンキーファに戻ってきているのかと思い確認した。


しかし、まだ到着した様子は無さそうだったので、彼ら宛てに拠点の場所のメモを書いて伝言をお願いすることにした。


明日には来るだろうということで、リナとクララの2人には明日の探索は中止する旨をメモで送っておく。


もうすぐLv.10というところではあったが、実際に蘇生を行うのは『成長』を余分に上げてからにする想定だったので、いずれにせよまだ先になる予定だ。


明日はウォルウォレンが到着し次第で、冒険者ギルドで報酬を受け取りに行くことにしよう。


──しかし、翌日の夕方になっても、ウォルウォレンからの連絡は無かった。


念のため到着していないか確認しようと冒険者ギルドに入ると、ギルド内は妙な混み合い方をしていた。


そのまま窓口でベルトたちの到着を確認するが、シルバーBランクが来ればすぐ気がつくはずだが、見ていないとのこと。


対応に感謝して窓口を離れようとした時、担当者が何か思い当たったようで、ちょっと待ってと引き止めてきた。


そして、水晶をしばらく操作して数分後、ウォルウォレンの所在が判明した。


──フィファウデダンジョン街で発生が報告された季節外れの『暴走スタンピード』で、未帰還のパーティの一覧にウォルウォレンリーダーたちの名前があったそうだ。


◆ステータス

ロビンソン Lv.18

空間収納 Lv.13

成長ポイント:23

・容量拡大 Lv.3

・時間経過 Lv.3

・距離延長 Lv.6

・空間切削 Lv.3

・格納門増加 Lv.3

・格納門移動 Lv.5(MAX)

生活魔法 Lv.3

鑑定 Lv.2

気配察知 Lv.1

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