第4話 帚木1 雨夜の品定め(上)
長保六年(一〇〇四年)夏。
「あの話するのかな。」
「こんなみんな集まる所じゃ駄目らしいよ。」
「あの大臣の圧力?」
「しーーーっ、声が高い。」
藤式部の呟き
「輝く日の宮の話、やっぱ駄目か。
まあ、女御、更衣との不倫は確かに皇統を揺るがす大問題って、まあ世間の常識といえばそうなんだけど。
そりゃ天皇が実は他の男の子でしたなんて、王朝の血統が変わって、易姓革命になっちゃうしね。
でも『伊勢物語』でも女御を盗み出して鬼一口で食べられた話があるんだし、いいじゃん。
輝く日の宮のあのエピソードはちゃんとプロットに組み込まれているから、それを抜いちゃうと後の話がつながらないし‥。
そう思って、大臣などのいない女房だけの場で、こっそりこの話はしておいたから、わかる人はわかるという所で、取りあえず今日は乗り切るしかないね。」
藤式部
「今日は鬱陶しい五月雨の中、集まってくれて有難う。
今日はそれにふさわしいひそひそ話だからね。
では、始まり始まり。」
光源氏というと名前だけを見るといかにも偉大な人物のようですが、おおっぴらに言えないようなことも多く、数々のスキャンダルが後世にまで残ってしまい、いかにも軽い人間であるかのように言い伝えられ、秘密にしていたはずの黒歴史までをも語り継いでしまうのですから、人の噂というのは意地悪なものですね。
だからといって、世間体ばかりを気にしてたり糞真面目に生きていても、味も素っ気もないというもので、あの有名な小説の主人公、
まだ
「人目をしのぶのもぢ
*
梅雨の長雨の晴れることもない頃、内裏では五月の物忌みが続いて、そうでなくてもいつも内裏に入り浸っている源氏の君なだけに、
そのなかでも
ただ、
相変わらず雨は降り続けて、じめじめした夕暮れの雨に、殿上にもあまり人はいず、源氏の君の桐壺の部屋もいつもよりはのんびりとした雰囲気で、
近くの戸棚から色とりどりの紙に書かれた恋文と思われる手紙類が出てきたので、
「見せてもよさそうなものがあれば、ほんのちょっと見せてやるさ。
まずいものもあるだろうからな。」
と言っては見せようとしないので、
「そういった、感情を赤裸々に綴ったような、はたから見ても痛いようなものがいいんじゃん。
どこにでもある普通の手紙なら、俺なんかでもそれなりにもらったりして、見てるんだけどさー。
互いに恨みつらみをぶつけ合ったり、いかにも『日が暮れたから早く来てぇ待ってますぅ』というふうな手紙だからこそ、見て面白いんじゃん。」
と不満そうです。
本当に大事で隠しておかなくてはならないような手紙が、こんな普通の棚に置きっぱなしにするはずもなく、そういうのは奥にしまっておくはずのもので、ここにあるのはそんな重要ではないどうでもいいようなものなのだろうと思い、片っ端から見て、
「すげー、いろんなのあるじゃん。」
と言っては、あてずっぽうで、
「これはこれじゃん、これはあれじゃん。」
などと言うなかに、当っているものもあれば、的外れな推理をくりひろげているものもあって、源氏の君も面白いなと思いはするけど、言葉少なにはぐらかしては、結局取り上げて隠してしまいました。
「おまえの方こそ、こういうのたくさん沢山集めてんだろうに。
ちょっくら覗いてみようか。
そうすりゃ、この棚も気持ちよくご開帳だ。」
「そんな、見せるほどのものなんて絶対にないよ。」
そう言ったついでに、
「だいたい女で、これなら妻にピッタリという非の打ち所がない人なんて、まずいないってのがやっとわかったよ。
ただうわべだけ人が良さそうにして、達筆でその時その時の返歌などいかにも慣れた感じで軽くこなすところなど、それ相応にうまくやっている女は沢山いるけど、書をとっても歌をとっても本当に優れた人を選び出そうとした時に、必ず選ばれる人なんてのはまずいないと言っていい。
自分の理解できる範囲のことだけはやたら自慢して、人の悪口ばかり言ってるのって、側で見ていて痛いのばっかだ。
親とかが後にくっついて大事にされてて、まだ箱入りで行く末が見えない年頃だと、ただ良い所だけを噂に聞いて、気をそそられることもあるだろうけどな。
その親も欠点など言わずに、良いことばかりを誇張してそれっぽく話を作るもんだから、実際はそうではないなんて夢にも思わないさ。
いざ結婚してみると、こんなはずじゃなかったと思わないわけがない。」
と、愚痴に変わってゆく様子が照れくさそうです。
全部ではないけど自分にも思い当たることがあるとばかりにニヤッと笑います。
「その良いところすらもない人もいるんじゃないの?」
「良いところが最初から何もないなら、騙されたりする奴なんていないよ。
だいたい、取り得のない残念な女と、これが最高と思うようないい女とは、同じくらい数が少ない。
上の身分に生まれた人は、人からも大事にされ、欠点も目に着かず、自然とその立ち居振る舞いも優雅になる。
中くらいの身分の人は、それぞれ我がままにしようとする気持ちが出ちゃうんで、いろんな点について差がついてしまうことが多い。
下の身分の者のことなどは、耳に入ってくることもない。」
そのように単純明快に説明するのに興味を持って、
「その上中下の身分というのはどうなんだ。
本当に三つの身分に分けられるのかい?
本来高い身分なのに、没落して官位も低くて、まともな殿上人として扱われずにいじめられるのもいれば、また一方で三位以上の
と問い返していたところ、
なかなかの遊び人だが一本筋の通った人たちで、中将は喜んで二人を迎え入れ、この
お聞き苦しいことも多いと思いますが、どうかご勘弁を。
*
「成り上がりってのは、もともとそれ相応の家柄じゃないんだから、宮中の人も、その地位よりは下に見る。
逆に、元は親王・大臣クラスの娘でも、生活の手段に乏しく、時勢も変わって忘れられてしまえば、昔ながらの宮仕えの高い志があっても実行できないし、見た目からしてみすぼらしくなってくるので、成り上がりも没落貴族も『中品』ということにすべきところだな。
受領というのは、国守など諸国を治める仕事で収入があり、一つの身分として認識されてるし、玉石混淆でも、中品には違いないから、この辺りの身分の女は選ぶには手ごろだ。
半端な三位以上の上達部よりも参議予備軍の四位の方が世間の評価も悪くはなく、根っこにある家柄が低くないから、何の心配もないし、立ち居振る舞いも堂々としていて、見ていて気持ちがいい。
こうした家柄というのは何不自由もないし、金に糸目を付けずにこれでもかとばかりに大事にされて育った娘なんぞ、非の打ちどころのないようなのが沢山出てきている。
更衣として宮廷に出仕しても、思いがけない幸運を手にする例が多いんだよなこれが。」
「なんだ、結局経済力できまるのかよ。」
と源氏の君が吹いたので、
「そんな
と
「元の階級も高く、時流にも乗っていて、親王大臣クラスにひそかに面倒見てもらってるのに、人間的に未熟だとしたら、言うまでもなく、どんな育て方されたんだというもんで、批評する気にもなれんな。
両方兼ね備えて当然だし、こういうもんなんだくらいに思えば、別に珍しいものでもないし、そういう女は何とも思わない。
俺なんぞの手の届くものではないので、上の上はとりあえず置いておく。
それより、宮中ではほとんど知られていないけど、寂しく荒れ果てた葎の茂るような門に、思いもよらず可愛い感じの人がひそかに暮しているのは、それこそ最高に珍しいことだろっ。
どうしてこんなことになったのか、思いもよらぬことがあるのではと、妙に深く心に止まったりするな。
年とった父がデブでうざかったり、憎ったらしい顔をした兄がいたり、外見からは考えられないような家の奥の部屋で気位を高くしていれば、他愛もない歌やお琴も何か本当は凄いように見えて、ちょっとした良い所でも思った以上に面白いと思ってしまうだろっ。
素晴らしい完全な女の人を選ぼうなんて、俺の身分では及ばぬことだが、そういうちょっと捨てがたい物でも持っていればな。」
と言って
「いやそれでも、
と源氏の君は思ったのでしょうか。
やわらかな白い
このお方のためでしたら、どんな上の上を選び出しても、釣り合わないのではないかと思えますね。
*
いろいろな人の噂を語り合っては、
「おおかた普通に接する分にはこれといって欠点のない女でも、自分の妻にしようといろいろ期待して選ぼうとすれば、女は沢山いるのになかなか決めきれないものだな。
男だって朝廷に仕えて、しっかりと国政に携わらなくてはならないところで、本当にすぐれた器を持ったものを選び出そうとすれば、難しいんでないかな。
だけど、どんなに賢くても、一人二人で世の中を動かすことなんてできないんだから、上に立つものは下のものに助けられ、下のものは上のものに従い、大概のことは妥協によって成立っているだろっ。
狭い家の中で主人とすべき人のことだけを考えるんでも、失敗の赦されないような大事なこともいろいろあるしな。
まあ宮廷での社交はもとより、所領や使用人を管理したり、子供をしっかりと官僚や女官に育て上げたり、息子娘の結婚も重要な出世戦略だしな。
そういうこととなると、
別に理想を追い求めてばかりで、好きこのんで他の女といろいろ見比べてるわけじゃないんだろうけどな。
それでも熟考の末に選んだ人で信頼しきってたりすると、行き違った時に一度上げた拳をひっこめてやり直そうなんて思わずに、またひたすら思い通りになるような別の人を探そうとするから、いつまでたっても相手が決まらないんだ。
思い通りになるなんてことはなかなかないんで、そういう時結婚した時の約束をして思いとどまれる人は、根っから誠実な人だ。
ならばずっと我慢していてくれている女のためにもと、心の奥に何か底知れぬものを秘めている人だと思うようになるんだな。
だけど何だな、実際にこの世の有様をつぶさに見るにつけても、そんな期待するほどのものもないし、心惹かれるようなこともないんだなこれが。
悪くもないルックスで若々しくて、自分では天真爛漫に振る舞っているようにみせて、手紙を書いても曖昧な言い回しを選び、かすれたような文字でほっとけないように思わせといて、そんなふうに会ってその姿を見てみたいと気を持たせておいて、か細い声を出して御簾のそばまで引き入れてもほとんど喋らないなんてのは、間違いない、ぼろを出さないようにしているだけだ。
おしとやかで女らしいと思って、ついつい情に流されて付き合ってみると、二股かけてたりする。これが一番の難というべきものだな。
いろいろ事で放っておけなくてお世話をしている人の中には、物の風情に精通しすぎているあまりに、花鳥風月などの情があるのはわかるが、その面白さをそんなに強く勧めなくてもいいのにと思うこともあるけどな。
その逆で、いろいろ細かい理屈を言っては、髪の毛を無造作に耳に挟んだりして化粧っ気のない主婦が、家庭内の雑事ばかりしてというのもな。
朝夕通ってきては帰ってゆく男だって、宮廷の人や身内家族の様子など、良いこと悪いこと見たり聞いたりしたこと、わからない人にはわざわざ聞かせたりはしないだろっ。
発見したことや身にしみてわかったことを身近な人とわかり合って、笑ったり、涙したりしたいなと男が思っていても、それとか理不尽な政治のことで腹が立ったり、自分ひとりではどうしようもないことが多いのを誰かに言いたいなと思っていても、言ってもしょうがないなとばかりにそっぽ向かれて、誰にもわからないようにふっと笑ったり、『あーあっ』なんて独り言を耳にしたときに、『どうしたの?』と何も考えずに見上げたりするのは、こりゃあ残念というほかないな。
ただ単に根っから子供っぽくてふわふわした女というのは、何とか細かくいろいろ教えてやって妻にできないかなんてこと、男はついつい思っちゃうんだな。
じれったいとは思っても、直しどころがあると思っちゃうんだ。
だが、実際、面と向って会っている時は、いかにも可愛らしいので失敗してもすぐに許しちゃうんだけど、遠く離れて何か物を頼んだり、季節ごとに生じる行事のちょっとした事や大事なことを頼んだりしても、自分のことと思わずに心が行き届かないあたりはまじ残念で、頼りがいがないという欠点はやっぱ苦しいな。
いつもは少々つんつんしていて可愛げがない女でも、こういう季節の行事で人前に出るとめちゃ可愛いってのもいるしな。」
といった、左馬頭の開けっぴろげな話しっぷりをもってしても、源氏の君と中将はすっきりしない様子で深くため息をついてました。
「今はただ、
まして外見のことも言わない。
本当に駄目な、言うこととやることとがまったく違っているようなことさえなければ、ただひたすら身持ちが固く、落ち着いた性格の妻を、生涯の伴侶と決めておくべきだったな。
あとは、育ちの良さそうな機知を見せてくれることを感謝の心で受け止め、鈍いところがあっても決して高望みはしない。
心に表裏なく何事にも動じない所だけでも芯にあればな。
うわべだけの風流なんてその場しのぎの取って付けたようなものではないかな。
たとえば、華やかな世界には気後れし、不満を言うべきことでも気が付かなかったかのように心に秘め、表面的には何事もなく平静を装い、それでも心に秘めておくことができなくなれば、いいようのないほど寒々とした言葉で悲しい歌を詠み残して、いかにも故人を偲んでくださいとばかりの形見の品を残し、山奥の村や人の寄り付かぬような海辺などにこっそりと隠れていたりなんて話。
子供の頃に女房などが物語を読んでいたのを聞いて、凄く哀れで悲しく、心に並々ならぬものがあったのだと涙さえ流したもんだったな。
今思えばいかにも安っぽいわざとらしい話だな。
だいたい、それなりにちゃんと愛してくれている男をほっといて、目の前につらいことがあったにしても、男が自分の心を理解してないみたいに逃げ隠れして、男の心をもてあそんで試そうとすればするほど、いつまでもそのことで悩み続けなくてはいけなくなるから、全然意味ないじゃないか。
『心に並々ならぬものがあったんだ。』
などと褒めたてられて、その方向へ進んで行ったら、すぐにでも出家して尼さんになっちゃうんじゃないかな。
発心した時は心からすっきりしたような気になり、ふたたび俗世に帰ろうなんて思ってなくても、
『何で、悲しいじゃないの。
そんな悩んでたなんて。』
なんてふうに知り合いが出家を惜しんで来てくれたり、ただひたすら悲しみにくれながらも忘れられないという例の男が聞きつけて涙を落としたり、使用人や年長の女房とかに、
『あのお方のお心は悲嘆にくれて、すっかり御身をやつしになってもったいないことです。』
などと言い出したりしてね。
そうなってから、自分で額にあったはずの髪を掻き上げようとしてもどうしようもなく不安になって、今にも泣きそうな顔になったりしてな。
隠してた涙がこぼれはじめれば、ことあるごとにもうどうしようもなく我慢できなくなり、後悔ばかりを繰り返してれば、いくら仏様でも必ずや心が汚れているとご覧になることになるだろうな。
俗世の濁りに染まるよりも中途半端に仏道に入る方が、かえって往生できずに地獄をさ迷うことになるんじゃないかな。
良いときも悪いときもお互い寄り添って、たとえ逃げ出して連れ戻されたとして、あとでそれを思い出して信じられなくなった時でもなかったことに出来る仲こそ、固い絆で結ばれた愛といえるのではないかな。
そうなれば、その女も相手の男もうしろめたいこともなく、いつまたああなるか恐れる心配もないだろっ。
不満を言えずに突然逃げ出す女も困るが、ふらふらと他の女に気持ちに移っていく男に不満で、あからさまに態度に出して反発するのもみっともないな。
心が別の女に移ってったとしても、女がまだ出会った頃の愛情そのままに思って心を痛めているとわかれば、まだ男もよりを戻そうかという気持ちにもなるというのに、そうせずに憎しみを露わにして相手の気持ちが醒めてしまったのでは、そこで終ってしまう。
逃げるのでもなく怒り狂うのでもなく、あくまで万事穏便に、恨みごともそれとなくほのめかす程度にして、当然不満に思うことでもちょっと可愛らしくぼやかしておけば、それでもって自然と心を動かされるってもんじゃないかな。
ほとんどの場合、男の浮気心もそれを見る女によってはおさまるものだ。
あまり簡単に許しちゃって放ったらかしにするのも、いかにも友だちみたいでそれはそれで可愛いけど、そうやってると逆に女の方も勝手気ままにやっていると思われる可能性があるな。
繋いでない船は流されるの喩えもあるように、あまり利口じゃないな。
そう思わないか?」
中将はうなずきました。
「とりあえず、愛だの恋だの、とにかく好きな人に何か不安になるような疑わしい
ことがあったなら、そりゃあ大ごとだ。
自分の心にやましいことがないからといって、放っておけば元通りになるんじゃないかと思ったけど、そりゃ違うよ。
とにかく、お互いの違いを大目に見て我慢するより他にいい方法はない。」
そう言って、自分の妹である
中将は、この御説を最後まで聞こうと、熱心に相槌を打ってました。
「いろんなものに例えて考えてみればいい。
大工さんがいろんなものを意のままに作り出すにも、その場の遊び心で作った物は、一つの決まった形で受け継がれてゆくこともなく、ちょっと見には洒落ているものの、こうした方がもっといいんじゃないかと時代によって形が変わってゆき、中には現代的にアレンジされて面白いものもある。
大切なのは、本当に立派な人の家具の装飾とするのに、決まった様式があるものを難なく作り上げることができるかどうかで、プロの職人というのはその点では一目瞭然ってもんだな。
また、宮中の
なかでも、誰もどうやっても見ることのできないような伝説の蓬莱山や、牙を向くような荒海の下にいる魚の姿や、中国の獰猛な猛獣の姿、想像上の鬼の顔などのおどろおどろしく作ったものというのは、想像力の趣くままにとにかく人をびっくりさせてやろうというもので、実際に何かを見て描いたわけではないけど、本当にあるみたいだ。
だが、どこにでもあるような山のたたずまい、水の流れ、いつも目にするような人が住んでいる様子など、誰もがあるあると思うような、なじみのあるほっとするような形のものを、落ち着いた感じに配置して、そんなに険しくない木の鬱蒼と茂った山の幾重にも重なった景色は俗世を離れたようでもあり、身近な垣根の中を細かく気配りの行き届いた様などを描かせると、上手い人は勢いが違っていて、下手なものだと力及ばぬところが多い。
仮名を書くときでも、特に理由もなくあちこちに散らして書いてみたり、点を長く引っ張って連綿させたりして、何となくそれっぽく書いているものは、ちょっと目には才気にあふれているようだが、それよりも正しい筆法で丁寧に書かれたものの方が、表面的には拙いように見えても、実際に比べてみればしっかりした字だというのがわかる。
卑近なことをとってみても、この通りだな。
ましてや人の心、今風のそれっぽい見せかけの愛を、決して当てにしてはいけないなと、そう心得ていただきたい。
そう思うに至った最初のことを、少々エロいとはいえ、申し上げましょう。」
そう言って、近くへにじり寄ったので、源氏の君も目を覚ましました。
中将はというと、すっかり信者になって、頬杖をついて左馬頭の方を見つめています。
仏法を説く僧がこの世の道理を聞かせようとしているような気にもなり、確かに面白いのですけど、結局こういうときにはそれぞれ自分の言いたいことを我慢しておくことができないものなのですね。
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