第15話:セイレーンの歌声。
「あのさ、私がお母さんの病気、治してあげたらデルフィまで船出してくれる?」
「えっ?」
「男は怪訝そうな顔をした」
「騙されたと思って私をおじさんの家に連れてってくれない?」
「私がお母さんの病気治すから・・・」
「なに馬鹿なこと言ってるんだよ、お嬢ちゃん」
「俺をからかうもんじゃないよ」
「お嬢ちゃん医者でもないだろ?」
「アルゴさん、騙されたと思って試してみませんか?」
「私もお母さんの病気は治ると思いますよ」
ピアスのオカリナ効果を知ってるペルシャィーが言った。
「まさかな・・・でもそこまで言うなら・・・」
「もし、もし俺の母親が俺の顔と名前を思い出したらデルフィまで船を出して
やるよ」
「決まり・・・そうとなったら早くおじさんの家に行きましょ」
一行はアルゴに連れられて彼の家にお邪魔した。
さっそく母親の部屋に案内された一行。
見ると母親は寝ていたが眠っていたわけじゃなく目は開いていた。
アルゴが介護して母親は体を起こすと一行を見て挨拶した。
「これはこれは・・・お客様かい?・・・まあ遠いところから・・・」
「どなたでしたかしら?」
「このとおりだ・・・」
するとピアスはオカリナを取り出して、ゆっくり吹き始めた。
美しいメロディーが部屋中に流れた。
みんなもアルゴもその音色に聴き入っていた。
一行が死人の森で聴いた音色とまた違っていて誰の心にも深く染み渡った。
しばらくの間ピアスのオカリナの癒しの演奏は続いた。
みんな、オカリナの音に酔いしれて我を忘れていた。
ピアスの演奏が終わっても、みんな放心状態だった。
なぜか頭と体が活性化されたようで、リアムまるで少年の頃の元気や夢や
希望が蘇ってきたようだった。
「終わったよ・・・みんな、終わったよ」
ピアスにそう言われてみんな我に返った。
「あ〜終わったのかピアス」
「なにか夢でも見てたようだよ・・・すげえ」
リアムはまじで感心した。
「おじさん、お母さんの病気治ってると思うよ」
「え?ほんとか?」
「母ちゃん・・・俺が分かるか?」
「アルゴだろ・・・なに言ってるんだい・・・もう漁は終わったのか?」
「俺の顔も名前も分かるのか?」
「馬鹿だね、息子の顔と名前を忘れるわけないだろ」
「治ってる・・・治ってるよ・・・やった、やった、あはは」
「お嬢ちゃん、疑って悪かったな・・・」
「母ちゃんのボケを治してくれてありがとうな」
「アルゴさんよかったですね、お母さんの病気が治って」
ペルシャディーが、ねぎらうように言った。
「ほんとによかった、よかった」
リアムが言うと心がこもってないように聞こえる。
「みなさんありがとう」
「約束通りデルフィに船出してくれる?」
「おう、ペルシャディーって言ったか?・・・任せとけ、俺の命に代えて
デルフィまで送ってやるよ」
こうしてピアスのおかげで一行はエルフィまで行けることになった。
みんなを乗せた船は港を出発した。
最初の頃は海も凪いでいて穏やかなものだった。
「楽勝だな、ペルシャディー・・・もうすぐエマに会える・・・」
「あとひとばんばりだよリアム」
このまま、何事もなく海を渡れると一行は思っていた、いたがペルシャディー
はアルゴが港で怯えていた様子を思い出した。
「少しづつデルフィに近づいてるけど、アルゴは魔の海って言ってたよねリアム」
「そうだな、波がやたら荒い箇所があるとか・・・あ、海から大ダコが出て来る
とか・・・」
「タコってよくあるパターンだよね」
ペルシャディーとリアムがあれこれ言ってるうちに船がデルフィとの中程まで
来た時・・・
「なにか聞こえるよ」
耳が誰よりいいピアスが言った。
そしたらみんなの耳にも聞こえるくらいに海から歌声が聞こえてきた。
その歌声を耳にしてアルゴが言った。
「この歌声まともに聴かないようにしたほうがいいぞ」
それはピアスのオカリナにも匹敵するような歌声だった。
「なんだよ・・・この歌声?・・・どこから聞こえてくるんだ・・・
誰が歌ってるんだよ?」
リアムは海を見渡しながらそう言った。
「分かった・・・デルフィに行ってくれる人なんかいないって言ってた
理由が・・・」
「きっとセイレーンだね」
「セイレーンの歌声は耳を塞いでも意味ないから・・・」
「ペルシャディー・・・セイレーンって?」
「人魚のことだよリアム」
「美しい歌声で旅人を惑わして海に誘い込むって・・・いわば海の精霊のこと」
「え〜そんなのいるのか?」
「じゃ〜人間の俺が一番に海に誘い込まれるって寸法?・・・どうすんだよ」
「私も人間だよ」
リアムが船から海を見るとたくさんのセイレーンが、集まって来て顔を出して
美しい声で歌ってた。
「セイレーンもみんな美人だな・・・誘惑されたって不思議じゃないな」
歌声はますます大きくなって船は前に進まなくなった。
「船が前に進まなくなったぞ」
アルゴがそう言った。
一行はここで立ち往生することになってしまった。
しかもセイレーンの歌声でペルサディーモリアムもアルゴもは意識が朦朧と
なって来た。
平気な顔をしていたのはピアスとエレンネルだけだった。
どうやらセイレーンの歌声も妖精とエルフには効かないようだ。
アルゴは船を前に進めようと必死だったがどうやってもダメだった。
「くそ〜絶対デルフィまで連れて行ってやるからな」
ここにきてまたまた一行は大ピンチ。
つづく。
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