第13話:カドゥーケスの杖。
薄暗い中から、すーっと何かが現れた。
「おいおい・・何か出てきたぞ」
「人間の形してないか?」
「それも、わんさか出てきたぞ・・」
慌てるリアム。
「きっとこの沼で死んだ人間の悪霊だね」
「やっぱり悪霊か・・・悪霊がつるんで出てきんだ・・ひとりじゃ心細いのかな」
「しかもキミが悪いし・・・ゾンビみたいじゃないか」
「あっちこっち腐ってる・・・」
「馬鹿野郎・・・こっち来るな」
悪霊を追い払おうと剣を抜くリアム。
するとその悪霊の中にひとりが言った。
「この沼にきたのが運の尽き・・・お前らも、わしら同様仲間になるのだ・・・ 」
「あんたら悪霊さん?」
ペルシャディーはいたって冷静に聞いた。
「そうだ・・・われらはこの沼に落ちて死んで腐ったまま天国へ行けずこの沼で
彷徨ってるのだ」
「おまえらも、この沼で死んで腐って魂は天国へ行くことなく暗い森で彷徨うことになるんだ 」
「永久に転生することなどない・・・」
「あんなこと言ってるけど、ペルシャディー」
「ただの脅しだよ」
「私たちを沼に引きずり込もうとしてるんだよ」
「もし、あんたたちの魂が天国にいけるとしたら、おとなしくここを通して
くれる?」
「それはそうだが・・・なに?・・・そんなことができるのか?」
「この世界でそんなことができるやつなんか・・・」
「私ならできるよ、天国へ魂を導いてあげるから、おとなしくここを
通してくれない?」
「そうだな・・・そんなことができるならな」
「じゃ〜約束ね」
「さてと・・・じゃ〜私の出番ね」
「何をしようってのペルシャディー?」
ピアスもエレンネルも黙ってペルシャディーの動向を見守っていた。
ペルシャディーは持っていたカドゥーケスを前に差し出した。
すると杖の先から光があふれ出した。
その光は徐々に大きくなって森一面を包み込んでいった。
「なんだ・・・この光は・・・おおお、暖かい・・・心が洗われるようだ」
「この癒しの光で・・・これで、われらの魂は天国へ行けるのか?・・・」
「天国でもどこでもいいから、とっととここからいなくなって」
「女よ・・・ありがとう」
そう言って悪霊は、徐々に透き通るように煙のように消え去った。
カドゥーケスから放たれた光は悪霊の魂を浄化したのだった。
「消えてったぞ、あいつら・・・どうなってるんだペルシャディー?」
「カドゥーケスは攻撃だけの杖じゃないの」
「魂を浄化する力も持ってるんだよ」
「そんなすごい杖で人の頭なんか叩くなよ」
「じゃ〜なんでラミアの時に使わなかったんだよ」
「使ってもよかったけど・・・もし魔法使ってたら、みんなラミアと一緒に
暗黒に吸い込まれてたかも・・・」
「あの時はエネンネルが機転をきかせてくれたから、使わなくて済んでよかったの」
「それにしてもすごい杖なんだな、その杖って」
「私の魔法の力でもあるんだよ」
「さうがは、ど級で有名な魔法使いだ」
リアムは改めて感心するのだった。
リアムもピアスもエレンネルもとりあえず胸をなでおろした。
悪霊といえど人間と同じでちゃんと魂は持っているわけで、天国に行けないと
地獄を彷徨ったまま転生できないのだ。
悪霊が去ると霧も徐々に晴れていった。
「さあ、早く沼を抜けよう」
ペルシャディーがさっさと歩きはじめた。-
「これで最後にしてほしいな・・・もう何も出ないでほしいわ・・・」
「奥が深い森ですからね」
エレンネルが感慨深げに言った。
「さっきの悪霊のこともあるしで、俺、疲れたよ」
「こんな危険をおかしてエマを助けに行くことになるなんて思わなかったわ」
「全く・・・」
リアムがまた愚痴った。
「じゃ〜エマさんのことは忘れて私とセックス三昧に明け暮れるってのは?」
「エレンネルまたそうやってリアムをからかう・・・」
「いいじゃないペルシャディー・・・悪霊も退散したんだし」
「この森のメイン悪霊みたいなラミアが出たから、もうなにも何も出て来ない
わよ・・」
「エレンネル・・・俺、疲れてるから・・今は相手できない、ごめんね」
「ああ、気にしないで言ってみただけだから・・・俺にはエマだけだから・・・」
「そのまえにちょっと休憩しないかペルシャディー・・・」
「いつになったら森をけるんだよ」
「しかたがないね・・・じゃみんなも少し休む?」
「でも悠長にはしてられない+よ、まじで夜になったら進めなくなるから」
ピアスが言った。
「悪霊よりもっと怖い化け物が出てくるかもしれないし・・・」
それを聞いて休憩したかったリアムはもうごめんだと立ち上がった。
「ラミアより強い化け物が出たら、勝てないかも〜」
エレンネルの言葉が追い打ちをかけた。
一行は、これ以上のアクシデントはごめんと休憩せずに森を進んでいった。
つづく。
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