第12話:死者が眠る沼。
一行はまたまた悪臭ただよう湿地帯に出くわした。
「このどろ沼・・・ここはひどい有様ね」
ペルシャディーが自分の鼻をつまみながら言った。
「すごい臭いだな・・・ 息吸ったら気絶しそうだよ」
リアムも鼻をつまんだ。
「沼に落ちないようにしないとね・・・」
ピアスが言った。
「こういう沼は、たいがいは底なしに決まってるからね」
「みんな、落ちないよう俺についてこい」
リアムはそんなこと言いながらペルシャディーの後ろにいた。
「ところで今、何時くらいなんだろ?」
「日差しが少ししか差し込まないから時間が分からないね」
ペルシャディーも同じことを考えていたのかリアムに反応した。
「ちょっと待って」
ピアスはそう言うと風に乗って木々の上まで上がっていった。
森の先端を抜けると、外界が見えた。
すでに日は西に傾きかけていた。
しばらくするとピアスが降りてきて言った。
「日が西に傾いてるから、あと数時間で暗くなるね、ペルシャディー」
「じゃ〜早く通り抜けましょう」
「夜になったら、さらに何が出てくるか分からないから・・・」
「それにしてもこの臭い、なんとかならないかな」
リアムが愚痴った。
「この沼に沈んだ死人の腐った臭いだよ」
「おえっ・・・いったいこの沼に何人沈んでるんだよ、ピアス?」
「昔、この地帯で人間同士の戦があって・・・戦いに敗れた人間たちが
この森に逃げ込んだって話だよ」
「それでこの底なし沼にハマってたくさんの人間が沈んでるって話 」
「そうなの?・・・キミの悪い話だな」
「死んだ人の魂が、この森の異様な空気に取り込まれて悪霊になって徘徊
してるって話だね 」
「え〜そんなの分かってて森に入ったのか?」
「森を通らないと遠回りになるって言うから・・・」
ピアスがしかたないってふうに言った。
「リアム、文句言わない・・・今更引き返せないんだから」
「ペルシャディーは危機感なさすぎだよ」
「それにしてもさっきから延々歩いてる気がするんだけど」
「デカい沼なんだな・・・」
「いつになったら沼を抜けるんだ?」
リアムがまた文句を言った。
「今、森のどのくらいまで来てるんんだろう?」
「たぶん三文に一くらいじゃないかな」
ピアスはそう言った。
「エレンネル大丈夫?」
リアムは、後ろを振り返ってエレンネルを気遣った。
「はい、大丈夫ですよ、私は精霊ですからね」
「ただ・・・異様な雰囲気を感じますね・・・なにかいますね、この先に」
「リアムこそ大丈夫ですか?」
「俺はみんな、みたいにタフじゃないし体力にも限界があるからけっこう
足に来てるかな」
「今までの道もただの道じゃなくて凸凹で曲がりくねってるし、おまけに
デカい木の根っこがあっちこちあったりしたからね 」
「それにこの臭いがキツくて息苦しいし・・・」
するとしゅわ〜っと霧がでてきた。
「なんだこれ、霧か?」
「霧はどんどん発生してきて、ほとんど前が見えなくなってきた。
「これじゃ何も見えないよ・・・前にも後ろにも行けないな」
文句だらけのリアム。
「立ち往生だね」
「みなさん霧に惑わされて沼に落ちないようにしてね」
ピアスがみんなを気遣った。
「霧が晴れるまで進めないのか、もたもたしてたら日が暮れるぞ」
あたりが徐々に暗さまで増してきた。
「なんか・・・最悪の事態になってきてないか?」
「俺たちこの沼で死んじゃうのか?」
リアムがビビって言った。
「慌ててもしょうがないでしょ?そのうち霧は晴れるよ」
「慌てないなペルシャディー」
「慌てて動いて沼にでも落ちて私たちも腐った屍になりたくないからね 」
すると薄暗い中から、すーっと何かが現れた」
「おいおい・・何か出てきたぞ」
つづく。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます