第9話:ピアスのオカリナ。
「あんたら森を抜けてくの?」
ロバのエドが言った。
「森の奥へ行くなら降りて歩いて行ってよ?・・・悪いけど・・・」
「しかたないわね・・・みんな、ここからは歩いて森を抜けましょ」
ペルシャディーが言った。
「エド、ここまでご苦労様様、ありがとう」
「そういたしましてピアス・・・またね」
リアムもエドと思う一人のロバにお礼を言った。
「どういたしまして・・・」
「ほな、さいなら・・・気をつけてね。みなさん」
エドともう一頭のロバは、さよならを言って帰っていった。
「さてと・・・ロバもいなくなったことだし、そろそろ瞬間移動とか
って魔法使って一気に森を抜けようよ?」
誰もリアムの冗談に耳を傾けなかった。
「そんな癒合よく言ったら、旅なんかすぐ終わっちゃうだろ?」
かろうじてペルシャディーが拾ってくれた。
「早くしないとエマのことが心配だから・・・」
「んじゃ、バカな冗談は言わないで、早く森の中へ入るよ」
「なあ、この森を抜けたらあとどのくらい歩くのかな、ペルシャディー?」
「そうね、抜けたら歩いて3時間ってとこだと思うけど」
「ピアスは風に乗れるしアネモイは風の精霊だから楽勝だけど私とリアムと
エレンネルは歩きしかないね」
「オリバルドの住処のオプスキュリテの塔まで、森を抜けて北西に3時間あまり
かな・・・けっこうな山道を登らなきゃいけないけど・・・
森を抜けないと、もっと歩くことになるからね・・・」
ワテと悠生さんは歩きになりまふから、とても山越えはキツいれふ」
「パンさんのことを思うと一刻も猶予はありましぇんから」
「なんかさ、ベンジャミンのことずっと過小評価してたわ」
「悪かったな」
「一緒に旅を続けていて今頃気づいたんれふか・・・」
「ワテはもともとできる男なんれふ・・・子供達にも人気ありまふひ」
「さあ、先に進みまふよ」
「ここは旅人には、恐ろしい森れふから早く抜けまひょう」
他に選択の余地がない一行は森の中に入って行った。
しばらく行くと、綺麗な花畑が現れた。
「なんか、よく見たら背中に羽が生えた小人みたいなやつが飛んでるな」
リアムが眉をひそめてそう言った。
「花の妖精だよ」
妖精のピアスは仲間が来たので嬉しそうにしていた。
「どこの森にでもいる妖精ね」
エレンネルが言った。
「珍客が来たと思ってめずらしがってるのよ」
「私たちにはなにもしませんから、大丈夫ですよ」
ピアスはさっそく自慢のオカリナを妖精たちに吹いて聴かせた。
その音色は妖精にかぎらずリアムやペルシャディーの心にも入り込んで来て、
絶大な癒し効果をもたらした。
「なんて音色なんだ・・・心が洗われるようだよペルシャディー」
「ちょっと心が折れそうになってるリアムには丁度いいね」
「美しいメロディーですね〜」
エレンネルもうっとりしていた。
三人はしばらくの間、ピアスの奏でるオカリナの音に心を奪われていた。
「この綺麗な音色なら悪霊もでてこないでしょう」
ひととおりピアスがオカリナを吹き終わった。
「え?エレンネルさん、この森、悪霊なんかいるんですか?」
「いるって聞いたことありますよ、リアム」
「え〜いるって分かってて入ってきたのか?」
「悪霊なんてのに出会いたくないな〜・・・」
「みなさん・・・さっきからいい匂いがしてるね」
ピアスが言った。
リアムは鼻をクンクンした。
「そう言われるとエマと同じような匂いがするな」
三人は周りを見渡した。
「ニンフだね」
「この森はニンフの生息地、溜まり場でもあるんだよ」
「私のオカリナの音に誘われて出て来たみたい・・・」
「ニンフってみんな同じ匂いがするんだ」
つづく。
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