第5話:死人の森と言われる由縁。

「それってどんな話か知ってます?ペルシャディー?」


「あくまで噂だけどね・・・」


「この森には小さな泉があってね、泉には美しい精霊が住んでいたんだって」

「ある日、この森に貴族のアルベルトという男が迷い込んできてアルベルトは

その泉で、その綺麗な精霊と出会ったそうだよ」

「アルベルトはあっと言う間に精霊に魅了されてしまったんだって・・・」


「アルベルトは精霊の住処に一晩泊めてもらったんだけど不思議な精霊の

魅力に負けてたちまち恋に落ちちゃったんだって」


「ふたりはお互いを求め合い結ばれちゃったんだそうだけど、もともと精霊に

誘惑された男はその魅力から逃れるのは難しいって言うからね」


「リアムもそうじゃないの?」


「いや〜僕は・・・・」


「まあいいわ・・・」


「で、精霊と結婚したいって思ったアルベルトは彼女を連れて無理やり森を

抜けて町へ連れ帰っちゃったのね」


「でも、アルベルトにはすでに妻がいてアルベルトの帰りを待っていたの」

「アルベルトが精霊を連れて帰ったことで妻は失望するものの彼女をアルベルト

の目の届かないところに追いやってしまったそうよ」


「精霊から引き離されたアルベルトは我に帰り一時の迷いで彼女に惑わされた

ことを知って正気に戻ると精霊を探すことをやめて妻のところに戻ってしまった

んだって」


「やがてアルベルトは精霊のことなど忘れて妻との愛を育んでいくんだけど

精霊は自分を迎えに来ないアルベルトに自分が裏切られたことをアルベルトの

家の庭の木の妖精から聞くと町に戻ってきてアルベルトを見つけ出すの」


「私への愛は?必死に懇願する精霊の努力も虚しく彼女はアルベルトに罵声を

浴びせられ冷たくあしらわれたの・・・」


「せめて最後にお別れのクチづけをと精霊はアルベルトに求めるとアルベルトも

これが最後と彼女の要求に応じた・・・」

「別れの接吻・・・それが精霊の死の接吻とも知らずに・・・」


「アルベルトは精霊とクチづけを交わしながら彼女のその腕の中で息絶えたの」

「精霊はアルベルトの魂を大事に抱えて泉に戻ったって話・・・」


「だからアルベルトの魂は天国へ行けず今も泉の周りを彷徨さまよってるらしいよ」


「それがこのニナイの森が死人の森しびとのもりって言われてる由縁」

「ほんとのことかどうかは私は知らないけど・・・」


「ペルシャディーさんめっちゃ詳しいじゃないですか?」

「やっぱり遠回りしたほうがよかないですか?」


「ビビちゃったの?リアム」

「そうじゃないですけど、あまり気持ちいい話じゃないですから・・・」


「大丈夫だよ・・・そう言うのは誰かが嫌がらせで作った話多いからね」

「それに遊びに行くんじゃないんだから順風満帆な旅なんかないよ」


そんな話をしていると森の手前の草原から誰かがやって来るのが見えた。

その人物はふたりに近ずいて来るとまずペルシャディーを見て言った。


「やあペルシャディー久しぶりだね」


「ピアス・・・元気してた?」


「ペルシャディーこの小さい人、お知り合いですか?」


「そうね、ピアスとは随分古い知り合いだね」


ピアスと呼ばれた人は髪は肩くらいでは色が白から毛先に向かってピンク色

にグラデーションしていた。

妖精とは言っても人間の子供くらいの大きさでちゃんとした服も着ていて、

ロシアのウシャーンカみたいな帽子をかぶっていた。


そして腰から何かをぶら下げていた。

それは誰もがよく知ってるオカリナと言う楽器に似ていた。


「ピアス、紹介しとくね」


「こっち、リアムって言って私の連れで、見習い剣士」


「見習い剣士は余計ですよ、ペルシャディーさん」


「自分で見習いって言ってたじゃない」


「ですけど・・・そう言われるとヘタレみたいじゃないですか?」


「ヘタレじゃないの?」


「いいです、もう・・・」


「もういいの?・・・やあ、リアムよろしくね」


「はあ、よろしくです・・・ピアスさん」


「ピアスでいいから・・・」


「リマム、ピアスは草原の妖精なんだよ」

「この子はオカリナの名手で普段は風に乗っていろんなところに出没するから、

この世界の隅々まで知ってるんだ」


「へ〜妖精なんですね・・・ピアス・・・」


「ピアスいいいところで会ったよ」


「もし迷惑じゃなかったら私たちと一緒に旅に出ない?・・・一緒に行って

もらえると助かるんだけど・・・どう?」


「そうね・・・どうせヒマだし・・・いいよ一緒に行ってあげる」


「あ、ありがとうございます・・・改めてよろしくです、ピアスさん」


リアムはピアスにお礼を言った。


「どういたしましてリアム・・・あなたいい男ね」


ピアスが仲間に加わったことで旅の一行はティグルも入れて四人になった。

このピアスのおかげで旅先で起こる危機をなんとか乗り越えて行くことになる。


つづく。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る