第4話:リアムの事情。

「その見習い剣士さんが、私の力を借りたいって・・・いったい何があったの?」


「はい、実は俺には、将来を誓い合った女性がいたんです」

「彼女はエマと言って森の精霊なんです・・・以前、エマがレンデルースの

森で化け物に追われてた時、通りがかった俺がエマを助けたことから、お互い

惹かれ合うようになって・・・」


「人間が森の精霊とできちゃったわけ?」


「将来は結婚まで誓い合った仲だったんですけど、ある日、オリバルドと言う

ダークエルフを頭にした集団がエマの住むレンデルースの森に狩りにやって来て、

たまたま休憩のため立ち寄ったエアの家でエマを見初めたオリバルドがエマを

さらって行ったんです」


「その一部始終はエマと一緒に住んでた母親から聞きました」


エルフの中には平和を重んじる種族もいたが、中には徒党を組んで

遠征しながら森や村を襲って縄張りを広げていくような悪いエルフもいた。


「で、俺は彼女を取り戻しに行こうと思って・・・でも見習い剣士の俺が

魔法を使えるオリバルドに勝てるわけがないし・・・返り討ちに会うのは

目に見えてます」


「そこで思いついたのが最強の魔法使いペルシャディーさん」


「ふ〜ん・・・愛しい彼女のためね・・・泣ける話ね」

「女好きのオリバルドなら私も知ってる・・・あいつのアジトもね」


「ペルシャディーさん俺と一緒に彼女を取りもどしに行ってもらえませんか?」


「そうね・・・まあ、国王のバカ息子の方は命に関わることじゃないし・・・

あんたの彼女の方が大事だよね」

「そういうことなら手伝ってあげようかな?」


「先に言っておきますけど、何もお礼できませんよ」


「そんなもんいらない・・・」

「たまには魔法も使わないと鈍るからね・・・いい機会じゃない?」

「ティグル・・・行くわよね、あんたも」


「私はペルシャディーの行くところならどこでも・・・」


ってことで、ペルシャディーは気まぐれから国王から頼まれたバカ息子を

連れ戻す旅を放っておいてリアムの彼女を助ける旅に出ることにした。


「リアム・・・オリバルドのアジトってオプスキュリテの塔だったよね」


「アジトを変えてなければですけど・・・」

「でも、とりあえず塔まで行ってみないと、分かんないですね」


ペルシャディーとリアムがいる草原の丘から少し先には森が見えた。


「どっちにしたってニナイの森を抜けて行くしかないかな・・・」


ペルシャディーは独り言のように言うと


「やっぱり森を抜けなくちゃけいないですかね?」


リアムは森を行きたくなさそうに言った。


「遠回りして行く手もあるけど、一週間くらいは塔への到着が遅れるね」

さらわれた、あんたの彼女早く救いたいでしょ?」

「多少は危険でも行くしかないんじゃない?」


「ここって別名「死人の森しびとのもり」って言うんでしょ?」


「そうね、昔この森に住んでた精霊にまつわる悲しい物語がその名前の由来に

なってるみたいね」


「それってどんな話か知ってます?ペルシャディー?」


「あくまで噂だけどね・・・」


つづく。

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