黒い服
矢斗刃
黒い服
その女は黒を纏っていた。黒い服に黒いズボンを穿いている。黒いスニーカーがより黒く彼女を染め上げているのがわかった。
若干引いたのは仕方ないことだ。
そしてこう思ったのも仕方ないことだ。
”まさかコイツ・・・中二病か?”
少し距離を取るように離れた。
それがいけないことのような気がしたが、警戒を露わにしながら睨み合いが始まっていた。
どうしてこんな状況になっているのかわからない。
相手はいつも見ている男。
まぁそれは仕方ない。
私がそう言う呪いを掛けたのだから・・・
いつも来て会いに来る呪い、微弱でいつ消えてもおかしくない効果は未だ継続しているようだ。
「ふふ。」と笑うと少し引かれた気がした。
よく見ればさっきから少しずつ距離をとろうとしているような・・・と首を傾けるなぜと?
その彼の行動に疑問を持ちながら見つめていた。
時間が止まったような感覚を味わいながらまるで逆行するように同じシーンを繰り返す。
そのことに意味があるのか、わからないまま。
答えなんてない状態で曖昧な味のチョコを食べている。
「微妙。」と思わず言ってしまったのは仕方ない事だろう。
なぜかそう言った瞬間顔が引きつったような気がした。
コイツ今なんて言った?
「ふん。」と顔を背けるようにしながら彼とすれ違う。
後ろを振り向くとこちらを見ないで行ってしまう。
私が思わず地面を蹴ってしまったのは愛嬌だろうか?
何があっていたのか?
白か青かピンクは少々私の色ではない気がする。
ふーむと考えながら歩いている私は電柱にぶつかってたんこぶを作った。
「おー痛い。」と言いながらおでこを擦ってこの日は家に帰って服を選び直す。
鏡の前でファッションショーをしながらどの服なら彼に振り向いてくれるのか考える。
これもダメ。あれもダメ。
「はぁー。」と思いながら服選びに苦戦する私だった。
次の日また黒は黒でも少し違った服を来て行ったらまた引かれてしまった。
”なぜー!?”
どうやらこの女の子にはファッションせんすがないようだ。いやあるのか?
目の前には昨日と違ってゴスロリちっくな黒い服を着ている女がいる。
なんて反応を返せばいいのか・・・俺にはこの女が考えていることがまったくわからなかった。
そして言った言葉が・・・
「微妙。」
この一言にまた彼女はビクッとしながら引きつった笑顔を見せるのだった。
黒い服 矢斗刃 @ini84dco5lob
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます