第51話
性的不能は僕には一大事だった。そんなに深刻そうじゃないまあを恨めしくも感じた。彼女にとっても大きな喪失であって欲しかった。
オカヤマを過ぎてヒョウゴへ。コウシエンの辺りを懐かしがるまあ。若い頃に少し暮らしていたらしい。それも元妻と同じだった。
複数プレイはどうしても嫌だと言うまあに頼み込んで、コウベ、オオサカと人の多い街をブラを外して歩いてもらった。しかしそれは逆効果だった。この時代、かえって隠してた方が人目を引くし、それも性的な意味合いではなかった。
良く考えたらこの時代に複数プレイの参加者を集めるのも一苦労だ。みんなセックスなんてしたがらないんだから。僕は出来なくなってしまったんだけど、これでは僕を僕たらしめてたものが無くなって、僕は周りの誰とも同じになってしまった。
あべこべに筆は走った。叶わぬ事を書くのが小説。その中でまあは巨根に犯され僕をちらちら気にしながら昇り、ついには目をかたく閉じ絶叫して昇り詰め、その巨根からいつもより奥に勢い良く何度も放たれる精液の噴射に合わせて全身を震わせた。握られた陰茎に伝わるその震えがまあの顔に申し訳程度の精液を寂しく飛ばした。
僕の小説は、ますます読者を増やして収益をもたらした。
けれども、その頃の話をまあは読みたがらなかった。
たこ焼きをつっつきながら「シメイくん、あんなの現実になったらうれしいの?」と聞いてくるまあに「わからない。ただ、今は勃起出来る方法が他には思いつかないんだ」と肩を落とす僕。「確かにおちんちんがいちばん気持ちいいけど、わたしは裸で抱き合うだけでも感じるよ。こうして一緒に居るだけでも…」と優しく指を絡められて、涙が溢れそうだった。
急ごう、はやくまあちゃん、元彼に引き渡すんだ。
悲しい決意だった。
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