第47話

その晩はサキュウ近くに車中泊、一度眠って、真夜中を狙ってサキュウを再訪した。

午前二時、さすがに誰も居なかった。本物の砂丘を見たことがある僕からすればどっかの海水浴場みたいな広さだけど、ふたりきりなら充分広い。

ふたり並んで少し砂をほじくって、そこに沈んだ。サキュウの向こうは海で、その高い水温が生温かい気流を作っていた。それと穏やかに吹く人工の風が、風紋を作っていた。

お互いに砂をかけ合って体が砂に埋まると、砂の中手探りで手を繋いで、いつの間にか眠っていた。

音も光もなく、穏やかな風。表面を這うように動く砂粒は眠りの途中だったふたりには心地良い子守唄みたかった。

まるで誰かに優しく抱かれてるみたいだ。

誰かに…

ん?まあちゃん?

いや、まあは隣で口開けて寝てる。なんだ、気のせいか。その口を閉じてやろうと右手を伸ばすとまあの手で制された。ちいさな白い手、いや、違う場所から伸びている。

幽霊?信じないけど、おそるおそるその手を辿って視線を上げて驚いた。


「まみちゃん!」


元妻が全裸で四つん這いに覆い被さっていた。

紛れもなく、元妻だった。

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