砂丘に降る雪

第45話

ふたりおかしくなってた。そわそわしてはしゃいで、ぼーっと押し黙って。何故かそのサイクルがおんなじで、逆に出口が無かった。

何を考えるのか、お互いわからない。

「ま、まあさん!いや、ちゃん…」変な風。まあは黙って微笑んで、肩寄せ頭を傾けた。サンインは寂れていた。沿岸での漁業はなく、魚は淡水魚の養殖が主な資源になっていた。シマネではシンジコが百分の一スケールで再現されており、そこでヤマトシジミが養殖されているらしいから、楽しみだ。その前にサキュウラッキョウ。まあはラッキョウは嫌いだけど、しじみ汁は「二日酔いに良いよねー」とか言うもんだから、「二日酔いするほど飲めない癖に」と他意なく言ったらふくれて大変だった。いくら中身が同い年と言っても、どうしても見た目でお姉さんぶりたいんだ。そのくせしょっちゅう足の小指とか頭をあちこちぶつけてる。可愛いな。

僕は本当にふたり並んで砂丘に埋まって、一緒に干からびて風紋になりたかった。旅が続くのが怖くなっていた。

だけどまあを見てると、こんな彼女と愛し合いながら長年離れてる元彼が可哀想になってきた。さぞや寂しいだろう。

きっとまあは、僕と出会わなければ真っ直ぐナガノへ向かった筈だ。僕はとんだ邪魔者、二人の純愛に水を差すだけの間抜けな間男。

ふくれてるまあを放ったらかして、また押し黙っていると、まあが「もう怒ってないよー。逆に怒っちゃった?」「いや、怒ってるんじゃないんだ」「嘘だよ、こんなに真っ赤になって、怒張しちゃって」「あっ!」油断も隙もなかった。


ぴゅ


僕は口に出すのがあまり好きじゃなくて、それは出した後はチューしたいからだ。

「飲んじゃった」チューはしなかった。

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