日本海
第41話
それから僕らはのろのろ北上し、一日一県ペースで北上した。本州しかないからそれでもひと月ちょっとでまわれてしまう。最北端のアオモリ。明日からはニホンカイ側を南下する。
「海が、見たいな」
そう言ったまあに、「暑くて嫌なんじゃないの?」と聞くと、「うん。だからニホンカイなんか行った事がないの。シメイくんと見てみたいんだ!」そう言ったまあは、努めてはしゃいでる風を装おってる様に思えた。
「まあちゃん!」「なあに?」「隠し事はなしだよ」そう言うと、「うん。ごまかせないね。あのひとと行った事ないんだ、ニホンカイ」と観念した。僕もだった。
「なんだかさ、海はいっつも東にあるもんだと思ってたんだ。当たり前だけど、西にも、どこにもあるんだよね。ほら、今は北にある。僕らふたりがこんな旅をする事になったのは、きっと神様がくれたご褒美だよ。ふたり、ついこないだまで別々に、一生懸命生きてきた。孤独だった。目の前しか見えなかった。それがふたり出会ってさ、こうなってさ、ムッ…ぐっ…」
口を塞がれた。唇で。頬にあったかいものが伝った。そのまま目を閉じて、キスしたまんま眠った。
僕らいまでもアオモリの何にも憶えていない。
ただ、お互いの顔と感触。
いちばんの思い出の場所になった。
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