第40話

まあは酒が嫌いだ。だから飲んだらすぐに酔う。朝の空きっ腹、コンビーフにツナ缶開けて。缶ビールを乾杯もせず無言で飲んだ。

最初の二三口、ちょっと飲んでは目をかたく瞑り、眉間と顎をしわくちゃにしてたのを横目に見てたら、あれ?一気飲み?

「わあ、まあちゃん!どうしたの?」

「昨日はよくもわたしに怒ったなー!今日はわたしの番だよ。なんで?なんで?、なんで?」言葉が続かず、わんわん泣き出した。

「ごめんよ、まあちゃん。泣き上戸なんか?ただなんとなくなんだ」

「泣き上戸じゃないっ!なんとなかないっ!」

今度はひっくひっく。

「もうしないよ」「ほんとに?」答えが言えず、抱きしめた。昨夜しなかったし、このまま。パンツに手を忍ばせた瞬間、押し戻された。「ごめんね、トイレ」車を降りて公衆便所へ向かうその背中に「まあちゃん、ありがとう」あれ?行っちゃった。聞こえなかったかな?

長いトイレ、戻って来たまあちゃんに「うんこ?」と聞くと、あっかんべーしてそのまま押し倒された。鼻をかんでたんだろう。真っ赤だ。


あの頃ふたり、天国にいた。


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