第38話

その夜はミヤギのリゾート特区まで出て車中泊する事にした。やっぱりなんだかモヤモヤしたムードで、まあの黒いブラジャーのホックはまるで南京錠で結ばれてるみたいに感じて手が伸びなかった。

ふたり背を向けなかなか寝付けず、痺れを切らした僕が「せっかくだから、ゆっくり寄り道しながら廻ろうか」と言うか言わぬか、まあはくるんとこっちを向いて、僕の身体をがさつにひっくり返そうとした。

まあの弱い力では動かないんだけど、僕も振り返るとすぐそこにまあの顔があった。

「ごめんね、お互い言えなくて、溜め込んで変なふうになる前にさ。わたし、怖いんだ。お金さえ大丈夫なら、ずっとこんな暮しが良いな」

ブラジャーが外されていた。

僕が素早く右乳首に吸い付くと、いつも最初はくすぐったがるまあが「あっ」と声を漏らした。それからすぐに挿れて、ゆっくりゆっくり入口から奥まで確かめるみたいに、その間ずっとぴったり重なってキスをした。

僕らの恋は世界一みたいに思えて、僕は今夜死んでも良い気がして涙が滲んだ。暗い中ぼおっと光るまあの白い顔、その目尻にも涙の線が見えたけど、それがどういう涙かは僕にはわからなかった。

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