モラトリアム
第37話
センダイはふたりともはじめましてだった。僕らは居住区をぐるりと巡り、またヤマグチからタイヘイヨウ側に出て東上、ナゴヤから北上してナガノのリゾート特区を目指した。
そう何年も掛けるわけにはいかないけれど、この楽しい旅がなるべく長く続く様に。
まだ出発したばかりの僕らは、子供の頃の夏休みの始まりみたいな気分で居られた。
本州以外の再建は諦められ、人々は各地に散ったようで全都府県(今は区と呼ばれる)1日ずつ掛けても一ヶ月ちょいで廻れてしまうから、そのうちペースを落としても良いと思う半面、もしまあの元彼が見つからなかったら、環境の良いリゾート特区でふたりのんびり暮らしたい気持ちもどんどん膨らみ焦れて答えを急ぎたいような、なんとも複雑な気持ちだった。
案の定まあは、チバ・イバラギ・フクシマと過ぎるうち、「ねえ、どっかで休まない?」と言って来たが、節約を理由にトイレと食事くらいにとどめてセンダイへ直行した。
「きっとあのひと見つからないと思う。ずっと連絡もないんだもん」
そう言わせてしまって反省した様な、本心を問い詰めたいような、また複雑な気持ちになってしまい、「とりあえず廻って、またナゴヤに帰ったらしばらくゆっくりしてからナガノを目指そうよ」と答えた。
まあはくちびる尖らせながら、渋々納得したみたいに見えた。
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