壁
第29話
横浜には10年住んでたから、今どうなってるのか気になった。僕らが暮らしていたのはナゴヤらしいから、それなりに時間がかかる。
その間、まあの頼りない説明に耳を傾けた。
「うーん、当たり前過ぎて考えもしなかったから、間違いもあるかもしれないよー。日本は縦長のドーナツ形なんだ。真ん中はフジって言って、昔火山だったらしく。その地下のまぐま?とかいうのを避けて造られたんだよ。これは確かだよ。中学で習ったもん!」
「そうか。じゃあ、そこからも熱エネルギーを取り込んでるんだ?」
「もうないみたいよ。だから、悪いことして捕まった人は空か海の壁に連れてかれて働かされるんだよ。すっごい暑いみたいよ」
「海があるのかい?!」
「うん。わたしも昔海水浴に行った事あるけど、暑くて嫌だったなあ。サーファーぐらいだよ、あんな暑いとこに住んで、海に入って」
なるほど、なんとなく構造が掴めて来たぞ。天井からは外気を、外壁からは水を熱とともに取り入れてるんだな。
「まあちゃん、それじゃ海の近くや空には発電所があるんじゃない?」
「あったかも。お塩の工場は海の近くだよ。むかしは内側の壁にも発電所があって、小学校の時その跡地を見学に行った事があるんだ。それより、ね?」
ぱくり。
「まあちゃん、運転、運転!」
「大丈夫だよ、自動運転だから」
「あ、そっか。じゃ、なんで今まで運転してるっぽかったの?」
「旅行気分盛り上げたいじゃん?」
空とはいえ対向車が居る。
ドキドキして、すぐに出てしまった。
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