車中泊

第25話

何から話したら良いんだろう?

とりあえず彼女の意思と都合だ。

「もし僕が本気だとしたら、まあさんはどうなの?実際僕は何もない。恋してその人と旅に出たい。その恋を、見つけたんだ」

「あらうれしい。わたしも紫明くん、初めて会ったとは思えないよ。子供たちも離れてひとり。寂しかったり、退屈で紹介所使ってみたんだし」

「それなら決まりだ!行くよ!」

僕は手を引き、そのまま飛び出そうとした。

「うん。でも待って。その前に、ブラ着けさせて」

「ああ、忘れてた。気になってたんだ。まあさんは隠す派なんだね」

「うーん、隠れ隠す派ってとこかな。周りに居ないから。知らないとこにひとりで行くときとか、家では隠してる。なんだか変だよね」

「積もる話は道中で。あ、でも僕は社用車だ」

「わたし、おっきい車あるよ。歳とったら車中泊で日本一周するのが夢で、買ったんだ。お金も少しはあるから、当座は大丈夫」

僕らはこっそり社用車を車庫に戻し、まあの車に乗り込んだ。

「ねえ、まあさん」「なあに?」「これからまあちゃんって呼んでいいかな?」「あら生意気ね。良いけど」「実は僕、身体は若いけどまあちゃんと同じ52歳なんだ」「あら、そうだったら良いのにね」「本当なんだ、信じてくれ。500年前から連れて来られて身体が若返った」「うーん、そういう話聞いた事あるかも。未来へ行くと若返るって」「それが僕だよ。そんでごめんよ。まあちゃん、別れた奥さんにそっくりなんだ」「あらおかしいわね。わたしも昔の恋人を思い出してたわ」「じゃ、お互いさまだね、懺悔終了!」ふたり、笑った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る