第22話

事務所に帰り、弥生ちゃんに相談した。

30代、ダメ。35歳以上、ダメ。

それ以上は適妊期を過ぎてしまい、種馬としての依頼はごく稀だった。

(ああ、結局どの時代でも役立たずなんだな)

そんな僕の心中を察する様に、弥生ちゃんが言った。

「うーん、種馬として活躍出来ないのは残念だけど、あるよ、熟女案件」

「ほんとかい?」

「実際そっちのが多いくらいだよ。育児落ち着いたオバ様たちのお相手よ。やってみる?」

「うん、是非やらせてくれ!このままじゃ、給料泥棒だからね」

「じゃあ早速イッて来て」

また弥生ちゃんの第3の手の先に依頼主のプロフィール。種馬の時と違って顔写真はなく、名前・年齢・連絡先等ざっくりしている。

「更年期オバちゃんたちは純粋な快楽を求めてるわ。頑張ってね!それと…」

「中には恋、みたいなものを求めてたりもするかも。あなたには向いてるかもね」

「わかった。イッて来まーす!」

これで恩返しが出来る。勝手に連れてこられたとはいえ、こっちに来てから安楽に暮らさせてもらってる。しかも身体が若返って、おそらく寿命も延びるだろう。バリバリ働いて、きっちりお返ししないと。


そう張り切って出たのが最後。

僕は事務所に戻る事はなかった。

運命の出会いをしてしまったから。

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