種馬登録

第9話

テテテテテテーン、テテテテテ


ヒロシが来た。

このインターホンのメロディは500年後もあるのか(ファミマで鳴るやつね)なんて感動も消し飛ぶ、グラサンに裸ネクタイのヒロシの姿。

昨夜ジジイヒロシが上半身裸で筋肉痛の薬を塗りたくっていた不快な映像がフラッシュバックする。

「ちょっと待って」

ドアを閉めてネクタイを探す。それが礼儀なら従わなきゃ。

ヒロシは車に僕を乗せ、走り出す。

とはいえタイヤはなく、宙を浮いて走る。

高度により速度規制が変わり、自動運転でほぼ完璧に衝突が避けられ、交通事故は滅多に無い様だ。なんだかボロい4階建てのビルの、最上階の事務所に通された。

それまでヒロシとは、もとの世界の事について話した。共通の知人、僕の家族。

失うものがなく、かつこのままどうせ良い事ないであろう僕を連れて来たんだと。

あっちでは僕は失踪扱いになっているだろう。

悲しみ、心配してる人は居るだろうか?

ちょっと切ない気分になったけど、戻るにしたってヒロシの協力が必要だろう。

今は我慢して従おう。

「こっちは良いよ、たくさんヤれるよ」

「うん」

小さく頷いた。

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