後来:追憶という名の3
もちろんその変化は検証班というか『アナンシの壺』によって共有されていたし「これは絶対碌な事にならない」という予想はベテラン勢、いや、ある程度以上フリアドに慣れて、これまでのイベントのあれこれを直接体験して知った
ただそれでも確認しないって訳にはいかない。当たり前だが。何しろ絶対にいつかはそれが起こるんだから、もし同時多発的にその何かが複数の「追憶結晶」で発生した場合、対応が間に合わない可能性がある。
いや。もちろんちゃんと「追憶結晶」における挑戦に関して、挑戦中に何をやっても通常空間に影響する事は無いって、イベントのお知らせでも【鑑定】系スキルの結果でも出てるんだが……気づいちゃったんだよなぁ……。
「挑戦中に何をやっても通常空間に影響する事は無い。ですが、「追憶結晶」そのものの変化として通常空間への影響がないとは言ってないですね、これ」
普通はそこまで行くと曲解とか杞憂とかそれこそ陰謀論って話になるんだが……フリアドに関しては、前例が、な。ちょっと、多すぎてな。
さてここまでの情報を得た上でどこに挑戦するかだ。もっと言えば、難易度の上限をどこまで上げられるか、そしてクリア回数を増やす事による変化を確認するかだ。
「元から脅威度が高いのはレイドボスが出てくるイベントですから、最初から選択肢には上がっていませんでしたが。時間一杯走れる納品系は無しなんですが」
「追憶結晶」から挑める再挑戦イベントでは、ボーナスステージが無いからな。そういう意味でも、倒せば終わりのレイドボスが出てくるイベントの方が、クリア回数とクリア人数を稼ぐにはいいだろう。
高難易度なら一度に突入できる人数は多い。つまり交代で突入の選択をすれば実質連続で挑戦できる。つまりクリア回数を稼げばクリア人数は稼げる。ただ問題は、それでもなお目標値が恐ろしく高いって事なんだが……。
『「集め融かす外法の肉禍」がいいと思うんです』
『ん? 「第三候補」にしちゃ攻めたというか結構難易度高いとこいったな?』
『同じく~。それこそ~、魔物種族のレベルキャップが付いてた頃のイベントを選ぶと思ったわ~』
『まぁ戦いがいがあるやつを相手にする分には構わんがの』
『その手の選択に関しては、「第三候補」は的確であるからな。が、一応理由を聞かせてもらっても良いであるか?』
『あれが一番「ひたすら殴るだけでいい」ので……』
『あーそれはそう確かにそう。イベントって単位で考えたらあれが一番シンプル!』
『そう言えばそうね~。他はイベントって単位だと~、どうしてもある程度のギミックがあるのよね~』
『……なるほど。それにあれであれば、後続のまだ成長が追いついておらぬ召喚者を招き、凍らせた部分を殴らせることで更にクリア人数を稼げるであるな』
途中の戦闘狂と謎の信頼はともかく、準備の手は進めながらクランメンバー専用チャットで私が提案した相手と理由はそんな感じだった。何せ、今回は可能な限りの大人数で、とにかく回数をこなす必要があるからな。
回数だけならあの精霊獣が密集した積乱雲が生まれる、聖地の島の復活の時も大概だったんだが。今回はそれと同じどころか、それ以上の回数と人数を稼がないといけないからなぁ。
その場合あると良いとされる条件は、参加できる人数が多い事と、やる事がシンプルな事。注意点が理解しやすい事。そして無い方が良いとされる条件は、もうシンプルにギミックだ。
『ふむ。……一度は斬ったが、一度は耐えられたからのう。あの細長い部分を、唐竹割りにしてやりたかったんじゃ』
『スキルのレベリングもそうですけど、あいつ相手なら場所も広いですし、領域スキルによる制御力訓練も出来るでしょう?』
『まぁ、実際当時は後方で訓練をしていたであるしな』
『なるほど釣り餌も十分ってか、それなら絶対余る参加枠もごっそり埋まるんじゃね?』
『参加人数を稼ぎたいのだから~、良い事ね~』
なので色々ルールにこっちでのイベント記録も見せて相談した結果、最初から最後までひたすら叩き続けた「集め融かす外法の肉禍」がいいのでは、という結論になった訳だ。
特に反対意見が出なかったので、問題は無さそうだな。火力を上げるだけなら、今となってはいくらでも方法があるんだし。
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