後来:追憶という名の2

 まぁでも流石にそこまでぶっ壊れではないだろう。……と、思いたい。

 というのが私、ではなく『アウセラー・クローネ』、でもなくベテラン勢の共通認識らしいのはともかく。どう考えても今までの行いなので。それでもしっかり準備をして、出来る範囲で召喚者プレイヤー同士のログインタイミングを合わせた、イベント初日。

 素早い検証班のお陰で、「追憶結晶」というのは透き通った虹色のオベリスクの事らしいというのが知れ渡り、あっという間にその位置の特定まで済まされたのはいい。

 有志と我慢が出来ない人のお陰で、「追憶結晶」の挑戦記録は個人ごとだが、挑戦回数を消費するのは挑戦の選択肢を選んだ人だけだが、挑めるのはその選択肢を選んだ人が選んだ任意の人数。そして任意の人数というのは、難易度ごとに変わっていく。


「比較的再挑戦というか、難易度の上昇を確認しやすい仕様だったのはともかくとして。何ですか最高人数1万人って」

「しかもこれで最高難易度じゃねーって明らかに元のイベントの難易度っすね」

「時間が短い事を考えると、既に難易度は上がっていますわね」


 とまぁ、そんな感じでな。最初の方はさくさく進んでいったんだが、うん。これはクールタイムが1週間でも十分すぎる。だってクラン単位で挑んだとしても、召喚者プレイヤーの人数分だけ連続挑戦できるからな。もちろんある程度以上の難易度からはだが。

 なのでイベントの始まりは、各地に点々としている「追憶結晶」を巡って、下の方の難易度、恐らくはクラン向けに調節されているのだろう、最大人数百人までとなっているところまでクリアする事に費やされた。

 まぁ、イベントも数があるからな……。7年分の毎月なんだから、84の「追憶結晶」があるって事だ。もちろん、イベントの再現って事で時間制限が付いていたが、それも今の所確認できてる範囲では最大が5時間だし。


「イベントの景品がまた貰えるのはいいですね。ランキング報酬は出ませんけど」

「っすね。それに全体報酬にはいくつか必須アイテムがあるっすし」

「イベントでしか使わないものが置き換えられているのは助かりますわね。あの、カードケースというものが、使い道が無いのに残ったのは今更ながらに納得でしたけれど」


 それに新機能の実装なんだから、時間をかけて攻略していく前提だろうし。だから低い難易度を埋めるのだけでも時間がかかるのはまぁ仕方ないとして、問題は参加人数の最大が1万人になっていた難易度だ。

 作成系のイベントは最大参加人数が千人で打ち止めになったところ、レイドボスが出てくるイベントの上限は1万人まで伸びるらしいというのが検証班によって確定している。

 とりあえず今の所、ベテラン召喚者プレイヤーのクランなら攻略出来ているようだが、それだけの人数が同時に挑めるって事は、それだけの難易度が出て来るって事では? と、警戒する空気があるんだよな。


「まぁでも、少なくともイベント期間中に全ての「追憶結晶」をクリアするのは無理ですし、時間を合わせる都合もある以上、どこかに絞った方がいいのは確かなんですが」

「で、それをどこに絞るかが問題なんすよね。レイドボスが出てくる奴に限っても、元々のレイドボスと復活レイドボスで、16体のー、倍のー、ラスボスで、33体っすか」

「多いですわね。……けれどまぁ、最も難易度が高いのは、当然最後に出てきた相手でしょうけれど」


 まぁそれはそうだし、特級戦力として人数を集めて様子を見るべきなのはそこなんだろうが。


「……「追憶結晶」に、変化があるそうなんですよ。クリア回数とクリア人数が増えていくと」

「え」

「あら」

「その変化が、こう、根元から結晶の色が濁っていくというか、暗くなっていくものらしいっていうのが……その、嫌な予感しかしなくて」

「それは先輩じゃなくても嫌な予感しかしないやつっすね」

「今までの事を考えるに、全面的に同意ですわね」


 だから、出来ればもうちょっと何とかなりそうな相手で、様子を見たいな、っていうのが、無いとは言えなくてだな……。

 何でクリア回数が増えると、不吉な感じの変化が現れるんだろうな? バックストーリーが無いから推測すらできないが、「追憶結晶」って実はあんまり良くないものだったりしないだろうな?

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