後来:追憶という名の1

「久しぶりにもかかわらずこの不審具合。本当にフリアドの運営は」

「メインストーリーを完走した程度で性根は変わらないという事ですわ」

「むしろやり切ったからあとは自由だって更に暴走してる可能性まであるっすね」


 と、私、マリー、フライリーさんと声を揃えているのは何かというと、イベントのお知らせが届いたからだ。世界を救うメインストーリー完走まではほぼ毎月届いていたものだが、久々に見る……いやでも数ヵ月だな。そうでもなかった。

 ともあれ、届いた以上は確認した方が良いだろう、という事で、3人揃ってお知らせを確認する。日付変更線と共にじゃなくて、召喚者プレイヤーの稼働率が高い夜に届いたって時点で何か嫌なものを感じるのは、考え過ぎだろうか。

 島にいる時ほど精霊獣系の子達が寄ってくる訳でも無く、ルイシャンも基本放し飼い(?)なので、前ほど私がもふもふまみれになる事は無い。まぁ膝の上に【人化】を解除したマリーが乗るだけでかなりのモフみがあるんだけど。大型猫の範疇に踏み込んでるからな。


「……まぁ、バックストーリーが無いのはいいとして」

「新機能追加のお知らせっすかね?」

『そうなのですけれど、あの運営が素直にそれで済ませるとは思えませんわね』


 マリーも言うようになったな。というのは元からだった気もしなくはないがともかく。どうやら今回のお知らせというかイベントは、新機能を追加するので、その機能を使ってもらう為のイベント、という事になるようだ。

 しかし今更新機能とは? と思って読み進めたんだが、どうやらその新機能というのは「過去のイベントに参加できる」というものらしい。あぁ、そうだな。メインストーリーは終わったが、終わってから始めた人もいるだろうし、途中から始めて結局最前線に追いつけなかった人っていうのもいるもんな。

 そういう人達向けというのもあるし、その当時はともかく、全体の動きやギミックが分かっているならもっと上手く出来たとか、別の場所で別の事もやってみたかったとか、そういう要望はあるだろうし。


「その為、各地に「追憶結晶」という結晶が出現。それに触れる事で挑戦する事が出来ると」

「あ、レイドボスが出たイベントは、レイド戦まで含めるんすね」

『一応難易度は分かれているようですし、下の難易度をクリアしないと、上の難易度には挑めないようですけれど……』


 というか、特に氷の大地の邪神の化身だな。絶対にフラグの順番がおかしくなってただろうから。あれが無い状態のイベントってどういうものかっていうのは確認しておきたい。

 流石に再挑戦で人数が足りない状態で、イベント難易度そのままをクリアするのは難しいだろうが。主に救助の手数って意味で。


「ん? マリーさんどしたっすか?」

『……難易度の数が、書いていないのですわ。もちろん、現在の通常空間に影響はない、と、書かれているのですけれど』

「あぁ、それは私も思いました。何段階あるんだと。なおかつ、その分け方がどうなっているのかと」

「難易度の数、っすか?」


 ただマリーも気付いた通り、肝心の難易度に関する詳細が書いてなかった。まぁフリアドのイベントのお知らせが詳しい事を書いてないとか情報が足りないとかはいつも通りなんだが。

 ただなぁ。イベントのお知らせで情報が足りない、って部分は、今までのパターンでいくと、ちょっと待てや運営案件の可能性が高いって事でなぁ……。


「……まぁ、最悪でも通常空間への影響はありません。失敗しても他の場所には挑戦できますし、挑むチャンスは1週間に1度ですが月曜日0時更新です。準備も含めると、むしろ時間は足りないぐらいでしょう」

「それはそうっすね。しかも戦う時間も、イベントは最低2週間っしたけど、時間加速無しなんすよね? つまり8時間で何とかしろってのは、そのままの難易度だと無理ゲーじゃねっすか?」

『その筈ですわね。ログイン時間を厳密に合わせて誤差5分に収めたとしても、11時間が限界ですわ。それで何百、何千人が何日もかけて削った相手を倒し切れとは、言わない筈なのですけれど』

「……そう言われるといきなり不安になって来たっすね。運営ならやらかしかねないって意味で」

「流石に難易度を上げる事は無いと思うんですが」


 無いって言えないんだよな。今までの行いのせいで。主に運営の。

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