後来:追憶という名の4

 相手が決まれば後は早い。『アウセラー・クローネ』として動くという事で同盟クランにも話を通し、同盟クランから派生したクランや付き合いのあるクランに伝わって、当然ながら当日、「集め融かす外法の肉禍」が登場したイベントの「追憶結晶」がある場所……南北の大陸を繋ぐ大きな橋。そこから東へ真っ直ぐ行った海上とその沿岸部には、大勢の召喚者プレイヤーが集まっていた。

 集まったというか集めたから当然なんだが、賑やかだな。もちろんちゃんとスキルのレベリングと制御訓練が出来るって話は伝わったらしく、周りをきょろきょろ見回してる召喚者プレイヤーも多い。

 なお「追憶結晶」はいつかの文字通りな壁ボスである「狂い崇める外法の禍壁」のステージ挑戦段階に倣った形なのか、【絆】や【契約】相手、パーティ、クランのメンバー、フレンドに加え、「追憶結晶」の周囲直径10m以内にいる相手を選べる。その直径の範囲は検証班によって目印を付けられているので、参加したければその範囲に入っていればいい。


「しかも一括選択が存在する上に、選択した上で現在の人数が表示されると、色々親切ですね。分霊世界の大神の仕事でしょうか」

「こっちの世界の大神ではないんだな……」


 今までの事を考えたらそう思うのが当然だと思う。マジで見習え。ほんとに。特に情報の出し方。AIとか人間とか関係なく自分より上の技術を持つ相手には敬意を示して学習させてもらえ。

 と、ちょっと私怨が入ったがともかく。とりあえず現在分かっている最高難易度である、制限時間5時間、参加人数上限1万人の難易度に挑戦。……とはいえ。


「流石にそのまま即死は通らないとはいえ、レイドボスの場合は部位破壊として適用されるんですね。一部が即死する、即死する部分を切り離す、そういう感じなんでしょうか」


 私の場合、に、限らないな。最前線にいた召喚者プレイヤーは、分霊世界の神と修神おさめがみの過去編をやった時に、祝福や加護を貰っている。そしてその中でも共通して全力で戦闘向きだったのが、ナージュの加護だ。

 地力がある状態でのクリティカル発生率上昇。ターゲット状態付与。そういうのは、文字通り火力を跳ね上げる結果になる。まぁ私も歯車の形で取り外せる加護をルシルに渡しているんだが。

 いやー、酷いなというか、酷かったな。文字通り端から削り落とされていくんだから。大規模な奇跡を願った上に、私含めて何人もの巫女が憑依状態で大規模魔法を叩き込んでなお段階が進まなかった筈なのに、もう見ている間に体積が減っていったから。

 ま、こっちの火力が上がっているっていう以上に、そもそもの体力の総量が少ないんだろうけどな。最後の段階で、山ほどモンスターを出現させる段階にならないと体力の減り方が変わらなかったし。


「素早く討伐出来たのはいいとして、後ろの人達訓練になりました?」

「一応凍らせたやつを叩いてはいたぞ」


 という訳で、所要時間はなんと驚きの30分弱。嘘だろ。最初出てきた時は1ヵ月叩き続けてやっとだったのに。

 ……という所だが、実は大神の試練で出てくる再現レイドボスとして戦った時、私も1時間切りは達成しているので、まぁそんなもんかなとも思う。最初から皆飛ばしてたからな。こんなところで時間かけてられるかって感じで。

 という事で通常空間に戻って来た。ほとんど消耗も無いが、一旦ルシルを呼んでナージュの加護を返してもらう。時間制限があるからね。リセットしておこう。


『全体連絡! 次の難易度が出現、制限時間は6時間、人数の上限は1万人! 突入は10分後です! 続けて参加される方はその場に残って下さい!』


 こうなると思ったからな。そりゃあれだけ攻撃したとはいえ、最前線を駆け抜け切った召喚者プレイヤー達だ。人数で袋叩きにしただけだし、ギミックも一応あるにはあるが属性を変えればいいだけ、しかも体力をある程度削れば解除されるんだから、流石に苦戦しない。

 まぁだからこいつを選んだんだが。いい調子だから問題は無いな。

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