後来:騒動は尽きず

 フリアドのメインストーリーは完了したが、サブクエストはまだまだ、それこそ数えきれないほどに残っている。というか、何なら次から次へと発見されているので、増えているかも知れない。

 まぁそれは良い事だし、だからこそフリアド世界は今日も盛況な訳だが、問題は、サブクエストがあちこちにあり過ぎて、うっかりスタートを引いてしまう事がちょいちょいあるって事だ。

 とはいえ私はほぼクランハウスから出ないし、フリアド世界を移動する時は大体「皇女」として動く。つまり護衛がたくさんいるし事前調査された場所しか通らない。だから、私自身は、サブクエストをあんまり引かない、のだが。


「はい? エルルが行方不明?」


 どうやらエルル、趣味……とは……? みたいな状態をようやく脱して、自分の趣味が「読書」って事に気付いたみたいでな。しっかり休みを取らせるようになったら、南北の大陸の図書街にちょいちょい行くようになったらしいんだ。

 まぁそれはいい事なのでにっこりするだけなんだが、問題は、あの図書街こと“採録にして承継”の神の聖地って、サブクエストが特に多いと有名な街でなぁ……。ほら、ジャンルも形も問わずに色々な「記録」が集められてるから……。

 もちろん邪神関係とかそういう特にヤバいものは“採録にして承継”の神がちゃんと隔離してるんだが、それ以外にもヤバいものが無いとは言って無いし、むしろあの神のヤバい判定は「外に出たら世界が(ほぼ)一発アウト」レベルからで、何の安心材料にもならないというか……。


「……何か異空間に繋がるとか、吸い込まれるとか、そういう系の本に触れてしまいましたかね。一応「第一候補」に、“採録にして承継”の神へお伺いを立てて欲しいとお願いしておいてください」

「分かりました!」


 さてその報告をしてくれたのはニーアさんだった訳だが、まずは竜族部隊の人達を落ち着かせないとな。サーニャが一番(召喚者プレイヤー慣れもあって)落ち着いてるって時点でお察しだ。

 そしてそれはそれとして、それ以外のうちの子も落ち着かせなければならない。私が誘拐未遂にあったっていうのは全員知ってるから、今度はエルルが誘拐された(誤解)って事で、こっちはこっちで戦闘方向のやる気が高まってるし。

 ……ワンチャン、本気でその誤解が誤解じゃない可能性まであるから、頭が痛いんだが。


「流石に、何か問題のある記録の問題を解決させる為に嵌めた、までは無いと思いたいところですが」


 まともに戻ったは戻ったらしいし、召喚者プレイヤーにも住民にも人気で街は常に賑わっている筈だから、力が不安定になってるって事は無い筈なんだが、あのマッド気質もとい好奇心の強さは元々のものだったらしいからな。

 だからその辺神官の人達や眷属さんが頑張って独断専行を阻止している筈なんだが、相手は神だからな。やっぱりちょっと後手に回るというか、阻止が間に合わない時もあるらしいんだ。

 もちろん資料の宝庫だしあらゆる記録や作品があるからそれを探しに来た人の対処もしなければならない。だからかなり忙しい。よって、ある程度は探しに来た人の方で自衛してね、となるのは、納得しかない。ん、だが。


「エルルの行方不明、図書街ではもうこれで、4度目なんですけど」


 ちょっと頻度が高過ぎないかなぁ、って思うだけで。

 1回目はともかく、2回目はちゃんと調査依頼を受けて立ち合ってたからまぁいいとするし、3回目は別の誰かがヤバい本の封印を破った所に巻き込まれたって話だから、エルル自身が悪いって訳でもないのは分かってるんだが。

 あれか? 竜族の『勇者』だから、なんかこう巻き込まれる系の主人公補正でもかかってるのか? 確かに元々めちゃくちゃにスペシャルなキャラクターだったんだろうっていうのは疑う余地がないぐらいに属性山盛りだったけども。


『「第三候補」、今良いであるか』

『こちらからお願いした件ですか、「第一候補」』

『うむ。結論から言うとどうやら今回はかなり大事になっているらしく、他の召喚者プレイヤーも何人も巻き込まれているようである』

『……何が起こったんです?』

『どうやら、開いたその場で疑似試練を作るタイプの書籍が紛れ込んでいたようであるな』

『邪神の信徒案件では?』

『調査中であるが、各方面に警告は出したである』


 あ、違うか。今度は邪神の信徒案件か。

 もーほんと嫌がらせは欠かさないよなあいつら。

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